表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/107

34,〈虚炎〉。

 


 ──〈ガリア城塞〉──


 なんか微妙な空気になった。


〈炎の帝〉が、思いだしたように、おれに向かって怒鳴る。


「てめぇ、どういうつもりだ? 妹を使って、私の〈滅却絡繰り〉を奪い取るとはなっ!」


「妹をコントロールできる立場にはないんだよ、おれは」


〈滅却絡繰り〉の持ちだしの件は、セーラも知っていた。

 しかし、『〈炎の帝〉が〈滅却絡繰り〉を持ちだしたから、それを奪うことを計画に加えよう』などと、セーラが考えたとは思えない。


 べつにセーラが、いつも考えなし、と言いたいわけではない。

 が、あいつは基本、衝動で動いていそう。


 つまり、『どこかの魔人に腹が立ったから、完全に殺してやりたくなった。そういえば滅却指令を受けて、〈炎の帝〉が〈滅却絡繰り〉を持ちだしているんだっけ。じゃ、奪って使おう』という、流れだったのに違いない。


 まてよ。

 妹が呼び出されて会いに行った相手って……


 え? 

 マジか。


 やっちゃった?

 魔人の現王、やっちゃった?


〈炎の帝〉ことコリーヌが、気を取り直した様子で。


「ま、いいだろう。てめぇを一度しか殺してはいけない、という命令は受けていないからな。ここでいったん殺してから、あとあと〈滅却絡繰り〉を取り戻して、もう一度、こんどは綺麗さっぱりに殺してやるよ、【破壊卿】!」


 まことに申し訳ないが、こいつの相手をしている暇はない。


「今度な、また今度」


「今度はねぇんだよ、死ね!」


 コリーヌが突き出す〈太陽突き〉。

 消えぬことのない火炎をまとっている。

 火炎属性魔法のひとつの頂点、〈虚炎〉か。


 さすが〈炎の帝〉。通常時の攻撃で〈虚炎〉をまとうということは、火炎精霊のパッシブスキルを会得しているな。


 こっちは燃えたくないので、その攻撃が達する前に、〈時間跳躍ディレイ攻撃〉で決めてしまう。

 今回は手加減なし。


 時間を超越したディレイが、コリーヌに回避を失敗させる。


「な、てめぇ、いまなに、を──ぐぁっ!!」


 直撃。

 死技は使ってないが、〈魔滅の大槌〉をまともに喰らえば、よほど防御特化でなければ大ダメージは避けられない。


 アーグが歓声をあげる。


「おお、姉上! ざまぁないですな、姉上!」


 倒れ伏したが、それでも殺意のまなざしを弟に向けるコリーヌ。


「てめぇ、アーグ、覚えてやがれ、よ」


 さすがにレベルカンストしているだけあって、陽炎鎧が粉砕されるだけのダメージで済んだか。


「アーグ。お前の姉さんなんだから、どうにかしろ。煮るなり焼くなり開放するなり。おれは確かめにいかなきゃならないことがある」


「まちやがれ、てめぇ、逃げるのか、この〈炎の帝〉を前にして──」


 そういえば、〈帝〉相手に一撃粉砕してしまった。


 よくよく考えると、おれの通常攻撃って、ここまで破壊力あったのだな。

 パリィ全盛以前は、無意識に手加減でもしていたのだろうか。そういえばサリア様がお隠れになってから、パワーが増したような。


 そのころ、冒険者たちにパリィ時代が来たものだから、とくに実感はなかったが。なぜならば──パリィされまくるようになったから。


 おれはレジェンド武器〈太陽突き〉に〈魔滅の大槌〉を叩きつけて、粉みじんに破壊した。


「なっ! てめぇ、なにしてくれやがる!」


「命は取らないまでも、これくらいのペナルティがないとな。敗北したペナルティだ。さてと。空間転移は、あまりしないが上手くいくか微妙だが」


 裂け目からπ次元を経由しての空間転移は、一応は魔人の全員が可能。

 ただそれぞれ得意不得意はあるもので、おれは大の苦手。


 それでも、今回は成功させた。


 ラストダンジョン〈紫ガ城〉へ。


 が、しかし──


 燃えている。ラスダンが。


 なんか普通に陥落している。


「あぁ、妹よ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ