表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/107

14,来るもの拒まず。

 


 頭がおかしくなった聖騎士が、冒険者グループへ特攻。

 ──からの〈聖瀑布〉という大技。


 聖属性の全体攻撃で、魔法と物理のあわせわざ。何が言いたいかといえば、物理防御は不可で、魔法結界でもダメージ半分削るのが限度。

 冒険者たちの半分が、この一撃で死んでしまった。


 聖騎士、強すぎ問題。


【堕落した聖女】ことメアリーが、ボス部屋から出てきた。

 ぺこりと頭を下げて


「あの、今日はたいへん助かりました……えっと、これは何事でしょうか?」


 冒険者同士の争い。

 というより、血迷った聖騎士の暴走を見て、メアリーも目を丸くしている。


 魔人とは、大きく二つのタイプに分別される。

 おれやメアリー、妹のセーラは、人型。

 バトルフォルム時はもう少し魔物寄りになるが、基本的には人と同じ姿をしている。


 お創りになったサリア様の目的は、いまだに分からない。つまり、人型の魔人を創造された意味は。

 人類に潜入しやすくするためか、または最終的には和平交渉をするためだったのか。


 まぁとにかく、何が言いたいかというと、驚いたときの表情は、人間と同じということだな。


「聖騎士が、闇黒騎士になりたいと言い出したもんで」


「はぁ。あの、闇黒騎士というジョブ、ありましたっけ?」


「魔人側に、似たのがいた気がする。というか、屍騎士とかいう魔物がいたような。被るなぁ。まぁ強さ的には、断然、こちらの闇黒騎士だが」


 屍騎士は、『モブ敵にしては強いので、囲まれると厄介だが、一対一で対処すれば怖くない』程度だからな。

 ちなみに真の雑魚は、『囲まれても問題ねぇ』。


「……まってください、ソルトさん! これ、どうされるのですか?」


 メアリーは、ようやく事情がのみこめたようで──


 しかし理解が遅かったのは、メアリーのせいではない。冒険者が、魔人に『寝返る』という事態、そうそう起こるものではない。

 ましてや、レベル400超えの聖騎士が。前代未聞といってよい。


「どうされるのか、と問われても、困るんだよなぁ。そもそも闇堕ちした冒険者の扱いかたマニュアルとか、あったっけ?」


 長らく〈暴力墓〉で引きこもっていたので、いまの時代に疎い。

 案外、闇堕ち冒険者の数も増えているかもしれないし、魔人側がマニュアル作成とかしてくれていたかもしれない。


「そんなものはありませんけど……」


「だと思った」


「ですが、一般的な闇堕ち冒険者は、利用しつくしてから始末します」


「魔人的だなぁ」


「ただ、『あれ』は別です。レベル450の聖騎士ジョブなど、利用することはできません!」


「まぁ無理もない。じゃ、どうする」


「不意うちで、殺しましょう」


「え?」


 わが耳を疑う瞬間。

 メアリーは、聖騎士アーグを背後から急襲し息の根止めよう、と提案してきたのだ。なんという悪魔の発想か! 

 まぁ魔人だしな。


「いまならば──聖騎士が、冒険者たちと戦っているいまならば、わたしとソルトさんの連携攻撃で、始末できます。背後から、死技で決めましょう」


「……いや、まってくれ。おれは、冒険者の背後を取ることはしたことがない。そういうことは、しない主義だ。ボスたるもの、堂々と待ち構え、前口上を述べねばな」


「ですが……前口上を述べてから、堂々と殺せますか? あの聖騎士を?」


「それ、なんだが」


 おれが考えを述べると、メアリーは正気を疑う眼差し。


「本気なんですか??」


「これも何かの縁かもしれないし。よく言うだろ。来るもの拒まず」


「……」


 冒険者グループを皆殺しにし、白銀の鎧を返り血で真っ赤にした聖騎士アーグが、こちらに歩いてくる。

 なんか目がぎらぎら輝いていて、だいぶ正気のほどではない。


 そんな聖騎士が、おれの前に来て、跪いた。


「師匠、これで証明になりましたでしょうか?」


「あー。弟子にしてやってもいいが。いまのおれは、幹部ではないぞ。ただのモブ敵だ」


 聖騎士アーグ、さすがに頭がおかしいだけあって。


「でしたら、師匠が魔人の王の座までなり上がるのを、お手伝いさせてください!」


 は? なにを言っているんだ、こいつは。そんな大それたことは、一ミリも考えてない。


 メアリーが、なんか尊敬の眼差しを、俺に向けてきた。


「え、そんな野望がおありだったのですか? ソルトさん、かっこいい」


「…………」


 厄日だな。最近。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ