1,パリィされるのが辛い。
《魔滅弾》!!
わがユニーク武器〈魔滅の大槌〉の渾身の一撃を受けてみよ。
と、必殺大技を発動。
説明しよう。
ユニーク武器〈魔滅の大槌〉は、闇女神サリア様より授かった、闇黒属性の大槌である。
重量は100トンごえで、怪力スキルを持ったおれだからこそ扱える。
魔人の中にも、この〈魔滅の大槌〉を振り回せるのは、おれくらいなものだ。
そして《魔滅弾》とは、〈魔滅の大槌〉の破壊力をフルに使える必殺の一撃。まともに喰らえば、たとえかの伝説の勇者だろうとも、粉みじん。跡形も残らんぜ。
が、しかし。
勇者どころか、おれの《魔滅弾》はレベル一桁の冒険者にさえダメージを与えられなくなって、久しい。
なぜか?
あれのせいである。
見よ。いまも目の前で、レベル7の雑魚冒険者が、おれの《魔滅弾》にあれをしやがった。
パリィである。
闇女神サリア様がお隠れになってから、この世界の理も随分と変わってしまった。魔人の肩身がせまくなった、というか。
おれたち魔人は弱体化したわけではない。
が、冒険者側に簡単に装着できるスキルが増えすぎた。
その中でも、レベル1から装着できる、このパリィスキル。
強化もしていない、ただの木製の盾でも使用可能。タイミングさえあえば、勇者も殺せるおれの《魔滅弾》でさえ、ぱーんと弾かれる。
なんとも、簡単に。腹立たしいが、メチャクチャ小気味よく。
しかもこのパリィスキル、ただ単に弾くだけではない。
パリィをかまされた敵、この場合はおれは、なんと体勢を崩される。
渾身の《魔滅弾》を無効化されるだけではなく、なんと強制でダウンさせられるわけだ。
そんなの、ありか?
百歩譲って、相手がレベル100とかの熟練冒険者なら、まだ話は分かる。
(どうでもいいが、奴らのレベル上限は523らしい。なんで半端数字なのか? 知らん)。
ところがレベル7とかの、冒険者なりたての雑魚。
下手したら、下級のモブ敵にさえボコられる雑魚。
それなのにパリィが決まったら、おれは強制で、ダウンかまされるんだぞ?
闇女神サリア様に愛された、魔人14幹部の一人である、このおれが。
たかがパリィで……しかもダウン中は、こっちからは反撃はできない。タコ殴りにされる。
いや、おれもダンジョンボスを任された幹部だ。一度のタコ殴り程度では死なん。
死なんが──ダウンから復活。〈魔滅の大槌〉の通常攻撃。
なんかこれもパリィされる。別に《魔滅弾》でなくともパリィされる。
で、ダウン→タコ殴りされる。
厳密には、槍でちくちくされるパターンが多い。レベル低めの奴らって、できるだけ距離を取って攻撃してきやがるからな。
で、ダウン復活。
ここから反撃だ。と思いきや、冒険者はもう距離を取っている。仕方なく近づいていって、〈魔滅の大槌〉の上段攻撃。
パリィされる。タコ殴りにされる。
ジャンプしてからの〈魔滅の大槌〉攻撃。
パリィされる。タコ殴りにされる。
かくして、ついにおれのライフゲージは尽きる。
闇女神サリア様のご加護を受けているので、完全に消滅することはない。
数時間たてばまた復活できる。
が、こうして倒されたときには、サリア様より頂いた魔水晶をばらまいてしまう。
これら魔水晶とは魔物や魔人が倒されると散らばるもので、憎たらしい冒険者どものレベル上げに使われているそうだ。
サリア様もお嘆きになることだろうな。
魔水晶とは、もともとはおれたちの身体を構築するものなのだから。
とにかく、ここのところは毎回、これだ。
パリィされまくり、ついに息絶える。
意識が途絶える前、冒険者どもの言葉が聞こえてくる。
「これで大量の魔水晶を大稼ぎだ。一気にレベルを上げられぞ。ステ振りどうすっかな~」
このおれを、レベル上げ要員に、使い、やがって………お許しください、サリア様。
がくっ。