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6,ディレイとか初耳すぎです。

 


 初見殺し。

 冒険者に同情したくもなるが、まぁ〈ガリア城塞〉はSSSランクのダンジョンなので、致し方ないかもしれんが。


 セーラは小首をかしげて、おれを見返す。


「さてと兄貴。それで、行く当てがないって、本当なの? それで妹のダンジョンでお世話になろうって?」


「兄妹の絆というものを、だな」


 なんとなく追い出されそうだったが、意外なことにセーラはOKした。


「構わないわよ。ただし、働いてはもらうわよ。中ボス枠を用意してあげる。あぁ、その前に」


 セーラが手招きして、入り組んだ城塞内を進む。

 やがてマグマが煮えたぎっているエリアに至る。

 セーラが腕組みしていると、マグマの中から巨大な火龍が姿をあらわした。


「【虐殺娘】さま、御用でしょうか?」


 火龍のくせに流暢にしゃべるものだな。

 セーラはうなずいて、右手の親指をぐっと後ろに向ける。つまり、おれに。


「魔牙龍。あんた、中ボス解雇よ。これからは、うちの兄貴がそこに入るから。あんたは、『なんか強いモブ敵』枠で」


 えー。マジか。


「そ、そんな、なぜですか、わが君! 私が何か失敗したのでしょうか!?」


 先ほどまでの大物感も失われ、パニックに駆られている魔牙龍さん。いやぁ、気持ちは分かる。というか、なんかおれのことを睨んでいないかい?


 おれはセーラをわきに呼んで、魔牙龍に声が届かないように低めて。


「おい、まずいだろ。いきなり新参者のおれが、そんな中ボスの座を奪うようなことしちゃ? 恨まれるのはおれだぞ」


「そう? だけど、あたしの兄でしょう。さすがに雑魚枠をやらせるわけにはいかないじゃない。これまでボス枠だったのに、そんな落ちぶれたことは、兄貴にはさせられないわ」


 あれ。意外と、兄思いな感じ?


 塩対応だったので、もう兄離れしたのかと思っていたが。


 さっき通話では、舌打ちしてまだ生きていたの、的なことを言われたし。

 あれも照れ隠しだったのかもしれん。または、とくに深く考えていない妹なのかもしれん。


「セーラ。気持ちはありがたい。が、だとしても、さすがに中ボスはまずい。まずはモブ敵からこつこつ進めたいと思います」


「ふーん。まぁ、兄貴がそれでいいというのなら──」


 いまだにおれを睨んでいる魔牙龍を振り返って、


「魔牙龍、さっきの中ボス解雇の話はなしよ」


「本当ですか? 感謝いたします、わが君!」


「感謝は兄貴にしなさい。兄貴の要望よ」


「ほう、お兄さまの。ほう」


 睨み度が増したな。なぜか知らんが。あれは嫉妬か? 


「いつまで睨んでいるんだ、まったく」


「だけど、兄貴。さすがに兄貴がモブ敵やったら、この〈ガリア城塞〉の難易度が究極の鬼畜になるわね。サリア様もお喜びでしょう」


「なぁ。兄であるおれを高く買ってくれてなんだがな。いまの【破壊卿】は、もうダメだよ。すっかりパリィスキルひとつで攻略されるようになってしまった」


「そりゃあ、兄貴はパリィのタイミングを取りやすくしてあげていたから」


「え」


「けど、もういいのよ、そういう気をつかうのは。ここは『はじめの関門』である〈暴力墓〉ではないのだから。冒険者たちも、この〈ガリア城塞〉にたどり着くものは上位レベルがほとんど。兄貴も、好きなだけディレイしてくれていいのよ」


「……………ディレイって、なんだ?」


「遅延攻撃のこと。もっと言えば、冒険者がガードや回避、パリィするのを難しくするため、攻撃のタイミングをずらしたりすることよ。

 兄貴、冒険者たちの『はじめのボス』だから、わざとディレイはしなかったんでしょ? 優しさから。向こうがタイミングをあわせられやすいように、毎度同じリズムで攻撃していたんでしょ?」


「……………あー、そうそう。優しさから」


 ディレイ攻撃? 遅延攻撃? 

 え、そんなコツがあったの???


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