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72/107

72,再会が早い。

 


 ダガーのときに学んだのは、冒険者を負傷させるにも、加減が必要ということだな。


 あんまり損壊すると、謎の覚悟を決められて逆に困る。

 もちろん生かすことにした冒険者に限るが。


〈トール塚〉でモブ敵はじめてから、十日間。


 生かした冒険者は78名。

 そのうち最高レベルは、ダガーのレベルカンスト523。


 ただしダガーは別格だろう。そもそもこのレベルの冒険者は数える程度しかいないし、何が嬉しくて〈トール塚〉などに来たのか。


 あぁそうか、『ボスより強いモブ敵』の噂を聞いたからか。


 とにかくダガーを抜きにすれば、最高レベルは103。


 一方、殺した冒険者は21名。

 このなかには、レベル150の冒険者もいた。


 この男が、雑魚狩りを趣味にしていることが一目で分かった。つまり自分よりレベルの低いモブ敵やボスを狩ることで快感を覚えている冒険者。


 将来性は、ない。


 そこで〈時間跳躍ディレイ〉で全身を潰したものだ。


 まぁ、これは極端な事例だが。

 こっちも友愛精神で冒険者を育てようとしているわけではない。

 使えそうにない者は、死んでもらうわけだ。


 そんなある日。


 妹のセーラの誕生日が近いので、何を贈ったものか、欲しいものを聞いたら、『人間の死体10万』とか言いそうだ、などと考えていたところ。


 冒険者の気配。

 ソロか。


 先に、相手のレベルやジョブを確認しておく。

 すると、この相手は──


 まずい。ケイティじゃないか。


 なんだって、こんな辺鄙な低レベルダンジョンに来るかなぁ?

 あー、『ボスより強いモブ敵』の噂を聞いてか?


 計画通りに運んでいるのはいいが、まさかこんな副作用が出るとは。


 このままだと、ケイティに一目で正体がバレる。

 人間フォルムで一緒にいたわけだから、当然。

 バレると困るのか、と自問してみたが、まぁ困るだろう。たぶん。


 そこで今回ばかりは、【破壊卿】で行くことにした。

 バトルフォルム。


 そうして、ケイティの前に立つ。


 ジョブはアサシンのまま。

 冒険者レベルは325。

 最後に会ったときより、さらにレベルを上げ、経験を積んできたようだな。


 見たところパッシブスキル《上限突破》を得ている。

 ステータスの上昇。すなわち、物理攻撃力、魔法攻撃力、防御力、状態異常への耐性などなど、すべての数値が通常値の二倍になる。


 この破格のパッシブスキルは、才覚がないと会得できない。


 言ってしまえば、レベルカンストはこつこつ続けていれば、いつかはたどり着ける。


 その一方で、スキル、とくにパッシブ系は、どんなにいいものを会得できるか、これはその冒険者の才能に左右されるものだ。


 やはりケイティ、将来有望だったな。

 おれの目に狂いはなかった……まぁ、先にパーティ組むこと誘ってきたのは、向こうだったが。


「冒険者よ。身の程知らずにも──」


 おれが口上を述べ始めたら、ケイティが嬉しそうに言ってくる。


「ソルトさん! お久しぶりです!」


 ソルト。【破壊卿】として呼びかけられたのではなく、かつてのパーティ仲間として呼びかけられたようだ。つまり。


「……まてよ。まさか、おれが【破壊卿】であることを知っていたのか」


「はい。最後のころには」


「あー、そうか」


 人間フォルムに戻る。


「どうやら、『ボスより強いモブ敵』の噂で、来たようだな?」


「はい。腕だめしに、と。ですが、まさかソルトさんだったとは」


「思ったより早い再会だったなぁ。で、どうしたい?」


 ケイティは一考してから、長剣と小盾を構える。


 剣は魔法剣〈ゴーグの剣〉。

 風属性があったか。レアリティは高い。良い武器を入手したようだ。

 小盾ははじめて見るタイプだが──。


「わたしがどこまで実力をつけたか、ソルトさんに見ていただきたく思います」


「そう言うと思った」


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