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え? 能力って、俺しか持ってないんですか?

 カルチアの中でもそこそこでかい屋敷。その一室で二人の男女と対峙していた。

 年配の男が真ん中で偉そうに座っていて、その隣にさっきの会話にならない女がいる。


「あー……、シンシア、から、聞いた……。ゴレムを、対処、してくれた、ようで……、礼を、言う……」


 真ん中に座っている男が、目を瞑ったまま今にも死にそうな声で言う。一つの単語を口にするだけで苦しそうなんだが、大丈夫なんだろうか。というか起きてんのか。ずっと寝てると思っていたぜ。


 ちなみに、シンシアというのはさっき俺をここに連れてきた青髪の女だ。

 この部屋に俺を招き入れる前に「クルジ殿に粗相の無いように注意しろ」と命令してきた。

 つまり死にそうに見える男はクルジ殿というらしい。そしてクルジ殿はシンシアにとって祖父に当たる方だという説明を、ここにくる途中で受けている。


「どうも」


 俺がそう返すと、シンシアがクルジ殿に耳打ちする。

 耳打ちと言ってもはっきりとした声で言葉にしているので、俺の耳にもしっかり聞こえていた。


「光栄です、と言っております」


 間違ってはないが、そこまでは言ってない。というかこれはなんだ、通訳か?

 俺は気付かないうちに異次元の言語でも話しているのか?


「あー……、うむ。ゴレムが……、やってきたのは……、数年……ぶり、かの……」

「はあ」

「実に十年ぶりでございます、と言っております」


 言ってない。

 誤訳にもほどがある。てか十年前のことなんて知らん。


「あれから……、十年……か。短いのう……」

「はあ」

「時が過ぎるのはまことに早いものです、と言っております」


 俺ここにいる意味あるか? もう帰っていいか?


「して……一人で……どのようにして……対処したのかの……」

「普通に能力を使いました」


 答えたが、今度は訳してもらえなかった。シンシアが問い詰めてくる。


「それじゃ分からん。もっと具体的に言え」

「ただ『異次元緩和』能力を使っただけです」

「異次元緩和? なんだそれは」

「全てを緩和する能力です」

「なにを言ってるんだお前は」


 シンシアが呆れた顔をする。

 俺、なんか変なこと言ってるのかな。


「全てを緩和する能力ですよ。ああ、異次元緩和っていう能力名は、うちの村のおばばが付けたんで、みんな知らないかもしれないですけど」

「さっきから能力能力と言っているが、私にはお前が何を言っているのか分からないんだが」


「え?」


 俺はそこで初めて気づいた。

 シンシアは『異次元緩和』に引っかかっているんじゃない。

 『能力』という単語に引っかかっているんだ、と。

 俺は恐る恐る聞いてみた。


「えっと、みんな能力を持ってるでしょう……?」

「なんのだ?」

「だから、俺の異次元緩和みたいな」

「あるわけないだろ」

「………………マジ?」


 俺は衝撃を受けた。

 みんな同じような能力を持っているんだと思っていた。


 この能力を初めて両親に見せた時、村のおばばのところへと連れて行かれて、命名を受けた。

 それから、絶対に人前で使うなと言われた。

 理由は「恥ずかしいから」とおばばは言っていた。

 俺はなんとなく、この能力は他人に比べて劣っているんだと思っていた。


 が、違ったのか。

 能力は俺しか持ってないものなのか。

 恥ずかしいから、というのは人に能力を見せないための口実だったのか。


 俺が過去を思い出して困惑しているさなか、シンシアはまたテキトーな訳をクルジ殿に吹き込んでいた。


「不思議な力を発揮して市民と兵士を守った、と言っております」

「ほう……不思議……。見せよ……見せよ……」

「見せよ?」

「ここで使って見せろと仰っているのだ。早くしろ」

「さっきのゴレムとの戦いで、かなりへとへとなんですが」

「うるさい。早くしろ」


 まったく、傲慢極まりない女だ。

 へとへとと言っても、まだ能力を使うくらいの体力は残っている。

 俺は二秒ほど考えてから、シンシアの腰に目をつけた。


「なんだ。えっちな目で私を見るな」


 そんな目してねーよ。


「見てません。そのレイピアで俺を突いてきてください」


 言うと、シンシアの目つきが鋭くなった。


「この場で人殺しをしろと?」

「言ってません。というか、当たりませんよ。さっき言ったでしょう。全てを緩和するって。どこまで緩和できるかは分かりませんが、ゴレムの力でさえ俺には通用しませんでした。あなたが俺みたいな能力を持っていないなら、レイピアごときじゃ『異次元緩和』を破ることはできません」

「貴様」


 シンシアの髪の毛が逆立つ。

 おそらく、かなり剣の扱いに自信があるのだろう。


 彼女がレイピアを抜きながら、でかい机の前に出てくる。

 俺はまったく動かなかった。


 シンシアがレイピアの剣先を俺に向けて構えた。

 俺はこのまま動かないでおくつもりだったが、ちょっと予定を変更して、右手だけ動かすことにした。正直言って、まだ信じられないのだ。自分しか能力を持っていないという事実に。


 シンシアが床を蹴る。

 それに合わせて俺は右手を動かした。

 向かってくる剣先に向かって右手の人差し指を出す。


 ぴと。


 レイピアは見事に俺の右手人差し指の腹でぴたりと止まった。


「なっ!?」


 シンシアが目を見開く。

 対して俺は心の中でほっとする。


「これが……能力?」

「はい」


 シンシアの力が抜けていく。それと同時に俺も右手を下ろした。

 彼女はまだ納得いかない様子だったが、レイピアを納めた。


「ほほう……。なるほど……、不思議……」


 ずっと目を瞑っていたように見えたが、ジジイはちゃんと見ていたらしい。

 シンシアがクルジ殿の隣に戻る。まだ納得していない感じがする。


「して……、名は……、なんと?」

「オリバです」

「我が名はオリバと申します、と言っております」


 今のは通訳必要か?


「むう……、オリバ……、君に、栄誉……称号を……、授ける……」

「栄誉称号?」

「ありがたき幸せ、と言っております」


 聞き返しただけだぞ。

 てか栄誉称号ってなんだ。何に使えるんだ。買い物したら割引とかあるのか?


「うむ……。これからも……カルチアに参られよ」

「はあ」

「カルチア市民を護るために、いつでも馳せ参じる所存です、と言っております」


 勝手に決めるな。嘘を吹き込むな。

 しかしでたらめシンシアの言葉にクルジ殿は非常に満足したようで、口角を上げてゆっくりと何度も頷いた。


「では……下がって……よいぞ……」


 やっと解放の許可が出た。

 いったいこの時間はなんだったんだろう、と思う。


「じゃ、失礼します」

「クルジ殿を一目見ることができ、幸せなひとときでした、と言っております」


 ……もうそれでいいよ。好きに訳してくれ。

 くるりと半回転し、二人に背を向けて扉のノブに手をかけようとした俺だったが、一つだけ気になることを聞いてみることにした。

 また半回転し、二人の方を見る。


「一つだけ聞かせてほしい。リューゲンっていうのは、何者です?」


 別に何気ない質問だったと思う。ただ、この二人なら彼のことを知っているかな、と思って聞いてみただけだ。

 まあ、どちらかと言えば俺が気になっているのはギムのほうなんだが。


 しかし返ってきたのは思いもよらない反応だった。

 それまで目を瞑っていたジジイがカッと目を見開き、大声を張り上げたのだ。


「そんな奴は知らん! さっさと出ていけ!」


 めちゃくちゃビビった。

 シンシアもこれでもかというくらい、目の端を釣り上げて俺を睨み倒している。


 というかこのジジイ、普通に喋れるじゃねえか。しかも今、シンシアの通訳なかったぞ。今まで俺は芝居でも見せられてたのか?

「面白い!」「続き読みたい!」「ギム様、かわいい!」「入信、する!」


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