表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/107

77,ササラ。

 


「何が嬉しくて、〈風の帝〉と同じパーティにならなきゃならねぇんだ」


 とアガがぼやく。

 さすがに当人はいないところで。


 パーティを組まされたのち、ひとまず解散となった。

 それぞれアイテムなどをそろえ、準備が整ったら再集合と。


 ミシェルはアガとともに、近くの道具屋に寄った。

 回復魔法を会得しない限り、どこまでレベルが上がっても、ポーションには頼るものだ。そしてミシェルやアガのジョブでは、回復魔法とは縁がない。


「〈風の帝〉か」


 ミシェルは〈風の帝〉について一考する。


〈風の帝〉の甲夜は無口な、20代の男。とくにこれまで接点はなかったが、風属性魔術を絡めた斧槍術が得意だと聞く。

 いずれにせよ〈帝〉の一人なのだから実力は確かだろう。


「しかし彼もアタッカーだ」


「あぁ? なんだって?」


 このパーティには、アタッカーが三人もいる。〈風の帝〉とアガはアタッカー。とくに最前線で戦うので、前衛型。


 ドラゴンライダーのミシェルは、後方支援も可能だし、空中からの遠距離攻撃も可能なので、後衛型。しかしアタッカーであることに変わりはない。四人パーティでアタッカーが三人とは。


「バランスに欠いてはいないか?」


「ギルド役員の割り当てなんぞ、適当なものなんだろうさ」


「そうだろうか」


 確かに突破力のあるアタッカーをそろえて、パーティの火力を最大まで上げよう、という作戦なのかもしれない。

 ところで、四人目の冒険者のジョブはなんだろうか。


 装備からジョブの推測がつく場合も多いが、四人目は一見したところは、なんともいえなかった。


 歳は18前後。ふしぎな雰囲気の女性だ。

 ギルド本部で視線があったとき、同性でありながら、少しドキッとしてしまった。


「アガ、彼女のことを知っているかい?」


「ああ。ササラとかいう名だったな」


「ジョブは?」


 普段パーティを組んでいない者に、いきなりどの役割か、と聞いても仕方ない。

 ジョブによっては、複数の役割がいける、ということもあるし(そういえば〈グラディエーター〉のアガならば、タンクもいけるかもしれない。当人がやる気になってくれたら)。


「さぁな。ジョブは知らんが、噂だと、たった半月で冒険者レベルを駆け上がったそうだぜ」


「半月……冗談ではないのか?」


「さぁな。オレが聞いた話じゃ、あのササラが冒険者登録したのは、半月前ということだ。そして、いまこの討伐クエストの招集に呼ばれた」


「よほど効率のよいレベル上げ方法を見つけたのだろうか」


 冒険者になる前から実力があれば、あとは効率よく稼げる穴場を見つけたら、誰にも知られずにレベル400まで駆け上がる、ということもありえなくなはないが。


「とにかくジョブだけでも聞くべきだろう」


 冒険者ギルド本部に戻ると、すでにササラは待機していた。

 天井を眺めながら、ボーっとしている。


 ミシェルは試しに、気配を消して、ササラの背後から近づいてみた。

 これで反応を示すかどうかで、少しは実力を推し量れるだろう。


 だがササラは何ら反応せず。

 ミシェルはいくらか落胆してから、咳払いした。


 ササラがはっとした様子で、振り返る。


「あら、あなたは同じパーティの、」


「ミシェルだ。よろしく。ところで、あなたのジョブについて聞いても構わないか?」


「どのようなジョブがご所望です?」


「どのような? ……よく分からないが」


「そうですか。では、ヒーラーにしておきましょう。このパーティ、アタッカーは余っているようですし」


「……」


 この女はふざけているのだろうか、とミシェルは疑問に思った。

 このとき、ふと引っかかることを覚えた。


 なんというか──ミシェルは、前にもこのササラに会ったことがあるような。

 しかも、考えもしないところで。


 その点を尋ねる前に、〈風の帝〉が戻ってくる。


 そして、ミシェル、アガ、ササラがそろっていることを確かめると、信じられないことを話しだした。


「先に言っておく。われわれの標的は、狂戦士バンザイではない」


 ミシェルは、ほかの三人を代表して尋ねた。


「どういうことだ?」


「どういうわけか、同じときに二つの『特異点魔物』が出現した。我々は、もう一体の『特異点魔物』を狩りにいくことになる。それがギルド本部からの極秘指令だ」


「極秘? なぜ極秘に──」


「準備はできたな、すぐに出発するぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ