表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/107

31,おっさんしか勝たんぞ。

 


 さて、どうしたものかな。


 姉が弟を叩きのめしているのなら、無視一択だが。


 一応は、アーグは首無し騎士で、おれの弟子なのかもしれん。

 そしてそれをボコっているのが、〈炎の帝〉なので、無視はできんのか。


「あー、もしもし? それは、一応はうちのモブ敵だから。殺すならさっさと殺してやれ。しかし無駄に甚振るな」


「あぁ?」


 と、〈炎の帝〉がこちらを睨みつけてくる。

 眼光は鋭く、攻撃的。橙色の髪は短く切っている。すらりと背は高く、中性的な顔立ち。陽炎のような揺らぎのある鎧を装着していた。


「なんだ、てめぇは?」


 通りすがりの無関係な人と言いたい。が、仕方ない。


「【破壊卿】」


「ほう、てめぇがな」


 装備しているのは、ランス。

 ただのランスではなく、レジェンド級。〈太陽突き〉か。


 火炎属性の効力300パーセント増し。さらに火炎属性攻撃には、魔力を消費しない。まさしく火炎属性を極めた〈炎の帝〉が持つにふさわしい──というか、ちょっとずるくない?


「私の名はコリーヌ。まぁ〈炎の帝〉といったほうが、分かりやすいだろうよ」


「確かに」


 これまで〈暴力墓〉という序盤ダンジョンにいたため、〈帝〉と直に戦ったことはない。

 ここで負けると、はたして本当に滅却されるのかどうか。消えるのは嫌だなぁ。


 しかしコリーヌのレベルは上限523。

〈帝〉になるには、レベルカンストなどは条件のひとつにすぎないのだろうが。


 うーむ。強そう。


 そんなコリーヌの足に、アーグがくらいつく。


「姉上! おやめください」


 イライラした様子でコリーヌが片足を振り上げた。

 で、がしがと振り下ろす。この姉弟、さては仲が悪いな。


「てめぇ、どうしてそうなんだ! 闇黒騎士なんぞになりやがって、お母さまが泣いて悲しむだろうが!」


「ひぃぃぃ! ごめんなさい!!」


 と悲鳴を上げているのは、少し離れたところに転がっている生首のほう。


 おれはつい反射的に訂正をいれてしまった。


「あ、申し訳ないが、アーグは闇黒騎士にはなれてない。ひとつ格下の首無し騎士。見てわかるだろ?」


 言って思ったが、余計な発言だったものだ。


「あぁ? 首無しだぁ? それは中ボスにさえなれない、モブ敵だろうが。私はほかのところで、騎乗した首なし騎士と戦ったことがあるが。弟、てめぇは何か乗らねぇのか?」


 転がっている生首が、当惑した様子で言った。


「姉上。生首を抱えたまま、騎乗することは難しいかと」


「バカか、てめぇは。真の首無し騎士は、生首なんかねぇんだよ。てめぇは、魔族堕ちしても中途半端な野郎だな。この一族の恥が。その生首を消してくれる」


「ひぃぃぃ姉上ぇぇぇ! 助けてくださいぃぃ、師匠!」


 うわぁ。おれに話を振りやがった。こっそりと退散しようと思ったのに。


 おかげでコリーヌが、目的を思い出してしまったじゃないか。

〈炎の帝〉が。

 肩のところで〈太陽突き〉の柄をこんこんとしてから。


「あぁ、そうだった。まずは、てめぇを滅却すんだったな。それが、私が与えられた指令ってやつだ。じゃ行くぜ。パリィ対策を身につけたらしいが、それだけででかい顔をすんじゃねぇぞ」


 バトルフォルムにチェンジ。

 戦闘開始。


 アーグが余計なことを叫ぶ。


「師匠! たとえ僕の姉上でも、容赦なく叩き呑めしてください!」


 そりゃぁね、叩きのめせたらな。


「死んどけ【破壊卿】、《極熱突き》!」


〈太陽突き〉が突き出されると、凄まじい火炎地獄が渦巻いてきた。

 これは防御できるのか。できない気がする。


 死んだかも。


「いや、まて。これでどうだ」


《極熱突き》の火炎に《魔滅弾》を叩きこんでみると、凄まじい衝撃波とともに相殺された。


「へぇ。やるじゃねぇか、おっさん」


「おっさんではなく、古株だ」


 そういえば、【消滅卿】もおっさん呼ばわりしてくれやがったな。


「おっさんしか勝たん現実を教えてやろう」


 それはそれで、嫌な現実だな。


「出し惜しみなしの《時間跳躍ディレイ攻撃》!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ