21,パーティ組んだ。
ダンジョン攻略に、131人で来るバカがどこにいる?
そうか。だからおれは、冒険者が好きなんだなぁ。
冒険者の中にも、非常識な奴もいれば、魔人よりも悪辣な奴もいる。
しかし、間違っても131人もの大人数で乗り込んでくるバカどもはいない。
そもそもギルドが許さんし。
「セーラは何をしているんだ? 非常事態ではダンジョンの入口を封鎖するものだろ?」
たとえば遠い昔には、人類の国が大軍で攻め寄せてきたときもある。
そういうときはダンジョンの入口を固く閉ざしておく。別に軍勢が怖いわけではない。
というより、個々のレベルが低い兵たちなど、ボスが出なくとも、魔物たちを差し向ければ容易く殲滅できる。
ただ、それすらもしないのは、『お前ら空気を読め』という話だからだ。
「妹君は、不在です師匠」
「あいつはぁぁぁぁぁ」
メアリーが怪訝そうにつぶやく。
「不在なのですか。わたし、なぜ呼ばれたのでしょう?」
確かに。何か作為的なものを感じるが。
「メアリーは裏口から出るといいよ。どうも今日の〈ガリア城塞〉は、ひと騒動ありそうだから」
メアリーは片手を突き出して、
「いえソルトさん。わたしにも、その神殿騎士団というものを撃退するお手伝いをさせてください」
「え、いいのか? このダンジョンの問題なのに?」
「いまとなっては、わたしはダンジョンを持たない身です。お友達のダンジョンのために戦えるのでしたら、本望です。死に場所を、見つけました」
「おお」
というか、死ぬ気か。
まぁ死んでも復活するが。
「じゃ、行こうか。アーグ、お前はどうするんだ? 聖属性の騎士団ってことは、なんか同僚ぽいけど」
アーグが傷ついた、という顔で言う。
「なにを言うのですか、師匠! 僕は闇黒騎士ではありませんか! 聖属性とは正反対の立ち位置です。光と闇の、闇のほうです」
「そうだったな。すまん、すまん」
いまだに闇属性のスキルを使えないどころか、パッシブスキルが〈光の護り手〉とかいう聖属性なくせに。
まぁそのことを言うと、こいつ、拗ねるからな。可愛い女の子ならともかく、男に拗ねられてもキモイだけだから、何も言わずに黙っておこう。
「闇黒騎士さんでしたか? パッシブスキルが〈光の護り手〉という聖属性ですのに?」
と、メアリーが悪気ゼロの顔で余計なことを言った。
アーグがなんか喚いているが、男のヒステリーに付き合う暇はない。
しかしメアリー、可愛い顔して、相手の気にしているところを平気で抉ってくるなぁ。
やがて後ろから地響きがすると振り返ると、魔牙龍がでかい図体を引きずるようにして追いかけてきたところだった。
「魔牙龍? 中ボス部屋から勝手に出ていいのか?」
「わしの勝手だろうが。そんなことより、貴様がここで騎士団なんぞに殺されては、セーラ様が悲しまれる。それだけは、なんとしても避けたい」
つまり、一緒に戦ってくれるそうだ。
別に殺されても、すぐ復活するんだが。
などとのんきに考えていたら、メアリーがひそひそと言ってくる。
「気をつけてください、ソルトさん。騎士団は冒険者のような常識が通用しません。ソルトさんを生け捕りにして、連れて行ってしまうかもしれませんよ」
「生け捕り?」
「手足を切断してから、拘束魔法を使うとか」
「……」
魔人の復活は死亡してはじめて起こるので、死なずに手足を落とされれば、それが再生されることはない。しかもその状態で拘束されて、どこかの地下牢に幽閉される?
それは死ぬよりも地獄。
まずい。なんか、ちょっとビビッてきた。
メアリー、アーグ、魔牙龍を連れて、先を進む。
〈ガリア城塞〉の中央に、大がかりなバトル可能な大部屋がある。
『部屋』というより、だだっ広い空間だが。ここだけ次元が操作されていて、天井さえも存在しない。
ここに出ると、向こうからぞろぞろと騎士団の奴らがやってきた。
「さて、戦うか」
メアリー、アーグ、魔牙龍と順に見てからハッとした。
「これ。冒険者みたいにパーティ組んでるじゃないか」




