表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/107

85,vs特異点魔物。

 

「ミシェルと合流して、〈冒険者の老後を心配する会〉の会議といくか」


 勇者少女が顔をしかめる。


「〈冒険者の未来を憂う会〉ね。そこは大事」


 勇者少女連れて、〈蟻塚〉に空間転移する。

〈トール塚〉のほうは──べつにおれはモブ敵だし、しばし消えていても問題はないだろう。


 ところで、よそのダンジョンに移動するときは、そこのボスにまず断りを入れるのが礼儀というものだ。

 ただいまの〈蟻塚〉のボスが誰なのか、よく分からない。


 にしても、いま魔人たちのかじ取りをしているのは、誰なのか。

 妹が【廃都卿】を消滅させてから、誰がトップにいるのかよく分からんな。


〈蟻塚〉の中間層に転移したところ、巨大な蟲型魔物と、冒険者二人の戦闘現場に居合わせた。

 まてよ。一人は〈風の帝〉か。ほれぼれする風属性攻撃の数々。


 しかし敵の蟲型魔物はダメージを受けていない。よほど防御特化のスキル持ちか、単にもとから『硬い』のか。

 そうか。これが『特異点魔物』というものか。


「しかし、見た目はよくいる蟲型魔物だな。おれはあまり好きじゃない」


「わたし、好きよ。ああいう節足タイプ」


「そうなのか。ムカデとか大丈夫な感じか」


「ムカデが嫌いなの? じゃ、エビも嫌いなのね」


「エビは好きだが……美味いだろ」


 勇者少女がふしぎそうに言う。


「なんでエビは食べることができて、ムカデはダメなのよ?? 形態的にいって、親戚みたいなものじゃないのよ。エビが陸を歩いていたら、ムカデでしょうが」


 なに怖いことを言っているんだ。

 怖いことを……怖い。


「………………………こんなところで、そんな論議をしている場合じゃない。『特異点魔物』の定義は不明だが、とにかく偶然にも、その戦闘場面に出くわした。ひとまず、おれたちは、通りすがりの冒険者のフリをしよう」


【破壊卿】でも狂戦士バンザイでもなく、冒険者ソルトとして。

 勇者少女はうなずいた。


「いいわよ。で、あの気持ち悪い蟲を殺してもいいのよね、わたしは」


「好きにしろ」


「そこ! わたしが助けてあげる!」


 勇者少女が参戦。


〈風の帝〉と、そのパーティ仲間のグラディエーターが、疲れた様子で勇者少女を見やった。

 実力を一目で見抜いたのか、参戦を拒否はしない。

 ただ期待も感じられなかったが。


 あのグラディエーターも、相当な実力者。

 さらに〈風の帝〉。おそらく〈帝〉の中では、〈雷の帝〉につぐ高火力。

 この二人の猛攻を受けて、なぜ損傷を与えられないのか。


「勇者少女が加われば、さすがに状況も変わる、か?」


 勇者少女が、デバフ欲張りセット付の『見えない刃』で、連続攻撃を仕掛ける。


 が、『特異点魔物』にはダメージもなし、デバフ付与もなし。


 しばし眺めていたが、これはさすがにおかしい。

 これまで魔人幹部たちを殺しまくった勇者少女の『見えない刃』。

 いまだに、どういうスキルなのか、おれも分からん。


 このほぼほぼチートスキル攻撃でさえ、この巨大な蟲型魔物にはダメージを与えられないとは。


「どうも、『ダメージを一切受けない』という前提条件が成り立っているらしい。だから『特異点魔物』か? おれの時間跳躍ディレイもズルいなぁ、と自分で思ってはいたが。それどころではないな、これは」


 しかし、なんらかの攻略法はあるはずだ。


「……はぁ?」


 下層側から、ドラゴンが飛翔してきた。

 本物ではなく、マナエネルギーで創られたドラゴンだ。


 騎乗しているのは、ミシェル。

 ミシェルもこちらに気付いたようで、急降下してきた。なにやら焦っている様子で。


「ササラを見たかい、ソルト?」


「……誰だ、それ」


「おたくの妹だよ!」


 …………そんな妹、いたっけ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ