25,命名〈時間跳躍ディレイ攻撃〉。
ディレイを超えたディレイ。
──かは知らんが、真の遅延攻撃とは、すでに時間を跳躍したもの。
というわけで、回避された〈魔滅の大槌〉だけ『時間を巻き戻し』再度、叩き込む。
一発目を躱した騎士団長だったが、回避した〈魔滅の大槌〉だけが『やり直し』されたものだから、今度こそ避けられず被弾。
ガードも間に合わず、騎士鎧が砕け散る大ダメージ。
だがそれでも倒れない。
「お、おれはまだ、倒れるわけにはいかんのだ。彼女と、約束したのだ。正しき神の教えのため、悪辣なる魔人を打ち倒すと……おれは、まだ死ねん!」
おお。すでに半死半生、いつ死んでもおかしくない重傷でありながら、この意志の強さを感じさせる眼。
ところで『彼女』とは、先ほど死んだ副団長のことだろう。
やはり愛し合っていたのだな。そんな先に逝った彼女のため、死ぬほどの傷を負いながらも立ち上がるとは。
敵ながら天晴。
「騎士団長。あんた、真の漢──」
とたん、騎士団長の胴体が二つに割けた。
片手でその惨殺を成したセーラが、顔を見せる。
「兄貴。なに敵に同情しているのよ」
「いや同情じゃなくて、賞賛。というかセーラ、来たのか」
「ちんたらしすぎなのよ、どいつもこいつも──だけど、いまの〈時間跳躍ディレイ攻撃〉は良かったわよ」
〈時間跳躍ディレイ攻撃〉?
勝手に名付けやがって……悪くないな。
よし、いまから『攻撃したことの時間を戻す』攻撃を、〈時間跳躍ディレイ攻撃〉と名付けよう。
しかし今回はもう〈時間跳躍ディレイ攻撃〉の出番はなかった。
セーラが飛翔する。
飛行スキルまであるのか! やるじゃないか妹。
そんなセーラは、大空間の上空まで飛びあがると、空中で停止。
その背から、巨大な闇黒光の翼が広がる。
おお、荘厳だ。
これぞラスボスの風格。見習いたいものだな。
「…………まずい! クソ攻撃力抜群の全体攻撃が来るぞ! メアリー、アーグ、巻き込まれるな!」
だが首無しアーグは、自分の生首が潰れたことを今更気づいたようで、がっくりきている。
よし、こいつは諦めよう
「メアリー!」
「はい!」
メアリーが駆けてきたので合流。
一方、上空ではセーラが広げた闇黒翼より、数多の『羽』が飛んでくる。
『羽』といっても、ようは一枚一枚が、直撃で即死不可避の闇黒羽。
闇属性奥義〈闇が降る〉。
魔人というのは、別に闇属性攻撃に耐性とかない。
ので、おれたちもこの〈闇が降る〉の即死不可避を食らったら、はい死にますよ。
おれは左腕でメアリーを抱きかかえつつ、〈魔滅の大槌〉を持った右腕を掲げる。
そして回転させた。
回転する〈魔滅の大槌〉で、闇黒羽を弾き飛ばす。
一方、騎士団員たちは回避も防御もできず、全身に闇黒羽を浴びながら、ばたばたと死んでいく。
これは凄まじい……なんか騎士団たちに同情してきた。
死体の山ができあがり、騎士団員は全滅。
上機嫌でセーラは降りて来たが、おれがまだメアリーを抱くようにしていたのを見て、不愉快そうに言う。
「はぁ~? なに、イチャイチャしているのよ兄貴? 死ぬの?」
「……お前、友達のメアリーまで殺すところだったぞ」
「メアリーはあんな攻撃じゃ死なないわよ。ね、メアリー」
いきなり話を振られてメアリーが困った顔をする。
「えーと。微妙でした」
この『微妙』は直撃していたら死んでいた間違いなく、という意味だろう。
まぁ死んでも復活はできるが……
セーラが満足そうにうなずいて。
「ほら見なさい兄貴、余裕だったと言っているわよ」
「お前は人の話をちゃんと聞け」




