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12,聖騎士(中編)。

 


 疲れた。


 おれは思ったね。冒険者を殺すのも、これは疲れるぞと。


 それに、ちと反省もしている。殺し過ぎた、と。


 冒険者は、つまり人間は、魔人と違って復活しないのだから、そこは考えてあげるべきだった。


 この冒険者たちは、長い激闘の末、レベルを上げてきたのだ。

 なのに、調子に乗って、ディレイ攻撃で仕留め過ぎた。ちょっとタイミングをずらすだけで、こうも大技が決まりまくるとは。


 パリィが現れる前、おれの黄金時代だって、こんなには殺していない。

 まぁ、あのときは手加減していたからな。手加減しなきゃ、ほとんどの冒険者を殺してしまっていたから。


『最初の関門』のダンジョンを任されたボスというのは、ある程度は冒険者の成長も助けてやらなければならない。


 闇女神サリア様も、そのことは承知されていた。

 というより、サリア様の教えでもあったのだ。


 魔人は、何も人類を滅ぼしたいわけではない。征服にも、そこまで興味はない。

 人類とのバランスを保つためには、冒険者は不可欠。

 だからこそ、冒険者をある程度は成長させてやる必要がある。


『最初の関門』をおれが任されたのは、おれはそのことを理解していたから。

 だから、将来性のある冒険者には、あえて敗北してやることもあったものだ。

 ほかの幹部ボスどもは、プライドばかり高いから、そういうことができない。


 しかしサリア様がお隠れになり、また冒険者たちもパリィスキルを簡単に会得できるように強化された。


 で、そのうち、おれは手加減する必要もなくなっていたわけだ。だってパリィされるものなぁ。


 ところが、ディレイ攻撃で全盛期なみに力を使えるようになったせいで、ついつい冒険者たちを殺しすぎてしまった。

 これでは、ほかのプライドの高い幹部ボスどもと同じじゃないか。サリア様にもあわせる顔がない。


 そもそも、おれはディレイの効果だけ試せればよかったわけだ。それはもう成した。

 それに、メアリーのための時間稼ぎも済んだことだし。


「退散するときだな。メアリーに断るか、モブ敵が減りますよと」


 ところがメアリーに報告しにいく前に、ぞろぞろと冒険者グループがやってくる。


 不可解だな。冒険者って、あんなにつるむものだっけか?


 もともと冒険者がソロや、パーティを組んでも数人までなのには、理由がある。


 まず冒険者が増えたからといって、それで強化されるわけではない。

 互いに連携が取れず、広範囲への攻撃なども仲間を巻き込まないように制限したりして、逆に弱体化してしまう。


 何より、こいつらは名誉欲のかたまりなので、ソロか、せいぜい少数で、功績を成したがるわけだ。


 だから、10人近くで行動しているのを見るのは、稀だ。

 何か、とんでもない異変でもあったのだろうか。


 ……まさか、おれか? おれのせいか?

 その可能性はありそうだな。


 おれはおれで、困った。ここにきて冒険者が10人規模とは。

 ディレイ攻撃を駆使したら、なんか全員、殺してしまえそうだが。


 それは、サリア様の御心に反することだろう。

 このあとに控える【堕落した聖女】のメアリーには悪いが、ここはあえて負けるとするか。


 まぁ負けるのは難しくない。ディレイしなきゃいいだけで。


 で、こっちがバトルフォルムで構えていると──冒険者グループが立ち止まり、その中から一人だけ前に歩いてきた。

 白銀の甲冑を身につけた騎士。聖属性か。

 まてよ。聖騎士じゃないか。珍しい。


 前に完成された聖騎士を見たのは、どれくらい過去のことか。もう、かれこれ100年くらいになるか。


 いや、たしか二年前に聖騎士の卵みたいな冒険者と戦ったことがある。

 なぜかその『聖騎士見習い』は、パリィ縛りみたいなことをしていたものだが。


 まぁ、なんだっていいか。


 冒険者グループたちは、この聖騎士が頼みのつならしい。声援を送っている。


「アーグさん! そんな奴、やっちまってください!」

「【破壊卿】なんか、あなたの敵じゃありませんよ!」

「いけ、聖騎士!」


 という感じで。

 聖騎士、レベル450か。強いな。

 ここいらで倒されるに、ぴったりだ。


 聖騎士アーグとやらは、なんとエクスカリバーまで装備している。

 おれが、どう斬られたものか、と考えていると。


「またお会いできましたな、師匠!」


 と、なんか感動した様子で言われた。


 いや、まて、誰だっけ、こいつ。


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