表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/107

44,レベル上げとは、無心で行うものだ。

 


 アレックス君、王都の高級住宅街に自宅を持っていた。

 冒険者というのは、大きく二種類にわかれる。


 魔人との戦いのため、ひたすら自らを鍛え、レベル上げするストイックタイプ。


 ある程度の高位レベルに達し、成長の鈍麻が起きたところで、ちょうどよいダンジョンを巡回しては、金目の素材を回収しまくるタイプ。


 アレックスは後者タイプとみた。

 儲かっているのは結構ですね。


 結界の類も張ってないので、普通にお邪魔侵入する。

 アレックス君、寝室のほうで、複数の女を連れ込んでの、乱交中だった。いや、そのうち何人かは、本人の同意なしだな、これは。


 おれは寝室に入って、咳払いしておく。


「アレックス君。そういう悪さをするのは、いただけんな」


 そこは人間性は腐っても、130レベル冒険者。

 驚きつつも、ベッドから飛び出す。一瞬で全身を軽装鎧がまとい、右手にはそこそこレアリティの高い剣が握られている。


「なんだ貴様!」


「ツール鞄もらいにきた人」


 ただの頓馬だとでも思ったのか、すっかり余裕を取り戻し、小ばかにしたように笑う。


「この僕が、誰か分かっているのか? 〈ソードマスター〉を極めたアレックスだぞ!」


 どうかな。〈ソードマスター〉のジョブには到達したようだが、まだまだ深みには達していない。

〈ソードマスター〉といえば、〈気〉のパッシブスキルが有能だが、一切使用していないところを見ると、まだ会得していないなアレックス君。


 女たちが悲鳴を上げて逃げていったのを見届けてから、おれはバトルフォルムになった。


 はじめこそ、「なぜ【破壊卿】がここに?」と驚愕していた、レイプ犯のアレックス君。


 しかし、すぐにまた余裕を取り戻し、嘲笑を浮かべた。


「お前がなぜ僕の家にいるのか知らないが、この雑魚ボスめ。また、僕にパリィされにきたのか?」


「アレックス君、少々、情弱じゃないかな。おれはもう、とっくに〈暴力墓〉のボスではないし」


〈魔滅の大槌〉を振り上げる。


「ほら来たな、パリィでダウンされろ雑魚が!」


 もちろん、こちらはディレイしたので、アレックス君のパリィは失敗に終わる。


「な、なんだと!????」


「われ、ディレイを覚えた也」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ぐちゃり。


 さて、アレックス君を殺したことで、異空間収納スキルでため込んでいたものが、どばっと外に出てきた。

 その中には、お求めのツール鞄。


 ツール鞄、ゲットだぜー。


 夜中だから、変なテンション。

 朝までに、ケイティのいる町まで戻る。


 朝食の席で、おれはツール鞄を出して見せた。


「実は、先輩冒険者が急に引退するといって、昨夜、これをおれのもとに届けてくれたんだ」


「え、そんなことがあるのですね。では、これで?」


「純度の高い毒矢を、アイテム作成できる。そのための素材集めに数日使うだろうが」


「私たちのような新米冒険者は、コツコツこそが、大事ですよ」


「その心意気だ」


 四日後。

 大量の純度の高い毒矢を持って、ヤマタノオロチのもとまで戻る。


 今回もケイティは毒矢を外しまくったが、こちらはこっそり精密射撃スキルを使い、ヤマタノオロチの眼を連続で射る。


「おお、ついにヤマタノオロチを毒状態にした」


 毒蓄積が一定に達することで、どんな魔物でも、毒状態となる。

 ただし幹部クラスの魔人なら、自分で治癒できる術はいくらでもある。が、ヤマタノオロチならば、問題なし。


「毒状態にしてしまえば、これ以上、毒矢を当てても意味はない」


「すると、あとは何をすれば?」


「待ちだな」


 三十分経過。

 日向が気持ちよく、うとうとしていたら、どしんという地響きが起きた。


 ヤマタノオロチが、ついに毒死したのだ。


 大量の魔水晶が、おれとケイティのもとへと放たれる。

 一気にレベルが58まで上がった。


「凄いです、ソルトさん! 力がみなぎります!」


「じゃ、いったん去ってからまた戻ってくるぞ。ヤマタノオロチが復活しているから、同じことを繰り返す」


 レベル上げとは、無心で行うものだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ