表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/107

27,滅却対象。

 


 あれから三か月がたった。


 あれというのは、神殿騎士団皆殺しの件から。


 全滅させたのは、ほとんどがセーラの手柄だが。

 容赦なく鬼畜強いわが妹よ。


 とはいえ、おれも〈時間跳躍ディレイ〉という、新たなユニークスキルを身につけることができたわけだ。


 魔人をはじめて、かれこれ何百年。

 まだ進化の余地があったとは。


 これもサリア様のご加護か。


 というわけで、そこからの三か月は大忙しだった。


 まず、〈ガリア城塞〉の人気が妙に高い。

 冒険者だけでなく、聖ボーリ教会が送り込んできたモンクなど、とにかくやたらとおれを殺しにくる。


 どうも、聖ボーリ教会によって、討伐対象ナンバー1にされているらしい。

 このおれが。


 まぁ騎士団を皆殺しにした(ことになっている)上に、箱詰めで送り返される嫌がらせをされたらなぁ。これも、セーラの仕業で、おれはいやいや手伝っただけなんだが。


 この件、冒険者には関係のない話にも思えるが、クラ国の冒険者は、同時に聖ボーリ教徒でもあるわけだ。


 おかげで、ひっきりなしに〈ガリア城塞〉に乗り込んできては、徘徊中のおれを探してくる。


 こちらも、最近はまったく撃破されることがなくなった。

 ディレイ攻撃と、〈時間跳躍ディレイ攻撃〉のおかげだな。


 もちろん、最初から〈時間跳躍ディレイ〉を使うような、そんな味気のないことはしていない。

 ひとまず通常ディレイ攻撃。

 それで殺される相手ならば、それまで。


 しかし上位レベルの冒険者ともなれば、通常ディレイ攻撃にはすぐに対応してくる。


 ちなみに教会専属の教会モンクは、通常ディレイで殺されている。やはり質も量も、冒険者のほうが上ということだろう。レベルにもよるが。


 話を戻すが、通常ディレイに慣れてきた冒険者が、いよいよパリィをかます──

 というところで、こちらは〈時間跳躍ディレイ〉だ。


 完璧にパリィのタイミングをあわせたはずが、その攻撃だけが『タイムトラベル』して戻っている現象。

 これでバランスを崩した冒険者は、すぐさま来る『時間跳躍』後の攻撃を直撃するというわけだ。


 ちとチートすぎるかね?


 まあ全員の命を取っているわけではない。

 ここでも、かつての〈暴力墓〉と同じ。


 ランダムで、殺す相手と、生かして逃がしてやる相手をわけている。

 向こう側としては、生かされるかは時の運。


 もちろん自力で、おれを撃破すればいい話だが。


 妹のセーラからは、『兄貴はラスボスより強いモブ敵になれるわ』というお墨付きをもらってしまった以上は、そうそう撃破されている場合ではないわけだ。


 そんな感じで、冒険者とモンクの撃破数が四桁をこえた。

『撃破』というのは、殺した者と逃がした者を含む。


「うーむ。我ながら、ここのところいい仕事をしている。人類の敵、あつかいされているのは、ちょっと悲しいが」


「さすが師匠です! 僕も負けてはいられません!」


 と、首なし騎士のアーグ。


 三か月前。

 魔牙龍によって頭部を潰されてがっくりきていたアーグだが、サリア様の恩恵によって、頭部も復活した。

 ただし『首なし騎士』なので、頭部が再接続されたわけではないが。


 で、いまは生首を小脇にかかえている。

 その小脇の生首が、やたらと嬉しそうに言ってくる。


「ついに冒険者ギルド本部にも動きがあるようですよ!」


「動き? というか、お前はいまだにギルドに情報源があるのか」


 元冒険者とはいえ、もう闇堕ちして長いのに。


「はい。姉です」


「……え、姉? 姉、いたの?」


「いまは〈炎の帝〉の座にいる姉から、いろいろと知らせが届くのです。もちろん手紙ですが」


 えー。こいつの姉、〈帝〉の一人だったのか。


〈帝〉というのは、冒険者ギルドのSSSランク5人のこと。

 それぞれの属性を極めたもので、こいつの姉は火炎属性を極めた〈炎の帝〉。


「アーグ。お前は、いろいろとおれを驚かせてくれるな。別に褒めてないぞ。先に言っておくが」


「ありがとうございます、師匠!」


「だから褒めてないと言っただろうが……で、何が動き出したって?」


「ギルドの滅却対象に、師匠がなったとのことです。これは100年ぶりのことです! さすが、偉大なるわが師匠です!!」


 滅却対象。


 禁忌の術式で殺すことで、サリア様の恩恵でも復活させなくする。

 まさしく『滅却』するという。


「……よし、引きこもろう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ