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15,クリア報酬を更新。

 

 さて。そろそろ帰ろう。


 一日モブ敵をしたお礼として、【堕落した聖女】メアリーから〈聖の水〉を大量にもらった。


 いや、いらんけど。魔人に聖属性のアイテムを渡すあたり、メアリーって抜けているのかな。

 アホ可愛い。


〈ガリア城塞〉に戻ると、妹のセーラが不機嫌そうに言う。


「なんで冒険者を拾ってくるのよ」


 聖騎士アーグのことだ。

 結局、弟子として拾ってきた。


 闇黒騎士にジョブチェンジはまだかなっていない。どうやら冒険者の同僚を10人ほど殺した程度では、闇堕ち判定にならないらしい。マジか。


「話せば長いが、弟子にしろというので、してやった。まあ闇堕ち冒険者ってやつだ。これから流行るかもしれないし、それならば、おれたちが流行の最先端」


 セーラは腕組みして、アーグを値踏みする。


「ふーん。まぁ、兄貴と同性だからいいとしましょう。これで、女を連れてきていたら、いまごろただじゃ済まなかったわよ」


「そういう男女差別的なことはやめなさい」


 魔人の世界にポリコレはない。

 しかし、なぜセーラは女だと怒っていたのだろうか。妹の心は分からん。


「貴様、小娘型の魔人のくせに、わが師匠に生意気な!」


 空気を読まない聖騎士が、エクスカリバーを抜く。


 セーラは、聖剣エクスカリバーを見やり、意外そうな顔をした。


「聖剣に選ばれたのに、闇堕ちしたの? 最近は、光の精霊たちも見る目がないわね」


 聖剣の装備者は、光の精霊が選んでいるという話だ。じかに会ったことはないが。精霊というのは、コミュニケーション取るのが面倒でな。


 とにかく、いまはせっかく弟子にしたアーグが瞬殺されないようにしなければ。

 面倒だな。


「アーグ。紹介していなかったな。こちらは、セーラ。この〈ガリア城塞〉のボスであり、おれの妹だ」


 おれの妹と知ったとたん、土下座するアーグ。

 土下座……レベル450の冒険者が。なんだかなぁ。


「妹君でしたか! これは失礼いたしました!」


「分かればいいのよ、分かれば。あぁ、まって。通信が入ったわ」


 遠距離通話用のアイテムを手に取り、しばし誰かと会話するセーラ。


 この間に、おれはアーグに居室を案内した。

〈ガリア城塞〉には居住用の部屋がいくらかある。人型魔物のためのものかもしれんが、ここは異形型ばかりなので、ほとんどが使われていない。


 アーグを置いて戻ると、セーラが通話を終えて待っていた。


「兄貴。メアリーに何をしたの?」


 いまの通話相手はメアリーだったのか。

 しかし、なんだこの詰問調は?


「なんだと? 指一本、触れてないぞ」


「ふーん」


 と、疑わしい目で見られる。


「メアリーが、兄貴のことをかっこいいとか、尊敬するとか言っていたけれども?」


「あー、そのことか」


 アーグが誤解した、おれの成り上がりプラン(そんなものは存在しない)を真に受けたために。

 このことをセーラに説明すると、またややこしくなりそうだ。


 そこで何も答えられずにいると、いよいよ疑わしいという様子。


「まぁ、いいわ。で、ディレイはうまくいったみたいね」


「遅延攻撃なぁ。しかし、これをやると冒険者を殺し過ぎる」


 ディレイしないと、こちらが殺されまくるが。

 バランス感覚が大事ということか。


「別に、冒険者がいくら死のうが構わないじゃない。兄貴。しばらくの間、〈ガリア城塞〉内でモブ敵していてくれる? きっと評判になるわよ」


「評判ねぇ。まぁモブ敵は構わんが。どこにいればいい? 入口付近にでも陣取っているか?」


「兄貴には、徘徊してもらうわ」


 徘徊型か……ダンジョン内をランダムに歩き回っている魔物。

 魔物の側もずっと徘徊してなきゃならないので、楽ではないのだ。


「マジかよ」


 セーラは楽しそうに言う。ちょっと、というかかなり嗜虐的でもある。


「きっと面白いことになるわよ。『ボスより強いモブ敵』が徘徊しているなんて、冒険者としては悪夢も同然」


 まぁ縄張り型ならば、駆け抜けるという策を取れるが、徘徊型だと、どこで遭遇するか分からないからな。


「だがなぁ。そもそも、この〈ガリア城塞〉は冒険者が滅多に来ないだろ」


「それなんだけど、あたしも退屈すぎたので、手を打ったわ。これからは、冒険者たちがぞろぞろとやって来るわよ」


「手を打った? 一体、何をした?」


「ダンジョンのクリア報酬を更新し、外部にリークしたのよ。レジェンド武具がクリア報酬と知れば、腕に覚えのある冒険者たちが、ガンガンやってくる、というわけ」


 と、楽しそうに笑う妹。


「……」


 まずい。このままでは冒険者人口が減る。



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