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64/107

64,勝つときは勝つ。

 


 思いがけず、骸骨伯爵の特典、隠しバフ。


 これが発動してくれたおかげで、凍結状態にならずに済んだ。


 一方、せっかくの隠し玉が思いがけず潰され、【消滅卿】の癇癪がより破裂する。


「ふざけるな!! どいつもこいつも、僕をバカにしてくれる!」


 そんな【消滅卿】を眺めながら、ケイティは言った。


「強いチートスキルを持ってはいますが、思い通りにいかないことがあると、癇癪を起す。ちょっと小物っぽいですね」


 と、つい所感を口にしてしまった。

 悪気はないのだが──子供のころから、思ったことを口にする悪い癖があった。

 たいてい、それがトラブルのもとなのだ。


 で、【消滅卿】はすっかり聞いていた。


「なんだと? おい、人間。少し優勢だからといって、調子に乗るなよ。たかが一介の冒険者ごときが。僕は、すべての冒険者を滅ぼすために、ここにいるんだ。サリアのバカげた方針は、ここで終わる。分かるか、僕たちが終わらせる!」


「はぁ」


 よく分からないが、サリアというのは、確か魔人の女王だったような。

 いや、随分前に封じられたのだったか。


(ですが、この人、サリアという女王さまに対して、リスペクトを感じませんね?)


 とはいえ、今はそんなことを分析している場合でもないようだ。

【消滅卿】がハルバードを振り回しながら、つっこんできたので。


 ケイティは落ち着いて、双剣で防御、からのカウンター攻撃。


 瞬間。【消滅卿】が消える。


「あちらも通常攻撃とチート攻撃を絡めてきましたか。少し戦略的になってきたようですね」


 ケイティの見たところ、【消滅卿】は自身の『消滅』から、冒険者の肉体を消滅させる攻撃までは、数秒は有する。

 即攻撃とはいかないようだ。

 なので、こちらも通常攻撃で強制キャンセルする時間がある。


 何よりも、肉体を消滅させる攻撃──『虚数空間』とやらをぶつける攻撃──は、まず【消滅卿】自身が消えないと発動できないらしい。


 おかげで、こちらは余裕をもって、強制キャンセルに移れる。


(ソルトさんの言っていたとおり、ちゃんと攻略方法というものはあるのですね)


 通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃。手ごたえ。

 強制キャンセルで、【消滅卿】が転がり出る。


 だが今回は、【消滅卿】も癇癪を起すかわりに、血まみれになりながらも、ケイティに通常攻撃を仕掛けてきた。


 ケイティは双剣の片方で防御し、もう一方の剣で、斬撃スキル。

 《首斬り》。


(あれ、これは成功してしまう──??)


 試しの攻撃だったが、【消滅卿】は反応が遅れ、命中。

 頸を半分ほど切断した。


「ぐぁぁぁぁ……!!」


【消滅卿】がうつ伏せに倒れる。頸からは魔人の血が噴き出す。といっても、人間と同じ赤い血だが。


「……」


【消滅卿】は忌々しそうに、ケイティを見上げる。


「いいか、僕は死のうとも、すぐに、復活する、僕は、不滅だ……ふめ、」


 がくっと息絶える【消滅卿】。


「あの?」


 返事がない、ただの屍のようだ。


「ふぅ。終わりましたか。なんとか倒せました。ですが、魔水晶が現れませんね。ボスって、こんな感じなのでしょうか?」


 通常、魔物を倒すと、経験値扱いの魔水晶が吐き出されるものだが。

 ボスである魔人の場合、パターンが違うのだろうか。


 ところでこの魔水晶システムは、誰が始めたのだろう。

 冒険者側ではないだろうし。


 ふいにケイティは寒気がした。

 はじめて【消滅卿】を前にしたときも感じなかった、この悪寒はなんだろうか。


 ボス部屋の影が立ち上がり、人の形となった。


 驚きつつ、ケイティは戦闘モード。


 しかし影の形はケイティなど眼中にない様子で、【消滅卿】の死体のもとに歩みよる。

 そして影の両手を【消滅卿】の肉体の中に突っ込んだ。


 ケイティが眺めていると、忘れていたように、【消滅卿】の死体から魔水晶が吐き出される


「……あの、影さん? あなたは、敵なんですか?」


 影はちらりとケイティを見てから、消えてしまった。


「さて、何か、私はいま、重要なことを目撃したような直感がしますね」



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