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第5話 話し合い、迷う

第5話です。空の家族が登場します。

 「……これ、親に相談するって返しちゃったけど、そもそも状況が説明できねーよ……」

帰り道、俺は一人呟く。さきほどはあの真剣さに押されてとりあえず前向きな返事をしたが、今は心からそれを後悔していた。もし仮に今の状態で相談したとしても、絶対に通らないだろう。部活をサボろうと思っているということを堂々と話す時点で常軌を逸しているし、しかもその目的がわからないときた。なかなかに大きいことを言い出して、その目的がわからない息子……、「俺が親だったら、陰で学校に連絡をいれるだろうなぁ」と思う。


 そんなことを考えていると、もう家の近くまで来ていた。

「茜さんほどの真剣さがあれば、親も話を聞いてくれるんだろうけどなぁ」

俺は事情がよくわかっていないことに全力を出せるほど活力に溢れてはいないし、自分の疑問を押し殺して演技を堂々とできるほど器用でもない。……茜さんには申し訳ないが、今日はとりあえず親に相談するのは止めとこうと心に決め、俺は家のドアを開けた。

「ただいまー」

「「「おかえりー」」」

家族の声が返ってくる。俺の家族は四人家族で、3つ離れた兄が居る。今日は両親はもう帰ってきているようだった。

「とりあえず部屋に荷物置いてくるわー」

そう言って、俺は部屋へと向かった。俺は部屋に荷物を置くと、少し部屋に居ることにした。さっきチラッと覗いた感じ、まだ夕食ができるまでは時間がかかりそうだったので、俺はベッドに横になり、今日のことを思い出していた。「なんで茜さんがあれほどまでに部活をサボリたがるのか」これは本当に謎だ。部活をサボることにそんなにこだわるのか、訳がわからない。


 しかし、ふと俺はあることに気がついた。「部活をサボるのことが目的なのか、それはあくまで手段なのか」これは非常に重要だ。俺は、無意識にそう確信した。部活をサボって、何か他のことに時間を使ったりしているのであれば、茜さんのこのサボリへの執着にも納得がいく。むしろ、あれだけの真剣さで、何か他の目的がないわけがない!

「茜さんは、何かを隠している!あーいや……隠してるってほど親しくないかもしれないけど、とにかく俺が知らない一面がある!」

俺の思考はフル回転していた。

「面白くなってきたじゃん!あのズバズバ人に言うような人が、どんな秘密を抱えているのか、そう考えるとゾクゾクしてくるな……!」

このことがかなり面白く、複雑になってきたのを感じ、俺はここまでのことをノートにまとめようと、適当な小さいノートを机から取り出した。


 「じゃあまずは……」

「空~、ごはんできたぞー」

父の俺を呼ぶ声。タイミングがいいのか悪いのか。

「しゃあないなぁ、とりあえずノート下に持ってくか。まだ何も書いてないから、見られても問題ないしな」


 俺が下に降りると、もうみんなは夕食を食べ始めていた。俺はノートを脇に置き、何を書こうか考えながら夕食を食べ始める。「まずは……行動の目的が誰を対象にしているのか、自分なのか家族なのか友達なのかでページを区切ると見やすいし、場合分けも簡単か?……そうだな、そこからどんどん広げよう」「事実を書く欄も必要……だな。結構うまくやるじゃん、俺」

「部活は何入るんだ?、空」

「あー、それね。入ろうか迷ってるんだけど、やっぱり入るべきだよなぁ」

「「「え?」」」

「あ、……はぁ……。」

またやった。最近考えが口に出ちゃうパターン多すぎでは?

「え、何、そもそも入るかで悩んでんの、お前」

兄からの鋭い声での一言だった。毎回の部活に集中して真剣に取り組む兄からは想像もつかないのだろう。実際、最初は俺も想像がつかなかった。

「いや、そんなことはない……だろうけどさぁ」

「自分のことなのになんで自信なさげなんだよ」

兄からの真っ当なつっこみ。もう、冗談では済まされない空気だった。

「何かあるなら、話して。自分の意見も確かめながら」

母に促され、俺は今日あったことの全てを話し始めた。


 「……というのが、今日あった全て」

「「「……」」」

家族みんなも、さっきまでの俺のように困惑しているようだった。そりゃそうだ。会ってまだ1ヶ月とたっていない人から「部活サボってよ」とお願いされた、と自分の家族が言っていて、しかも自分はそのお願いをした本人とは一度も会ったことがなく顔も知らない……。この状況では、頭がショートするだろう。……と、母がこの沈黙を破って俺に問う。

「空はどう思ってんのよ」

「……俺は、……」


 わからなかった。さっきまで楽しんでいたのは、このことを俯瞰して考えていたからであって、さっきは自分がサボることに関しては、全く考えていなかった。サボリはやっぱり抵抗もあるし、単純に部活に興味がある。あんなに兄が楽しそうにしていることをやってみたい、ずっとそう思っていた。しかし……。

「俺は、少しやり方を考えたうえでなら『アリ』かなと思ってる。あれだけ真剣に願いをぶつけられて、簡単に無視はできない」

これが俺の今の本音だった。彼女からの願いを雑に扱うという考えは、正直これを相談すると決めたときから毛頭なかった。


 「そうか……」

ここまでこの話題になってからずっと無言だった父が、口を開く。

「空が考えをとりあえずでもしっかりと自信をもって自分の考えを確立してくれたのは、嬉しく思うよ。ただな、俺は部活が与えてくれるものは、本当に大きいと考えてる。多分、お母さんやお兄ちゃんも一緒の思いだろうけどな」

「ああ、そうね」

「まあ、そうだな」

二人は父に同意した。

「二人もそう言っているし、今日のところは部活サボリは却下だ。ただ、何かあったらまた言ってくれ。これでとりあえずはいいか?」

父は俺に話を振った。

「まあ、しょうがないな。明日また話をしてみるよ」

正直、こうなるだろうとは思っていた。まあ仕方ない。明日、これは茜さんに報告だ。


 「じゃあ、真面目な疲れる話は止めにして、テレビ見るか!今日なにやってるっけ?」

「木曜日だし、荒らし魂とかやってるんじゃね」

「あれ見るか!芸能人のゲームサーバー荒らすあれ、最近始まったけど面白いよなー」

会議室のようだったダイニングは、また一瞬で賑やかな我が家に戻っていた。

今回、初めて、後書きを書こうと思って書いたんですが、面白くなかったのでやっぱり無しで。ということを後書きに書いておきます。

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