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プロローグ
まだ、夢に見る。
あの日の事、それまでの事。
良い事、悪い事、嬉しかった事、悲しかった事、幸せだった事、そして_あの日の絶望も。
私は、こんな力が無くても十分過ぎるほどに幸せだった。
優しかったお父さん、お母さん、理想のお兄ちゃん、そしてメイドのマリア。
何気ない日々がどれだけ幸福な事かを知るにはまだ私は幼かった。
そして、その何気ない日常が一本の針で簡単に壊れる事も知らなかった。
でも、もう良いの。そろそろこんな生活からもきっと解放される。
そんな日が訪れる事だけを夢見て今日も息をする。
息をするぐらいしかもう能のないこの体で早く、一刻も早くあの空の向こうへ行きたいと願いながら。