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入信、する?

 俺は今、岐路に立たされている。

 神を信じるのか、信じないのか。

 その二択のどちらを取るかだ。


 何も難しいことはない。村では神の存在など教えてもらわなかった。なぜならおばばが絶対だからだ。

 おばばが正しいと言えば正しいし、間違っていると言えば間違っている。それが村の掟だ。

 じゃあ神を信じないのか。

 と言われれば、困ってしまう。


「入信、する?」


 目の前には青と白を基調としたワンピース型の服に、長い金髪をフードで覆った女がいる。

 ギムだ。

 シンシアと別れた後、もう一度ギムと会えないかな、と思って教会へとやってくると、予想通りギムと出会えた。

 豊満な身体が妙にそそる。彼女を見ているだけでも幸せになる。男ならギムに会いたくなるのは何もおかしなことじゃない、よな。


 再会したときはめちゃくちゃかわいかった。笑顔で俺を迎え入れてくれた。


「ギム様、あなたに感謝してる」


 と言って俺の手を握ってくれたり、美味いスープをごちそうしてくれた。

 もうそれだけで惚れてしまいそうだ。いや、正直言うと完全に惚れた。心の中で親父に報告した。嫁ができたと。


 ギムがとある一言を発するまでは。




 ゴレムに壊された町は悲惨なものだったが、意外なことにカルチア市民は強かった。

 破壊された建物を一秒でも早く直すことに躍起になっている。

 市民も兵士も力を合わせて瓦礫の撤去や救出作業、そして修復作業を行っていた。


 城壁の内側を歩いているときは奇妙なものを見る目で見られていたが、城壁の外側を歩くと一変してたくさんの人が声を掛けてくれた。


「あんた、何者なんね! これ食っていき!」


 青果店のおばさんはルンゴをいっぱいくれたし、その隣の店のおっさんは、


「兄ちゃん、嫁を探してるんだって? うちの娘どうだい?」


 と女の子を紹介してくれた。三歳の。

 将来は美人になる予定らしいが、丁重に断った。

 足の裏に丸を三つ描いたようなおっさんの娘が美人になるとは思えない。そもそも三歳の女の子を予約する気はない。


 そんな優しく強い市民に称賛の言葉を受けながらも、俺は教会へと向かった。

 全身真っ白の服をきたじいさんの足腰が心配だったから、というのはもちろん建前で、ギムに会いたかったからだ。


 そして会えた。

 手を握ってくれた。

 スープを振る舞ってくれた。

 じいさんはどこかで横になっているらしい。

 つまりギムと二人きりだ。

 女と二人になったら何をする?

 焦るんじゃない、男子諸君。まずは会話だろ。

 ってことでいろいろ話をした。


「あなた、名前は?」


 とまあ、当たり障りのないところから始まっていく。ギムは少々話し方に癖があるが、それがまたかわいい。


「オリバだ。君の名前はギム、でいいのか?」

「ギム様は、ギム様」

「そ、そう……」


 結局どう呼んだらいいんだ? 様をつけないといけないのだろうか。

 ギムが俺の目の前にある皿にスープをなみなみ注いでくれた。これで五杯目だ。ちなみに俺の腹は限界を超えている。

 断りたいのは山々だったが、キラキラした目で俺に微笑みかけてくれるギムを見ると、誰が断れるだろうか。


「オリバ、強い」

「別に強いわけじゃないが……」

「特別な力、持ってた」

「特別……らしいな。さっき知ったんだが」

「どゆこと?」

「俺は確かに能力を持ってる。でもみんな持ってるもんだと思ってた」

「ギム様、持ってない」

「ギムだけじゃなくてみんな持ってない……らしい。シンシアがそう言ってた」

「オリバ、特別」

「んー。まあ、そうなるかな」


 俺は照れ隠しにスープを飲む。ギムが入れてくれたから、飲まないといけない気がする。


「ギム様も、特別」

「うん?」

「ギム様、邪気が強力な場所、分かる」

「へ、へえ……?」


 親愛なる男子諸君、ここで俺から注意がある。絶対に話をテキトーに合わせてはいけない。

 相手がいくら美人でも怪しい単語が出てきたら話を逸らすべきだ。邪気、なんて単語は一発退場ものだ。

 俺がここでやるべきことはスープのレシピでも聞いておくことだった。

 しかし悲しいかな、まともに女と話したことがない俺が、目の前に美人がいる状況でまともな判断ができるわけもなく。


「邪気か。そりゃすごい」

「ギム様、すごい。ギム様、多分神」

「神……」

「ギム様、神」

「……」


 まさか教会で神と出会えるとは。なんて考えている場合じゃない。考えるべきは、今ギムは俺を笑わせようとしているかどうかだ。

 しかし。

 だんだんと空気が重苦しくなっていることにやっと気づいた。

 キラキラしていたはずのギムの目はいつのまにか光を失って虚ろになっているし、俺の身体は能力を使っていないのにスープを受け付けなくなっている。

 俺はスプーンでスープをすくっては皿の中に戻すという無意味な行動を繰り返していた。


「信じる?」

「えっ、何を?」

「ギム様、神様。信じる?」


 会ったばかりの女の子に自分は神だと言われて信じられる奴がいるわけがない。


「その前に、どうして神だって思うんだ?」

「神託、受けた」

「神託? 神のお告げってやつ?」

「違う。神様、継承した。目覚めたら、ギム様だった」


 まったく意味が分からん。神様って継承できるのか。


「目覚めたらってことは、寝てる間に神託を受けたってことか? それは夢って言うんじゃ」

「神託」

「俺は昨日魚になって空を飛ぶ夢を見たが、これも神託か?」

「それは夢」

「違いが分からん」

「神様、継承した。だから神託」

「そうか」

「ギム様、神様。ギム様、教祖」

「新しい宗教なのか」

「新しいといえば新しい」

「なにか名前はあるのか?」

「ギム様教」

「へえ」


 どこから話がこじれたのか、もはや記憶もない。神様が夢に出てきて継承したから教祖になりましたって話、どうやって信じられるんだ。


「入信する?」

「教徒になれって?」

「第一号」

「他に誰もいないのか」

「今だけ、大サービス」


 売り物かよ。


「入信してなにかメリットはあるのか」

「そのスープ、二百クロンに値引きする」

「えっ!? これ金取るの?」

「ギム様、無料なんて言ってない」と頬を膨らませるギム。


 頬を膨らませたいのはこっちの方だ。くれなんていってないのに勝手に出てきたら、無料だって思うだろ、普通。だいたい、二百クロンつったら魚一匹買える値段だぞ。具も入ってないスープにそんな値段するのかよ。


「俺も聞いてない。元はいくらなんだ?」

「二千クロン。大サービス」


 それはサービスって言うんじゃない。詐欺って言うんだ。二千クロンのスープを五杯飲んだから、合計一万クロン。庶民なら一日中汗水垂らして働いてやっと手にするくらいの金額だ。ほとんど金のかからない村で育った俺にとってはとんでもないほどの大金になる。


 俺が冷や汗をダラダラ流しながら黙っていると、さっきまで目から光を失っていたはずの詐欺女が、すごくニコニコしてこっちを見ていた。


「入信、する?」

「しなければどうなる?」

「一万クロン。あ、おかわり、する?」

「しない! もう腹一杯だ」

「入信は?」

「それは……」


 さて、岐路に立たされたわけだが。残念なことに俺は現在一万クロンも持っていない。

 だとすると、夢と現実を混同した詐欺女の教徒になるよりない。


「具体的になにをするんだ」

「弱者、救う」

「俺も弱者なんだが」

「オリバ、強い」

「あー……そこに繋がるのか。でも救うつったって、どうやって?」

「暮らし、良くする」


 貧乏な俺から金を取ってか?


「漠然としてるな」

「あと、邪気、なくす」

「どうやって?」

「悪い人、消す。邪気、なくなる」


 今の俺にとっては、目の前にいる人が一番悪い人に思える。


「入信、する?」


 だんだんギムの顔が近くなる。

 俺は頭の中で、所持金がいくらだったか計算する。

 村から持ってきた金から今までに使った金を引けば、まだ数千クロンはあったはずだ。

 俺は、決めた。


「入信、する」


 こう言うしかないだろ?

「面白い!」「続き読みたい!」「ギム様、かわいい!」「入信、する!」


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