表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/107

81,異種。

 


『特異点魔物』といっても、見た目はほかの魔物と変わらない。


 魔物も形態によって種類があり、これは蟲型だろう。

 全身を装甲で包み、小山ほどの大きさがある蟲ではあるが。そこは魔物というところか。


「討伐を開始する」と〈風の帝〉。


 相手がでかい分、パーティ側に連携はさほど求められていない。

 せいぜい同士討ちしない程度で。


 甲夜が風属性攻撃スキルのコンボを放つ。周囲を巻き込まないようにの配慮か、攻撃範囲は狭い。だがそれは、どんな防御も貫く攻撃。


 そのはずだが、『特異点魔物』には損傷を与えていない。

 ただこの手の中ボス格の魔物は、ダメージを受けているのか、視認では分からないこともあるが。


「たいしたことねぇな、〈帝〉さんもよ!」


 と、アガが突進。

《ギガント・バッシュ》。

 突撃系スキルは、極めると強い。しかし、ようは捨て身タックルなので、その道を極める者は少ないが。


(冒険者レベルを上げていく途中で、ステ振りが面倒になったのではないだろうな、アガ)

 と、ミシェルは地味に疑う。


 とにかく《ギガント・バッシュ》ならば、アガ自身にもダメージは避けられない。

 その分、その突破力は高く、敵の『特異点魔物』がどれほど防御力特化だろうと、少なからずのダメージは与えるはず。


 ところがダメージを受けたのはアガだけで、『特異点魔物』は微塵も損傷していない。

 ここまでくると、何かしらの条件をクリアしないとダメージを与えられないのでは、と疑いたくなる。


 ササラならば、何か情報があるかもしれない。

 ミシェルが尋ねようとしたが、その前に向こうから、疑問を口にされた。


「あなた、ドラゴンは?」


「え?」


「ドラゴンライダーなのに、ドラゴンがいないようだけれど?」


「……」


 いまさら、というより、このタイミングで尋ねてくるとは。

 はじめは嫌がらせかと思ったが、どうもこれに限っては、悪意はないようだ。


「……私が育てていたガウ種のドラゴンは、ある高難易度ダンジョン攻略中に殺されてしまった。それ以来、次のドラゴンを見つける気にならなくて」


「それだと、あなたはもうドラゴンライダーではないのでは?」


「いいや。余計な心配は無用」


 ドラゴンライダーのジョブスキルで、マナのエネルギーをドラゴン形態にする。理想をいえば、ちゃんとしたドラゴンを育てるべきなのだろうか。


 とにかくジョブスキルで造ったマナドラゴンに騎竜すると、後ろにササラが飛び乗ってくる。


「近くから見せてちょうだい。あの『特異点魔物』には、何か秘密があるわよ」


 指示に従い、いったん急上昇してから、急降下。

 蟲型の『特異点魔物』の近くを横切る。


「何か分かったか?」


「ふーん。あの気持ち悪い蟲は、おそらく──異種ね」


「異種?」


「あたしたちとは違うものよ。違うところから生まれた──まぁ、人間からしたら、ほかの魔物との違いは、判別できないでしょうけど」


 確かに、この『特異点魔物』に、ほかの魔物ととくに変わったところは見られない。

 戦いかたからしても──いまのところ言えるのは、上位冒険者の攻撃でもダメージを与えられない、ということくらいか。


 しかし、それならなぜ、この魔物が『特異点魔物』であると、冒険者ギルドは知ることができたのだろうか。


「ところで、その異種というものが何か、教えてくれるのか?」


「まぁ、あんたは一時的ながら、あたしのパーティメンバーのようだから。特別に教えてあげてもいいわよ。といっても、あんたの脳みそで理解できるか疑問だけれど」


「あんたたちとは、異なる存在、という話だったが?」


「簡単にいうと、『別の宇宙から来た魔物』というところかしらね。ふーん。なぜ紛れ混んでいるのかしら?」


「どうすれば倒せるんだ?」


 ササラはくすくすと笑う。


「倒せないわよ。この世界の冒険者の攻撃では、ダメージは与えられない。闇女神の許可がでていないもの。サリアのことではないわよ。別の宇宙の闇女神のことね。お分かり?」


「……」


 すると、セーラならば倒せるのか? 

 それともセーラでも倒せないのか?


 それを試させるのは、話のもっていきかたが重要な気がする。


 と、ミシェルはマナドラゴンを操りながら思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ