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7,派遣される。

 


 おれの配置場所は、ボス部屋の前だった。


 つまり、セーラの近く。どうも恣意的なものを感じる。


 兄に塩対応なのか、甘え対応なのか。

 セーラはよく分からないところがあって、粗末に扱われていたなぁと思ったら、いきなり甘えてきたりする。

 妹心は秋の空か。この国、四季はほとんどないけど。


 問題は、そこじゃない。

 ここ、やることがなさすぎる。


 セーラが管理する、この〈ガリア城塞〉。

 攻略難易度はSSS。


 ただしこれは魔人側の評価。

 つまり内情を知っている者たちの。

 セーラが、実のところ幹部格のどいつよりも凶悪で強い。封印される前のサリア様並みであり、それってもうラスボスじゃないか、ということを知っている側の評価。


 冒険者ギルドも、独自に各ダンジョンをランク付けしているが。

 ギルド側の現在のランクでは、〈ガリア城塞〉はB⁺からA⁻。

 ようは正しい難易度よりも、低く見てしまっているわけだな。


 先ほどの〈牙の閃き〉とかいうヘボ冒険者パーティが勘違いして挑戦してしまったのも、ある意味では無理ない。

 正しく評定できていな冒険者ギルド側の不手際だな。


 まぁ、とにかくだ。

 この『B⁺からA⁻』って、意外と微妙なランク。

 下級冒険者が安易に挑むところではなく、中級冒険者も二の足を踏む。


 ただしSランクダンジョンに挑むくらいの最上級冒険者は、『もうA⁻はいいだろ』ということで、スルーしてしまう。


 というのも、大きな理由が二つ。

 まず〈ガリア城塞〉のある場所。大陸の地図を見ると分かるが、北方も北方。北側ぎりぎりにぽつんとある。冒険者としても、行くのが面倒となりがち。


 もう一つの大きな理由は、ここがメインルートではないから。


 面倒だが説明しよう。


 冒険者どもの最終目的って、おれたち魔人の全滅らしい。

 ただ魔人というのは復活するので、その源である〈サリアの大樹〉を燃やしたいとか。


 この〈サリアの大樹〉は封じられたサリア様の分身のようなもの。

〈サリアの大樹〉は最終ダンジョンにある。当然だな。

 が、最終ダンジョンへの鍵は、魔人の幹部14体を倒したときに得る〈魂の欠片〉14個が不可欠。


 ちなみにおれの〈魂の欠片〉は、幹部クビになったとき、【消滅卿】に移行されている。


 とにかく、冒険者どものメイン攻略ルートというのが、〈魂の欠片〉14個を得るもの。つまり、14幹部のダンジョン巡りとなるわけだ。


 で、妹のセーラは実力は最強なのに、政治的なことから幹部ではない。〈魂の欠片〉も持っていないので、冒険者側としてもどうしても倒さなきゃならないボスではない。


 よって〈ガリア城塞〉もメイン攻略ルートから外れてしまっている。


 だらだらと説明して、何が言いたかったのか?


 ヒマ!

 ここ、ヒマすぎ!


 メインでもないし、ギルド側の評定した難易度も微妙なので、冒険者がほとんど来ない。

 しかも、ようやく来たと思ったら、セーラが嬉々として人間状態から『スケルトン化』し、入口に行ってしまう。

 初見殺しトラップのために。


 この初見殺しのトラップに、どの冒険者もはまり、あっけなく殺される。

 そのため、最深部のボス部屋前どころか、中ボスの魔牙龍のところまでも誰一人、行きつくことがない。あのドラゴンも、ヒマしていたんだなぁ。


※※※


「なぁ、妹よ」


 と、あるとき、おれはボス部屋で、言ってみた。


 玉座兼ベッドで満足そうにしていた妹が問いかける。


「なぁに、兄貴?」


「ここで世話になってから、かれこれ半年たつが、おれは一度も冒険者と戦ってないんだが」


「そうね」


「……せっかくなんで、ディレイ攻撃というのを試してみたいんだよ、おれは」


 セーラは苛立たしそうに言う。


「なによ、兄貴。あたしのそばが、嫌だっていうの?」


「違う違う。そうじゃなくて。ただ、たまには冒険者ともやりあいたいなぁ、と。ほら〈暴力墓〉にいたころは、毎日、大忙しだったからさ。……パリィされるだけだったけど」


 不貞腐れた妹だが、少し機嫌をなおした様子で。


「ふーん。まぁ、いいわ。じゃ、派遣されてみる? 知り合いのダンジョン、ちょうどモブ敵が足りていないのよ。どうする、数日、行ってみる?」


「よかったら、数日だけ行ってみようかなぁ~」


「ふーーん。じゃ、話しとくから」


 できた妹をもって、おれは幸せだよ。

 ちとジト目が怖かったが。


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