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異世界テンプレってこんなんだっけ?


「えぇと。つまり私は死んだ訳ね?」

「そうです、はい」

「死ぬ必要は無かったのに、あんたのミスで?」

「おっしゃる通りです………」


 目の前には正座で涙目な美女。

 長い金髪に緑の目、明らかに『女神』って感じのドレス。

 て言うかさっき女神を自称してきたから、たぶん女神なのだろう。

 もしくはちょっとイッちゃってる人か。


 んで、私の方はと言うと。

 鏡が無いからはっきりしないけど、多分いつものスーツ姿。

 目付きの悪さ以外は至って平凡な二十八歳女子。

 ブラック企業勤めている隠れ腐女子(末期)だ。

 但し、目の下には化粧で隠せない程にひどいクマがある。

 ろくに寝てねーからなー。

 終電で帰って始発で仕事行くのが普通だったし。


「まー死因に関しては、アレよね?」

「はい、アレです……」


 項垂(うなだ)れる女神様。うん、ちったぁ反省しやがれ。

 あんな馬鹿な死因なんて、葬式に来た人が笑いを堪えるのに大変でしょうが。

 思い返すだけで頭痛くなるわ。まじで。



 学生が夏休みを楽しんでいるであろう七月のある夜。

 夜って言うか真夜中。人の姿もほとんどない駅で、私は数年前からやっているソシャゲのクエストを消化していた。

 イベントが始まったばかりで、今回は水着姿のキャラが貰えるらしい。

 ちなみに私のプレイスタイルは無(理の無い)課金(ぜい)だ。

 今どき珍しくクエストにオート機能が無いので、スマホをぽちぽちしながら電車を待っていると。

 不意に手元に影が差した。

 あれ? と思うと同時に。


「あぁッ!?」


 上から女の人の悲鳴。

 なんだと思って空を見上げると、そこには。


 マクド〇ルドのキャラクターであるドナ〇ドの人形が凄まじい勢いで迫っていた。


 思いもよらない事態に反応出来ないまま、狂気的なスマイルを浮かべた彼と脳天から衝突。


「ぐはぁっ!?」


 我ながら女らしさを捨て去った断末魔だった。

 倒れた私の目に入ってきたのは狂ったピエロの顔と、細くて綺麗な誰かの素足。

 その誰かさんが何か言ってる気がするけど、頭がぐわんぐわんしてて何も聞き取れない。


 そして私はド〇ルドと見つめ合ったまま意識を失った。



 で、今に至る。

 どう見ても大手ハンバーガーショップのイートインスペースにしか見えない場所で二人きり。

 自称女神様と向かい合って座っており、私達の目の前にはテリ〇キバーガーセットが二つ。

 そして彼女の隣には私を殺害したマスコットキャラクター(等身大)の姿。


「教祖様を輸送中に手を滑らせてしまいまして……どうお詫びしたら良いのか……」


 おい。そいつを教祖様と呼ぶんじゃない。


「とりあえず色々と聞きたいんだけど」

「それはもう何なりと!」

「まず、私を生き返らせる事はできんの?」

「無理です!」


 即答された。


「よし、歯ぁ食いしばれ」

「ひぃっ!? ぼ、暴力は良くないですよ!?」


 おいこら、そのイカれたピエロを盾にするな。

 手が届かないだろうが。


「その、出来ればそうしたいんですけど……一度死んでしまったら元には戻せないんです」

「まぁそんな気はしてたわ。出来るならもう生き返らせてるだろうし」


 それは良い。いや良くないけど、とりあえず良いとしてだ。

 もっと重要な事を聞く必要がある。

 こっちもかなり切実な話だし。


「ねぇ。私の部屋にあるパソコンなんだけど、データ消しといてくれない?」

「は? パソコンですか?」

「これ以上恥をさらしたくないのよ」


 何せあの中には日々の日課で集めていたR-18画像(BL以外も含む)が1テラバイト分も詰まっているのだ。

 あんなもの残してたら死ぬに死にきれない。


「あ、その、それにつきましては残念なお知らせがありまして」

「……おい。まさかとは思うけど」

「その、貴女のお葬式をする時にですね、職場の方への連絡先を探すために、お母様が」


 マジか。よりによって母さんかよ。


「ちなみにめちゃくちゃ喜んでました」


 どんな地獄絵図だ。

 つーか娘が死んでんのに何してんだあんた。

 いや、両親が私の事嫌ってたのは知ってたけどさ。


「……おーけい。済んだことは水に流そう。そんで、私はどうなんの?」

「えっとですね、いくつか選択肢がありまして」

「どんな選択肢?」

「このまま天国に行って頂くか、天界にあるマクドナ〇ドのマネージャーになるか、別の世界にで二度目の人生を送って頂くかです」


 二番目ェ!


「ちなみに三番目を選んだ場合は特別な加護を授けます」

「はぁ……いわゆる異世界転移って奴か。なら話は早いわ」

「そうですか。では準備は出来ていますので説明を――」

「天国行きで」

「なんで!?」


 なんでじゃねーわよ。


「だって異世界ですよ!? 憧れたりしませんか!?」

「しない。私は天国で推しを()でながらBL本読みまくる日々を送るんだ!」


 なんて素晴らしい日々だろうか。

 こんな生活が出来るならむしろ死んでよかったわ。


「え? そんなもの天国にはありませんよ?」

「……ほわい?」

「あれは地球だけの文化なので。将棋とチェスと遊〇王デュエルモ〇スターズならありますけど」


 天国にも遊戯〇あんのか。

 つーか逆になんでBLが無いんだよ。


「なんだその地獄……じゃあ異世界にも無いのか」

「いや、そっちには文化として根付いてますね」

「何してんだ、早く異世界に転移しろ」

「音速の手のひら返し!?」


 うるせぇ。BLの無い人生なんてやってられっか。


「えーと……では次のページで色々と説明させて頂きますね」

「は? ページ?」

「文字数の都合上、長くなりすぎると読みにくいと思うので。説明がめんどくさい方は読み飛ばしてください」


 いきなり何の話だよ。

 まるで私たちが小説の中に居るみたいじゃん。


「それでは、説明に移ります!」


 どうでもいいけど、そのドヤ顔は腹が立つからやめろ。


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