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第4話 新しい日々と約束

第4話です。そろそろ話が動き出します。

 昨日のバスでの出来事があってから、俺と茜さんは週2回程度、帰りのバスを待つ間や、帰りのバスの中で会話を交わすようになっていた。


 ちなみに言っておくと、学習室で大声を出してしまった次の日、俺はみんなからヤバいやつだと思われて避けられたりするのだろうかとビクビクしながら学校に行ったのだが、そこはやはり受験を勝ち抜いてきた優秀な同級生だけあって、海のような広い心で受け入れてくれていた。むしろ、それでいじってネタにしてくれるくらいだった。


 「あー、あの日乗ってきたのはそんな理由だったんだ」

と茜さん。同級生からは全然何も言われなかったので、今日は勇気を出してあの日のことを話してみたのだが……。やっぱりこの人はこんなことだろうと思っていたが、そんなになんでもないような感じで返されると、ネタにも昇華できない。正直、この人の人生の経験値はレベルが違う。「色々と巻き起こしてきたんだなぁ」と、会えば毎回思わせられるのだ。

「結構笑える話だと思ったんですけどねぇ……」

「私は人の100倍は、色々やってるからなぁ」

100倍はおかしいだろ、そうつっこみたかったが、案外否定もできないので黙っていた。


 「ところで、もう4月も終わっちゃうねぇ………」

茜さんにしては珍しく、しみじみとした口調だった。

「まあ、そうですね。4月特有の、世界が急激に明るくなっていく感覚も終わっちゃいますね。学校生活も本格的にスタートしそうだし……って、あ!」

自分で言っていて、俺はあることを気づいた。

「もう俺、このバスで帰れないですよねー。部活、俺はちゃんと行くんで。俺は」

「あ、そっか」

軽く煽って、少しでも部活にやる気を出してもらえたらと思ったが、全く意味はないようで、茜さんは他のことを考えているようだった。

「じゃあさ……あなたも部活サボらない?」

「は?」

素で若干キレ気味の声を出してしまった。「俺は部活をあんたと違って滅茶苦茶に楽しみに思っているんだが」心からイラついた。しかし、それを聞いた茜さんは、どこかやりきれないイライラを抱えたような、俺以上にイライラしているような表情で黙ってしまった。


 「あ、言葉遣い悪かったですね。すみません」

俺はとりあえずで謝った。言葉遣いは実際悪かったから、謝るのは当然としても、茜さんが突然こんな態度になったのに、俺は正直ムッとした。しかし、それ以上に不思議に思った。「茜さんも、中学生のなかには部活を楽しみにしている人が多く居るのも知ってるだろうし、実際、自分も部活を楽しんでた時期はあるでしょうよ……。そんな反感を買う可能性が高いことがわかりきってること言わなきゃいいのに……」お互いに黙ってしまう。しかし、幸運にもバスはすぐにいつも2人で降りているバス停についた。


 今日はものすごく雰囲気が悪いが、茜さんの逆ギレに近いこの状況で、俺はこれ以上謝って解決したくはなかった。「先輩といえど、間違っていると思うことを通しちゃいけない」そう思い、今日は無言で、別れの挨拶もない解散になることを俺が覚悟したその時、茜さんが口を開いた。

「じゃあ……今度は真面目にね」

茜さんはここで一呼吸置く。さっきまでのイライラも、この真剣な雰囲気に飲み込まれ、引いていた。



「あなたが部活に入らなくても満足できるようなシステムを提案するから、納得してくれたら部活に真面目に取り組まない。そして、私と一緒に帰る。これを約束して」


 

一気に怒りがこみ上げて来るが、それ以上に彼女の意図がわからなかった。なぜそこまで部活サボリに情熱を注ぐのか、なぜ一本遅いバスで俺に合わせるという選択肢を取らないのか、そしてなぜそこまで俺と一緒に帰りたがるのか……。謎は語り尽くせないほどあった。しかし、彼女は決して遊びやふざけなどではなく、真剣にこの話をしている。目を見なくても、口調からだけでも伝わってくるほどだった。

「わかり……ました……。ただ、ちょっと親と……相談してみます……」

俺は一旦こう言うしかなかった。


 「じゃあ、お願いね。」

要求を飲んでもらえそうだと思ったのか、茜さんはいつもの調子に戻っていた。

「また明日!」

「……また」

俺には、何が何なのかは全くわからないまま、解散になってしまった。彼女の謎の提案は、本当に訳がわからなかった。茜さんに聞き返そうかとも思ったが、茜さんの姿は、もうはるか遠くにあった。「……しょうがない。訳がわからないが、相談すると言ったんだ。親にとりあえず全てを話そう……」そう思い、俺は帰路についたのだった。

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