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59話 決闘を応援します -4-

「リーゼリット!」

「リーゼリット嬢!」

「リーゼリット殿!」


 聖ワドルディから突然抱きしめられて、頭を撫でられたかと思えば、あの方は私に魔力を分け与えて去っていった。


 一連の出来事にちんぷんかんぷんである当人の私は、今から推したちに質問攻めに遭いそうな雰囲気だ。

 私自身も頭の中で整理したいところなのに、さっきまでの出来事が気になって仕方がない様子が窺える。


「リーゼリットよ、聞いていいか? 聖ワドルディとそなたとは、いったいどういった関係なんだ?」


 早速答えづらい質問が、ラドゥス王子からきてしまった。

 私と同じく、"聖なる乙女"だった前世の姉を通じて知り合いになった関係だなんて、なんと説明したらいいのかわからない。

 とりあえず、前世の姉については伏せて答えてみる。


「そっ、そのっ、聖ワドルディ様には、私の"天啓"さえお見通しのようですわ。それで時折こうして、私のことを手伝ってくださるみたいなのです」

「聖ワドルディ様が"天啓"を存じ上げていたとして、なぜリーゼリット嬢を手伝う必要性があるんだ?」


 これまた答えづらい質問が、シュジュアからきてしまった。

 聖ワドルディと前世の姉が仲が良かったおかげで、私まで気に入られているなんて、なおさらどう説明ししたらいいのかわからない。


「聖ワドルディ様は、私の"天啓"の内容を存じ上げているうえで気に入っていらっしゃるようです。特にとある人間の記憶については、興味深いようですわ」

「聖ワドルディ様がとある人間の記憶について興味を持っていたとして、なぜリーゼリット殿を抱きしめたり、頭を撫でていたりしたのですか?」


 どれもこれも、答えづらい質問ばかりが飛んでくる。

 ターナルからきた質問も、結局は前世の姉に繋がっていて、簡単に説明なんてできはしない。


(「もうやだ、由香里お姉ちゃん……」)


「「「お姉ちゃん……??」」」


 心の中で呟いていたつもりだったが、声に出ていたらしい。

 私は観念して、前世の姉についてなるべく短く説明することにした。



「つまり、とある人間の記憶での姉が」

「リーゼリット嬢と同じく能力者で」

「聖ワドルディ様と仲の良い関係だったということですか?」


 あえて前世とは言わずに、とある人間の記憶で押し通してしまった。

 前世の記憶については今でも曖昧なので、いくら推したちを信頼していてもうまく話せないのが苦しいところだ。


「それで聖ワドルディは、とある人間の姉を通してリーゼリットを見ているということだな?」

「はい。それで、合っていると思います」

「確証はないのか?」

「私も聖ワドルディ様とお会いしたのはこれで三度目なので、あまり自信がないのです……」


 ラドゥス王子からの質問に、私はもうたじたじだ。

 それでも、当初の目的を思い出して私は発起しようとする。


「それよりも今は、鍛錬の続きをしませんか? 決闘まで時間があまりないのですよ」

「リーゼリット嬢にとっては、三度しか会っていない相手からの抱擁ほうようは気に留めないことなんだな」

「リーゼリット殿には、私たちが恋する少年(・・・・・)と茶化されたことなど、どうということはないと思われているのでしょう」


 シュジュアとターナルは、どうやらまだ拗ねたままのようだ。

 抱擁されて驚いたのは私なのに、なぜ責められなければいけないのか。

 私のことを好いてくれているからとはいえ、少々遺憾である。


「シュジュア、ターナル。時間がないのは本当だ。くよくよしているぐらいなら、もっと意識されるように動きたまえ」


 ここで、ラドゥス王子が助け舟を出してくれた。

 一番に通常の思考に復帰してくれたのは、ラドゥス王子のようだ。


 だがここで、昼休みの時間が終わりになりそうなことに気づき一時解散となった。




 ──今日の放課後。


 再び闘技場に集まったのは、ダリアン王子、ラドゥス王子、シュジュア、ターナル、私、ユリカの6人だ。

 ダリアン王子やラドゥス王子、シュジュア、ターナルの4人は、先に鍛錬を始めている。


「リーゼリット様、今日で魔法の効果が切れてしまったのではありませんか? もう一度かけ直しますよ?」


 ユリカが私に、今日も魔法をかけようとしてくれる。

 ユリカの魔法は強力なのでかけてもらいたいところだが、今の魔力を持っている私だとどんな相乗効果を生みだすかわからない。


「魔法のことなんだけれど、ユリカさん。今日はかけ直さなくて大丈夫よ」

「でもリーゼリット様の場合、身体強化がなければ特訓への参加は難しいですよ」

「そうだったのだけれど、聖ワドルディ様に魔力を分け与えてもらったの」

「そうなんですか、聖ワドルディ様に……。せっ、聖ワドルディ様──!?」


 ユリカは私の口から、伝説級の魔法使いの名前が出てきたことに大層驚いている。


「聖ワドルディ様がこちらにいらっしゃって、私に魔力を注入して去っていったのよ」

「魔力を注入なんて、"聖石"以外でそんなことができるのですか?」

「それが私は特例みたいで、"聖石"と同じようなことができるみたい。あっ、これはダリアン様には内緒ね」


 ユリカは考えが追いついていないようだが、納得がいったような顔をしていた。


「それで、リーゼリット様と手を繋ぐと力が湧いてくるのですね……。わかりました、それがリーゼリット様の意向ならダリアン殿下には黙っています」

「──! ありがとう、ユリカさん!!」


 私はユリカにお礼を言い、いざ自分に魔法をかけることにする。


【身体強化──!!】


(すごい! 体がとっても軽いわ!!)


 私は模擬戦用の剣を手に取り、先に鍛錬を始めている4人のもとへ向かう。

 そして、彼らと同じように特訓を受ける。


「ラドゥスよ。リーゼリットの剣だが、昨日よりも重く感じないか?」

「──!? 僕もそう思いますが、きっとその、昨日よりもユリカの魔法が効いているのでしょう」

「……そうであろうか?」


 ダリアン王子が私の身体能力に違和感を感じているようだが、ラドゥス王子がなんとか誤魔化してくれているようだ。

 そろそろ、ダリアン王子にバレそうな気がしなくもないが、なるべく能力を打ち明ける人数は最小限にしたい。


 疑問に思われたりしながらも、ラドゥス王子と私は特訓に食らいついていた。

 ダリアン王子やターナルの剣術に比べると、まだまだ洗練されてはいないがこの二日間ほどで剣筋は良くなってきた。

 シュジュアの体術も兼ねることで体さばきも覚え、体の動きも進化してきた。

 この調子なら、決闘の際にも特訓の成果が表れていることだろう。


 鍛錬が終わったころには、私はくたくただったがなるべくそんな姿はみせないようにした。

 魔法で状態回復もできるのだろうが、分け与えてもらった貴重な魔力を無駄遣いしたくはない。


 明日以降の学園登校と鍛錬に向けて、私は日々ボディケアを欠かさないことにするのだった。


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