表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/107

49,口封じするのも時には大事。

 


 何しにきたんだか。

【護魔卿】といえば、おれを〈暴力墓〉から実際に追い出した幹部。


 まぁ怨んではいないが。幹部会の総意を伝えにきただけだろうし。

 ただ感じ悪い奴だが。


【無庫卿】に至っては、記憶がほぼない。

 確か武闘派の幹部で、冒険者との戦いを愛しているとか。

 幹部のほとんどは、仕事だしな、という感じで冒険者と戦うので、そういう意味では少数派か。


 おれはラスボス部屋前まで、急いで向かう。


 さてと、面倒くさい現況を整理してみると、だ。

 ラスボスの【廃都卿】は、妹が消滅させてしまったが、そのことは隠している。


 今は、おれが〈紫ガ城〉のラスボス紐づけしているが、その事実も隠しているわけだ。

 なぜか勇者少女は見抜いていたが、サリア様の転生者なら、それくらいおかしくないかもしれない。


 ただ【護魔卿】とかの間抜けが、この事実を見抜いているとは思えんので、誤魔化しとおさんとな。


「よお、お二人さん」


 我ながら、変なテンション。


「ソルト? なぜ貴様がここにいるのだ?」


 と、ここにおれがいるのを知らなかったようで、【護魔卿】は驚いた様子。


【無庫卿】に至っては、魔物型のせいで、表情が分からない。なんだか、巨大な芋虫みたいな奴だ。そういや幹部会議に出てきたことがないなと思っていたが、この図体のせいかな。


「おれがいるのを知らなかったか? 実はおれは、いまは【廃都卿】に雇われて、ここで中ボスをしている」


「信じがたいな。貴様のような『パリィ練習台』を、実力主義にして最強無比の【廃都卿】殿が雇うとは思えん」


 ちょっと、失礼じゃないか?


 にしても、【護魔卿】が【廃都卿】の名を言うときの、この感じ。

 畏怖しきっている、この感じは何か。


 そうか、こいつは【廃都卿】派か。

 実は幹部内には、()()()()()()()サリア様の位階を廃止し、代理ではなく真の意味で魔人の王をたてるべき、という派閥がある。


 もちろん、この派閥が魔王として求めているのは、【廃都卿】。

【廃都卿】当人もまんざらではないようだったが、時節を見ていたのか、そのような動きは見せなかった。


 まぁ、その野望が形になる前に、セーラが消滅させてしまったがなぁ。


「信じられないと言っても、【護魔卿】、ここにおれがいるのは、その証拠では?」


「ふん。まったく納得のいかないことだが、【廃都卿】ご自身にお尋ねすればよい話。ソルト、そこをどきたまえ」


「いや、それは……」


「なんだね、ソルト?」


「【廃都卿】は、いま留守にされている。それで、おれが一時的に〈紫ガ城〉を預かっている」


「なんだと? ソルト? 貴様、脳が腐っているのか? たとえ【廃都卿】が〈紫ガ城〉を留守にされたとしても、貴様に全権を預けるはずがない。【廃都卿】には、ご立派に成長されたご子息たちがいらっしゃるのだからな」


 えー、【廃都卿】、息子とかいたんだぁ。

 へぇ。


 セーラ、そっちも消滅させたのか。

 鬼畜か。


 ふいにこれまで黙っていた【無庫卿】が、言った。


「あの小娘は、ここにいるぞ。勇者を自称していた、あの小娘は」


 なるほど。やはり勇者少女を追跡してきたか。


 突如として現れ、13幹部を撃破してしまった勇者少女。そのまま放置はできず、【護魔卿】は武闘派の【無庫卿】を連れ、リベンジに追ってきたというのか。


【護魔卿】が険しい顔で言う。


「貴様、ソルト。あの勇者を名乗る小娘がここにいると知っているな? その上で、われらに隠し立てしているというのならば──まぁ、いい。貴様の処遇はのちほど済ます。そこをどけ」


「…………」


 さてと、困る。

 ここで同期中の勇者少女のもとに行かすわけにはいかない。勇者少女を殺されたら、ケイティが蘇らなくてなってしまう。

 それに、本当にサリア様の転生者だというのならば、おれが仕えるべきは……


 だがここで、【護魔卿】と【無庫卿】と戦うのもなぁ。


 仮に勝利して、二人を殺しても、どうせ復活する。

 復活したあげく、幹部会に、おれの裏切りを報告することだろう。


 だから、理想は──

 ふと視界に、アイテムリストが表示された。

 魔人スキルで異空間収納している、アイテム一覧だ、が。


 まさか……なんで、これが、ここに?


 さてはセーラだな。

 いつのまに、おれの収納先に、『コレ』を入れたんだ?


 だが好都合だ。


 〈滅却絡繰り〉。


 この世から消滅させてしまえば、幹部会に報告もできまい。


 あれ。この発想、地味に鬼畜?

 まぁ、いっかー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ