10,黄金時代が戻ってきた。
残りの二人の冒険者。
後方支援タイプと、火力特化の魔術師タイプ。
すっかりパニックになっているようだ。
まぁ、無理もない。
近接戦闘タイプの仲間が、いま目の前で『パリィ失敗→ぐちゃりと即死攻撃くらって死亡』の悲惨なコンボを決めてしまったのだから。
「ど、どうして、トーマスがパリィ失敗しているのよ!?!」
「し、知るかよ! だが、あいつが失敗したというか、なんか、タイミングおかしくなかったか?」
「タイミングって?」
「【破壊卿】の振り下ろしのタイミングだよ!」
「こ、攻撃が遅れていたってこと? どれくらい?」
「は?」
「どれくらい遅れていたのよ? それが分からないと、パリィのタイミング、取れないじゃないの!?」
「おれが知るかよ!?」
「あぁぁぁ、トーマス! トーマスが、あんなことに」
『あんなこと』とは、ほとんど原型を留めていないくらい、ぐちゃりと潰れていることだろう。一撃でミンチ状態。
そういえば、おれはユニーク武器〈魔滅の大槌〉で、ぐちゃりと潰して殺すタイプ。
かつては『殺されかたがグロすぎる』と、冒険者たちから敬遠されていたのだった。パリィとかが現れる前の、黄金時代に。
いやまて。ディレイがこんなに簡単にできるなら、これから黄金時代の再来もありじゃないか。
おれは〈魔滅の大槌〉を振りかざして、二人の冒険者たちへと向かう。
「次は、貴様らだ」
と、それっぽいことを言いながら。
正直、内心ではこうも思っている。
こんなに上手くいくことが続くもんかね?と。
自信を取り戻せるのはまだ先になりそうだ。
ところで──
女の冒険者が、後方支援タイプ。
後方支援タイプは、バフとかデバフ担当ということ。
どうやらこの女冒険者は、仲間にバフ効果をかけるのが専門らしい。こっちにデバフ攻撃とかしてこなかったので。
バフで火力アップされた魔術師タイプの男が、火炎大弾を発射してきた。
火属性か。
あんまり知られていないが、おれって、弱点属性とかない。というより、すべての属性攻撃に対して、耐性があったりする。
パリィされてダウン状態になると、『耐性』が無効化されるので、ここのところ意味がなかったが。
ダウン状態でない今ならば、そんな火属性攻撃、屁でもない。
「く、くらってないわよ! あんた、もっとしっかりしなさいよ!」
「うるさい! 僕だって、ちゃんとやっているんだ!」
どっちから仕留めるべきか?
とりあえず、女冒険者のほうを仕留めよう。というのも、まだデバフの手札が残っていないとも限らない。昔から、デバフ食らうのは嫌いなんだよね。
「くらえ、《連魔弾》!」
気分がいいので、死技二つ目。まぁ、単純に〈魔滅の大槌〉を連続で叩きつけるだけだがな。もちろん、一撃目をパリィされないよう、ディレイするつもりだった、が。
「きゃぁぁ!」
と、女冒険者は、ただのガードをした。
魔術タイプのほうが怒鳴る。
「バカ! 回避しろ! 回避だ!」
もう遅い。〈魔滅の大槌〉の連続攻撃をガードするには、相当の『筋力』が必要というものだ。
あいにく、こちらの女冒険者にはそんなものはない。ということで。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミンチ二人目。
最後に残った冒険者が叫びながら、短剣を抜き、火炎属性にしてからおれの前に出た。
パリィは盾でなくてもできる。この短剣でパリィしてから、致命を取ろうという考えか。
「このクソ野郎! 来い! 殺してやる!!」
おれは『ディレイ、ディレイ』と頭のなかで考えながら。
「よいしょ」
〈魔滅の大槌〉を通常動作で振り下ろす。
魔術タイプ冒険者が勝利を確信してパリィ発動。
「勝った!!」
あいにくだったな。
こっちは、振り下ろした途中で、少しだけ動きを止めたのだ。
これで相手のパリィタイミングがずれて、失敗。
「な、なんでだぁぁぁ!!」
はい、ぐしゃり。
ミンチ三人目。
いや、武者タイプも加えれば四人目か。
いい調子だな。怖いくらい。




