41,爆速レベル上げコース。
〈暴力墓〉推奨レベル改ざんの件は自分に預けてほしい、とミシェルが言うので、ここは任せる。
というか冒険者ギルドの上層部など、魔人の身では魔窟も同然だしな。
ケイティが困った様子で、おれに言った。
「では、私たちは何をすればいいのでしょうか?」
「ふむ」
推奨レベル改ざんの件は、ミシェルが解してくれるかもしれない。だが【消滅卿】が、初心者冒険者に容赦がない点は、やはりおれがどうにかしないとならんだろう。
元〈暴力墓〉のボスとして。
とりあえず、冒険者としてボコるのが、よい薬になるかもしれない。
「ケイティ。前回は、ちょっと無計画だった。そこで、いまは〈暴力墓〉の推奨レベルを200と設定し、このレベル200に達するよう、レベル上げするべきだろう」
ケイティは信じられないという顔。
「え……レベル200ですか? そんなの無茶ですよ」
「いやいや無茶じゃない。死なずに正しく魔水晶稼ぎしていけば、どんな冒険者もレベルカンストも可能だ」
冒険者がレベルを上げるために不可欠な魔水晶。
当然レベル数値が上がるごとに、必要な魔水晶量も増えていく。
だからレベルカンストまで目指すと、かなり時間がかかる(それでも可能だが)。
ただ推奨レベル200程度ならば、数日あれば充分。
もちろん死なずに、かつ効率のよい魔水晶稼ぎのコースが必要となるが。
【破壊卿】として何百年もボスをやっていたのだ。
魔人のボスだからこそ分かる、超絶効率のよい稼ぎ場というものを知っている。
唯一の問題としては。
「ひとつ約束してくれ。これからおれは、爆速の魔水晶稼ぎコースを教える。が、冒険者たちは、この爆速の魔水晶稼ぎコースを知らない。というか見出していない、おそらくは。だから共通情報にされると、おれたち──じゃなくて、魔人たちが困る。言いたいこと、分かるか?」
ケイティはしばし考えてから。
「魔人たちが困る、というのは、冒険者たちに圧倒されてしまうから、ですよね。分かります。それだと、なんというか──えーと、冒険者と魔人とのバランスが崩れてしまう?」
この新米冒険者、将来性があるな。
是非とも、次世代の〈帝〉候補として育てたくなる。
魔人が冒険者を育てるというのも、変な話だが。
「ではまず、準備を整える必要がある。毒属性攻撃をできるか?」
「できませんけど?」
「じゃ、長弓と、大量の毒矢を買い込む必要がある。お金はあるか?」
「あんまりないです」
「じゃ、まずはそこからか。ちょっと失礼」
魔人同士の遠距離通話スキルで、〈紫ガ城〉にいるメアリーと連絡。
『あ、ソルトさん。世界を支配するプランは順調ですか?』
「あー、そうだな。ところで、〈紫ガ城〉はどうかなメアリー?」
『問題ありません。というより、ソルトさんが出てから、一人も冒険者は到達していないです。さすがラスダンです。閑古鳥が鳴いています』
「とりあえずラスダンに閑古鳥が鳴いているとはやめなさい。話を変えるが、魔人情報ネットワークで、検索してもらいたいことがある」
魔人たちが共有している情報のことだ。
ただし魔人たちは冒険者以上に秘密主義が多いので、共有される情報など、たいしたものはない。
が、いまはそれで充分。
メアリーとの通話を終えて、ケイティのところに戻る。
「この村の近くに、宝物があるそうだ。三十分後、そこに行ってみよう」
ケイティが小首をかしげる。
「えっと、宝物、ですか? どこからそんな情報を? それより、どうして三十分後なのです?」
「まぁまぁ。ちょっとコーヒーでも飲んで待っていてくれ。え、紅茶派? まぁなんだっていいから。野暮用を片付けてくるから、そうしたら一緒に行こう」
魔人情報ネットワークには、人間社会のこまごました情報も流れてくる。
とはいえ『冒険者ギルド上層部とつながっている魔人の情報』なんて有益なものはない。
が、たとえば、この村の近くに盗賊団の本拠地がある、なんて情報はあったりするものだ。
ケイティと別れたおれは、さっそく盗賊団の本拠地のある山奥まで向かう。
そこで声を張り上げた。
「ここの盗賊団が所持している金銀財宝を置いて、とっとと出ていってくれないか?」
嫌だったようなので、バトルフォルムになって皆殺しにする。
盗賊などに生きる価値なし。
盗賊団がためこんでいた金銀財宝を集めて、移動。
適当な場所に穴を掘って、埋めた。
「さて、ケイティを連れてくるか」
第一段階、『金稼ぎ』。終了。




