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19,討伐標的。

 


 ここのところ、調子がいい。


 ディレイ攻撃と、おれの〈魔滅の大槌〉は相性が良いようで。

〈ガリア城塞〉に挑む上位レベルの冒険者たちを、次々と殺している。


 ただ殺してばかりでは、冒険者の成長が望めないので、見逃す場合もあるわけだ。

 そこは、ランダムにした。


 つまり、どの冒険者を殺し、どの冒険者を生かすかを、おれの気分で決めては不公平。

 ではどうするかといえば、サイコロを転がすことにした。

 出た目が偶数ならば殺す、奇数ならば逃がす。


 逃がすといっても、向こうが自力で脱出した、と思わせるようにするのがコツだ。


 ところで──まったく話は変わるが、セーラは二日後に帰ってきた。

 盗賊たちに拉致されてから、二日間、何をしていたのか。


 当人は答えなかったが、それからしばらくして、思いがけないところから判明した。


 闇黒騎士見習いのアーグが、城塞都市ガードンから買い出しで戻ってくるなり、ある報告を。


「ある村が大量虐殺にあったとのことでして、師匠」


 こっちは気のない返事をしつつ、買ってきてもらったものを確認。


「ふーん。おい、ジャガイモがないぞ、ジャガが。買い忘れたな」


「はぁ。いえ師匠。そんなことよりも」


「そんなこととはなんだ。ジャガだぞ、ジャガ」


「大量虐殺にあった村が、実はある盗賊団の隠れ蓑だったそうでして」


「なに? 盗賊団?」


 するとセーラの仕業か。

 人さらいするような盗賊たちを皆殺しにしたのなら、それは人類に貢献したことになるな。

 魔人が人類に貢献するのもどうかと思うが。


「まぁ、いいんじゃないか。周辺の人たちも、盗賊がいなくなったということで、喜んでいるだろう」


「はぁ。いえ、ですが師匠。確かに盗賊が死んだのは良いのですが、問題はその殺し方でして」


「殺しかた? というよりジャガイモを買い忘れるって、お前はどういう聖騎士だ?」


「僕は闇黒騎士であります、師匠!」


「とにかく殺し方がなんだって?」


「実は──」


 アーグが詳細に語ったところによると。

 死体はすべて繋がっていた。頭部はなく──溶けたのだろう──首なしの死体が、別の死体のケツに接合され、それが数珠つなぎになって、村を横断していた。


「……なにそれ、グロい」


「人間たちもショックを受けたようです。これまで魔族は、ダンジョンから出ることはありませんでした。それがいま、ダンジョンを出た魔人が、人類を残酷無比に虐殺したと──たとえ盗賊だったとしても。なんとなかには、子供もいたようで」


 まぁ盗賊団にも子供はいるだろうな。子供のほうが活躍する場面もあるだろう。

 いやまて。子供にも容赦ないのか、うちの妹は。


「おれの妹だけど、ちょっと引く」


「どうやら人間たちは、王都にことの次第を報告。討伐のため、神殿騎士団が派遣されるとのことです」


「ふーん。冒険者パーティ?」


「似たようなものですが、少し異なります師匠。神殿騎士とは、教会所属の戦士です。彼らの実力は、最低レベルが300」


「ほう。そんな勢力があったのか。しかし、どこに派遣するって? いやまてよ──どうして、盗賊の村の惨劇を起こしたのが魔人だと、人間たちは分かったんだ?」


「はい。実は、犯行声明文が残されていた、とのことです」


 妹のやつ。

 報酬を更新しただけでは飽き足らず、こんどは盗賊団の村を殲滅し、神殿騎士団なんてものを呼び込もうとしているのか。


「つまり、セーラが声明を残したと。自分は〈ガリア城塞〉のボスだと。それで神殿騎士団が、この〈ガリア城塞〉に派遣される。セーラを討つために」


「いえ、師匠。少々、異なります。確かに神殿騎士団が目指すのは、この〈ガリア城塞〉でしょうが。討伐対象は、師匠です」


「は? なんで?」


「声明文には、師匠の名が記されていたためです」


「…………セーラぁぁぁぁぁ!!」


 とりあえずアーグには、ジャガを買いに行かせよう。


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