59,【消滅卿】を簡単に殺せる方法。
サリア様は公平なかたなので、どんなチートな能力にも、攻略法を用意された。
【消滅卿】の実に卑怯な消滅スキルにも、明確な弱みがある。
おそらく、【消滅卿】本人は知らないのだろうが。
と、ここまで説明したところ、なぜかカールたちから抗議の声が上がった。
「ふざけるなよ! そんな話を信じられるか! おれたちはせっかく、聖ボーリ様の奇跡で蘇ったんだぞ! 二度と、こんなダンジョン潜る気はないぞ!」
おっと、聖ボーリ教徒だったか。
そういや、いろいろとごたごたがあって忘れていたが、いまでも聖ボーリ教には敵視されているのかな。
「あのな。人の話を聞け。次は、安全に【消滅卿】を仕留められると言っているだろ?」
「知ったことか!! てめぇらで勝手にやっていろ! いくぜ、みんな!」
「おうよ!」
と、ジョンソンたちを引き連れて歩き去ろうとするカール。
とたん、カールを含めた五人が、みな石化してしまった。
「あーあ。せっかく生き返らせてやったのに」
ケイティが困惑した様子で言う。
「どうしたんですか、みなさん?」
「見てのとおり、石化した。骸骨伯爵の隠しデバフだよ。しかし発動条件が、〈暴力墓〉を離れたら発動とは……よほど、こいつらが気に入らなかったらしいな」
「あの、助けてあげられるのですか?」
「石化だから。まぁ、壊れなきゃ大丈夫」
ところで。
〈暴力墓〉の入口は、丘の上にある。ひとくちに丘といっても、緩やかなものから、険しいものまで様々。
この丘は後者であり、急な坂道に至るところで、カールたちは石化したわけだ。
で、突風が吹いて、カールたちの石像がゴロゴロ転がっていった。
「あーあ」
歩いていって坂下を見下ろしてみると、全員、バラバラになっている。これでは石化を治しても、バラバラ死体だな。
〈サリアの大樹〉を使えば復活させてやれるが……。
「まぁ、いっか」
あいつら、サリア様の奇跡で蘇ったくせに、聖ボーリなんぞの奇跡とほざいたしな。
というわけで、見なかったことにする。
「さて、ケイティ。カールたちはもういいとして」
「はぁ」
「【消滅卿】を殺してくる、心の準備はいいか」
「はい!」
「よし、いい返事だ。じゃ、殺し方を教えてあげるから、行っておいで」
「はい! ……って、あのソルトさんは同行してくれないのですか?」
「君一人で行って倒してきたほうが、何かと都合がいいんだよ」
冒険者がソロで【消滅卿】を撃破できる、という証明が欲しいからな。
そうして確立された攻略法が冒険者全体へと広がれば。
少なくとも、【消滅卿】が突破できないボス、ということはなくなる。
それでも〈暴力墓〉の捏造推奨レベルなど、問題は残るが。まぁひとつずつだ。
さっそく、一時的にケイティとパーティ解散。
ケイティは不安そうだったので、おれは安心させるように言った。
「自信をもて。君は強い。ボス部屋の50階層までは、誰も君を止められない」
「ですが【消滅卿】には、何も応戦することもできず、殺されてしまいました……というか、私、どうして復活できたのです?」
「復活できた理由は、まぁ今度話してあげるから。【消滅卿】の殺し方は、こうなんだ」
と、その手順を話す。
ケイティは驚いた様子で言う。
「そんなことでいいんですか?」
「ああ、おそらく」
まさかと思うが、【消滅卿】が対処法を準備している可能性も……ま、ないだろ。
「……いま、おそらく、と言いました?」
「いや、絶対、絶対。勇気をもって、行ってきなさい!」




