22,効率大事。
神殿騎士団ご一行、到着。
騎士団長らしき男が前に出てきた。
なぜ団長と分かったかといえば、一人だけ、騎士鎧が高価そう。
さてはいい給料をもらっているな。
「【破壊卿】とは、どいつだ?」
バトルフォルムに変化してから、おれは挙手した。
「おれ」
団長は40代の、なかなかニヒルなおっさんだった。
「そうか、貴様が人類の敵か」
「まてまて。誤解を解いておきたい。妹が、じゃなくて、おれが殺した村人たちは、盗賊だったんだぞ。しかも誘拐して人身売買するような類の悪党たちだ。まぁ殺し方がアレだったのと、未成年もやってしまったのは、えー、謝罪したいが」
妹の尻拭いをするのは、兄の務め。
ところが団長が不敵に笑い。
「奴らが下劣な盗賊だったことなどは、百も承知だ」
「じゃ、お礼をしろとまでは言わないが、そっちだってOKだろ? 治安がよくなった」
「バカめ。盗賊だろうどなんだろうが、関係ない。その村人は、聖ボーリ教の信者だったのだ!」
「へぇ……」
知らんがな。
というわけで、隣にいるアーグに尋ねた。
「つまり、どういうことだ?」
「聖ボーリ教は、この〈ガリア城塞〉のある国家クラの国教です師匠。神殿騎士団を派遣するのも、厳密には、この聖ボーリ教の総本山」
「よく分からないんだが、盗賊は悪党どものくせに、その聖ボーリ教とやらの信者だったのか?」
「聖ボーリ教では、司祭に贖罪すればどのような罪も許されます。献金などすると、余計に。そしてクラ国民の八割は聖ボーリの天国に行くことを願っているのです」
ははぁ。分かったぞ。
盗賊どもは、悪逆非道をやりつつも、聖ボーリ信者。クラ国に生まれた以上は避けられない。
そして聖ボーリが教える天国には行きたい。
だから教区司祭に多額の献金をして、贖罪とやらを済ませていた。
それはもう多額だったので、吸い上げていた聖ボーリの総本山が、盗賊団の壊滅にブチギレるほどに。
「なんて汚職事件。人類も善人ばかりじゃないとは思っていたが、これだものなぁ。やはり一度、魔族に滅ぼされたほうがいいんじゃないか」
「さすが師匠です! いつかは魔族を支配する、王の中の王!」
「うるさいぞ、アーグ」
騎士団長が、こちらに向かって白銀の剣を向けて。
「全軍突撃! 悪しき魔族を根絶やしにせよ!」
根絶やしというほど、こっちも数はそろってないが。
しかし131人もの敵と同時に戦ったことがない。
これだとディレイどころじゃないな。
そもそも、神殿騎士というのはパリィするのか?
ひとまず広範囲攻撃をかまそうとしたところ──
アーグが聖属性攻撃〈聖瀑布〉を発動。
相手も聖属性なので、効果は半減。
一方、メアリーは接近戦用スキル〈穢れた魔手〉という、闇属性攻撃を仕掛けるも、聖属性が弱点なので、逆に返り討ちにあいかけている。
魔牙龍は、〈火炎地獄〉という火炎属性の大技を仕掛けようとしたが、その攻撃範囲内にメアリーがいたため、途中で停止。
そこを騎士たちに囲まれて、ちくちく攻撃されている。
うわぁ。グダグダが過ぎる。
ふいにダンジョン内を暗闇が閉ざす。
人間は魔族と違って夜目がきかないので、騎士団はパニックにかられた。
ふむ、これは闇属性スキルか?
一体誰が?
アーグが闇黒騎士に目覚めたのかと思ったが、そうでもないらしい。
とにかくこの暗闇に乗じて、いったん退却するとしよう。
「アーグ、魔牙龍、メアリー。一時撤退!」
通路に引き返してから、おれは三人に向かって言った。
「はいはい、ちょっとまったー。パーティ役割的なものを取ったほうがいいんじゃないか。効率よくいこう」
「役割分担ですか、師匠?」
「そうそう。パーティの役割といえば、アタッカー、タンク、回復担当、サポートだろう。まずメアリーは回復担当、魔牙龍は防御力高そうだからタンク。で、アーグ、お前は」
「アタッカーですな?」
こいつ、自分の攻撃が属性相性悪いことに気付いているのか?
「お前は、サポートしていろ。おれがアタッカーするから。さ、効率重視でやりなおすぞー」




