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65/107

65,弱体化アプデが入りましたー。

 


 ─ソルトの視点─


 100階層から地上に、ショートカットで戻っておく。


 今度こそ、ケイティが勝利して戻ってくることだろう。


 しばし、時間を潰していると、ふいに何かを感じた。

 なんだろう。このゾッとしない感覚は。


 おれはどうも、この感覚を覚えていなきゃならなかったような。

 なんだっけ?


 それから少しして、ケイティが戻ってきた。ボス部屋からの空間転移ワープで。


「ソルトさん、やりましたよ!!」


 歓びの声をあげて、ケイティが抱き着いてくる。


「おー、おめでとう」


 よしよしと頭を撫でてやったところ、いきなりケイティが顔を赤くして離れた。


「ソ、ソルトさん! ちょっと、いきなりすぎますよ!」


「何が?」


 冒険者との距離感って難しいな。


「ところでケイティ、【消滅卿】との戦いはどうだった?」


「え? あ、はい。ソルトさんの攻略法と、骸骨伯爵さんの隠しバフのおかげで、なんとか勝てました。それにしても、やはり強敵でしたね」


 ケイティは、【消滅卿】の氷結攻撃に、骸骨伯爵の凍結攻撃耐性アップのバフが発動したのだ、と話した。


 ほう、骸骨伯爵。気が利くな。


 だが問題はここから。

 無事に【消滅卿】を倒したが、すぐに魔水晶は吐き出されず、それどころか『黒い人型の影』が現れたのだとか。


「不気味でしたよ。【消滅卿】以上に、凄い寒気が走りました。ですが敵意はなかったようで」


 地上にいたおれも、その黒い影の『寒気』を感じていたわけか。


「その黒い人型の影は、何をしたんだ?」


「【消滅卿】の死体に両手を突っ込んでいました。それを眺めていたら、私、空間転移が起こりまして」


「……何か気になるな。ちょっと、まっていてくれ」


 今回は、おれが単独で〈暴力墓〉に入る。


 冒険者のまま進めてもいいが、いまは急いで気になっていることを調べたいので、【破壊卿】のバトルフォルムで進むことにした。


 ところが、その必要もなかった。

〈暴力墓〉の魔物たちが、どうも弱くなっている。はじめのほうはスライムばかり。やがて少しだけ魔物レベルも上がるが──中ボスに出てきたのが、ただのホブゴブリンとはな。


 おいおい、待てよ。これは、何か起きたな。


 こうして50階層、ボス部屋に到着。

〈滅却絡繰り〉は使われていないので、【消滅卿】もちゃんと復活していた。


 ケイティに撃破されたことで、不機嫌そうだが。

 または、おれの顔を見たからか。


「なんなんだ、ソルト。あんた、何しにきた?」


「【消滅卿】。『黒い人型の影』は、どこに行った? 何か、されたのか?」


「なんだって? 一体、なんの話だ、おっさん?」


 知らないのか。【消滅卿】が復活する前に、『黒い人型の影』は消えていた、というわけか。


「ソルト。ちょうどいい。僕はいま、ムシャクシャしているんだ。ストレス発散に、あんたを殺させてもらうよ、おっさん」


「魔人同士の殺し合いはご法度だぞ」


 とはいえ、口封じで【護魔卿】と【無庫卿】を消してしまっているので、まぁ人のことを説教できる立場ではないが。


「知ったことか。どうせ復活するんだ。できるだけ残酷な方法で殺してやるよ、ソルト!」


「お前なぁ。性格が悪すぎるぞ。友達が逃げるぞ、そんな性格じゃ」


「凍り付いてしまえ、《氷結の陣》!」


 ケイティが、対凍結のバフで乗り切ったという、【消滅卿】の隠し玉か。

 しかし──。


 もろに食らった、のだが。


 おれの場合、対凍結バフもなし。

 だというのに、冷えますね、程度。


 なんだろうか。レベル5の冒険者ならば、凍結状態にはなるだろうが。

 レベル20程度なら、もう耐えられる程度では?


 これは【消滅卿】も意外だったらしい。


「な、なんだと? まぁ、いい。なら消してくれる、僕の消滅スキルでな!」


「ふむ………………」


 通常攻撃で強制キャンセルは、おれも知っているんだぞ。

 というか、おれが見出したんだしなぁ。


 と言ってやろうと思ったが。

 それ以前の話だ。


【消滅卿】が、いっこうに消えない。

 消滅スキルの手順は、『自分の存在を消す』→『冒険者などの敵の肉体を消して殺す』のはずだが。


「どうした、お前?」


【消滅卿】は真っ青になっている。


「ど、どこにいった? 僕の、消滅スキルは、僕のチートは……」


 消滅スキルが、消えた?

 さらに《氷結の陣》も、ケイティのときより、だいぶ弱くなっている。メチャクチャに。


 まてよ。

 弱くなった。


「まさか、【消滅卿】。お前……弱体化されたのか」


 しかし、誰に?


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