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とりあえず異世界転移してみようか


 自称女神様(アテナと言うらしい)に話を聞いたけど、説明の順番がめちゃくちゃな上に雑談も入って訳が分からなくなったので、以下抜粋(ばっすい)


■異世界について

・異世界には天界と地上界があるらしい。

・天界は神様が住んでいるけど、滅多に会うことは無いらしい。

・魔法とか魔物とかいるらしい。

奴隷(どれい)制度もあるらしい。

・レベルとかステータスとかもあるらしい。

・魔王もいるらしい。

・文明レベルは中世ヨーロッパ風に適当に設定しているらしい。

・基本的に美形だらけらしい。

・特に使命とかは無いから好きに生きていいらしい。

・マクド〇ルドは無いらしい


■転移特典について

・外見は十八歳まで若返るらしい

・現地の言葉とかも分かるらしい。

・アテナが(つかさど)る属性を加護として授かるらしい。

・ついでにインベントリ機能(収納無制限、時間経過無し)も貰えるらしい。


■天界について

・マクドナ〇ドがあるらしい。

・最近他のファストフード店も増えてきたらしい。

・つい先日スターバッ〇スがオープンしたらしい。

・名産品はワインと世界樹と唐揚げ弁当らしい。

・マク〇ナルドはマジ神らしい。



 よし。色々と意味が分からん。

 そこの自称女神、やりきった顔でジュース飲んでんじゃねぇよ。


「とりあえず、あんたの司る属性って何よ」

「はい。愛と勇気とウサギとマクドナ〇ドです」


 また意味の分からない単語が聞こえてきたんだけど。


「…………なんて?」

「愛と勇気とウサギとマク〇ナルドです」

「異世界にマクドナル〇無いんだよね?」

「無いですね」


 なんでそんなもん司ってんだよ。


「ちなみにケンタ〇キーを司る女神とは仲が良いですが、モス〇ーガーを司る女神とは仲が悪いです」

「その情報は必要無いかなー」


 もうちょいマシな属性は無いのか。

 火とか剣とかさー。


「という訳で貴女には愛と勇気とウサギとマ〇ドナルドの加護を授けます。そぉい!」


 商品を置く緑色のトレイの角で殴られた。

 良し。そのケンカ買ったわ。


「いやあああ! 違うんですこうする決まりなんです! だから拳を下ろしてください!」

「いいから歯ぁ食いしばれや」

「ごめんなさい! 謝りますから拳を引き絞らないで!」


 こいつ、マジで殴りたい。


「あ、て言うかほら、そろそろお時間です!」


 ん? なんか体がキラキラしだしたな。

 私もついに異世界デビューするようだ。

 二度目の人生がどんな展開になるか楽しみ――


「――いや待て、加護の説明は?」

「愛と勇気とウサギとマク〇ナルドに関するスキルが与えられます!」

「おい具体的に説明しろ」


 特に最後。


「すみません、時間が無いのでまた後で説明します!」

「ちっ……絶対だからな?」


 最後までこの調子か。頭痛くなるわ。


「あと最後に! 私の事はアテナとお呼びください!」

「了解。色々と頼んだからね?」

「任せてください! ちゃんと手順通りに……あっ!?」


 アテナの間抜けな悲鳴の後。

 体のキラキラが強くなって、私は思わず目を閉じた。

 やべぇ、嫌な予感しかしないわ。

 絶対何かやらかしたろあいつ。



 そして目を開けると。

 そこは一目で分かるくらいに異世界だった。

 空気とか街並みとかそんなちゃちなもんじゃない。


 目の前に私よりでけぇ犬がいる。

 しかもバッチリ目が合っている。

 て言うかこっちに飛びかかって来ている。


 第二の人生、終わるの早かったなー。


「って、ふざけんな! 食われてたまるか!」


 腐女子なめんなよ! オタ活とブラック企業で鍛えた体力見せてやらァ!


 持てる限りの全力で走る。

 もちろん、後ろでは無く前に。


「くたばれおらァ!」


 私なんか一口で食べられそうなアゴにサッカーボールキック。

 跳ね上げた右足は自分でも驚くほど早かった。


「ギャインッ!?」


 不意を打った一撃にデカい犬が悲鳴を上げる。

 怯んだ隙に背中に飛び乗った。

 私の実家には大型犬を飼っている。

 小さな頃からずっと一緒に居た愛犬だ。

 だからこそ、犬の(しつけ)かたは知っている。


「悪い子にはお仕置きだ」


 長い黒髪が風に(なび)く。

 森の中に映える夜色を気にも止めず、鋭いと言われる眼光を閃かせ。

 硬く握りしめた拳を天高く振り上げ、そのまま頭に叩き落とした。


「ギュッ!?」


 これまた凄い勢いで振り下ろされた拳が当たり、犬が強制的に地に伏した。

 後ろを見ると尻尾が内側に丸くなっている。

 よし、これで大丈夫だろう。


 そこまで考えて、自分の行動の異常さに気が付いた。


 おいおい。こんな化け物を相手に素手で立ち向かうとか正気か?

 普通は逃げるか腰抜かすだろ。

 しかも勝ってるし。

 ……これがアテナの加護って奴か?


 とりあえず背中から降りて犬の正面に立つと、明らかに怯えた態度でこちらを見つめてきた。


「ほら、帰りな。もう人間を襲わないでね」

「わおーん!」


 言葉が通じたのかは知らないけど、デカい犬は一鳴きした後に走り去って行った。


 なんとかなったか、と改めて辺りを見渡すと。

 そこには森が広がっていた。

 他に言いようがない、森のど真ん中だ。

 もう木しか見えない。


 おい。なんでスタート地点が森なんだよ。

 普通は街とかだろ。

 もしかして転移する時の「あっ!?」てこれか?


「……おいアテナ。説明しろ」

『なんで見てるのバレたんですか!?』

「なんとなく」

『なんとなく!?』


 視線を感じたというか、直感というか。


「何でもいいからさっさと説明しなさいよ」

『いやでも、説明回が二話も続くのはちょっと……』

「さっきの犬と同じことしてやろうか?」

『喜んで説明させて頂きます!』

 

 ぽんっと気の抜けた音がして、目の前にアテナが現れた。

 てめぇ、そんな簡単に出てこれるなら助けろよ。


「では改めて説明させて頂きます! チャンネルはそのままで!」


 言ってる意味は分からなかったけど、ドヤ顔がムカついたのでとりあえずデコピンしておいた。


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