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第2話 出会いなのかこれ…?

第2話です。

 大講義室には、既に多くの生徒が集まっていた。今日の講話は一年生だけでなく、二年生も参加するということで、なかなかの人数だ。自分の席を見つけるのに苦労しながらも、なんとか自分の席を見つけ、俺は席についた。しばらくすると二年生の生徒会の人から講話開始の挨拶があり、講話が始まった。


 「~なので、これをこうすることで……」

「ふわぁ……」

講話の途中、強力すぎる眠気が俺を襲ってきた。このために学校に来てくれた大学の教授には非常に申し訳ないが、六時間目の眠気には勝てない、というか闘おうとも思えない。俺は堂々と眠りについた……。


 「ちょっと、何寝てんの?」

突然の呼びかけ。俺は教授からピンポイントで注意を受けたかと思い飛び起きる。しかし、冷静に考えたら教授にしては明らかに声が高すぎる。でも同級生でこんな風に話しかけるほど親しくしてくれる女子は居ない……。俺の頭は急激に回転を始めるが、答えは出ない。俺は声の主の正体を知るために振り向く。

「……ん?」

振り向いても尚、謎は解けない。むしろ深まった。何故ならそこに居たのは一度も見たことがない女性だったからだ。


 「起きたね。さっさと進めるよ」

目の前の女性、というか少女は、名乗りすらせずに淡々と話を進めようとする。炎のような……というには違う、激しいというよりは雄大さを感じるような、遠くから見た太陽のような、赤い髪の少女だった。当たり前だが、俺は一切会ったことがない。

「誰……?ですかね?」

「それはいいから、早くシャーペン持って描いて!何か言われるから、何もしてないと」

「いや、名前……」

「それはいいんだよ今は」

よくはないだろう。絶対に。そうツッコミたかったが俺は彼女に従う。寝ていた俺はツッコめる立場ではない。彼女に協力する立場だ。俺は素早く思考を切り替え、彼女に問う。

「何してるかを説明してください」

「いつから寝てたんだ君は……」

彼女の呆れは、初対面なだけあってなかなか心に刺さる。しかし、彼女も呆れている場合でないと思ったのだろう、今はさっきの教授の考えをもとにした物のイメージを絵で描く時間だと教えてくれ、やり方も教えてくれた。


 教授はかなりのスピードでどんどん描き足すように言うのでついていくのが大変だったが、俺たちはなんとか教授からの注意を回避し、六時間目を終えた。

「はー、大変だったー」

「最初はどうなることかと思ったけど、なんとかなってよかったよ。君の飲み込みが早かったのが不幸中の幸いって感じね」

授業終了後、俺たちは一息ついていたが、二年生から教室に戻るようにすぐに指示が出され、俺たちは解散した。

 

 なんとかなったことに安堵しながら教室に戻るとき、俺はあることを思い出した。

「結局、あの人は誰だったんだ??」

安堵が、一気にモヤモヤへと変化していった。





 「今日は、いつもより刺激があって面白かったな。いつもよりは、だけど」

俺は小声でつぶやく。帰りの会を終えて学校の外に出た俺は今、学校付近の図書館の学習室に居る。今は部活動の体験期間中で、一年生は軽い体験をして帰るだけなのでかなり早く帰ることができていた。そのため、辺りにはほとんど二、三年生の姿はなく、居るのは部活が休みなのであろう、同じ部活と思われる人たちのグループだけで、辺りは見たことがあるような、同級生ばかりだった。


 「にしても、本当に名前なんだったんだろうな……。まああんなに目立つ髪色だし、すぐにクラスの誰かがあの人の情報を手に入れて何か言ってくるだろうけど。でもなぁ……」

なんとなく、あの独特のオーラをもった彼女のことが気になる。理由は全くわからないが。その理由のわからなさは、少しずつ俺を思考の沼に落としていった。考えること、10分ほどだっただろうか、俺はついに……思考を放棄した。

「わっかんねー!」

「「「「!!…………」」」」

「あっ…………」

恐ろしいほどの静寂が辺りを包んだ。そうだ、ここは学習室だった。周りの中途半端に名前と顔だけわかるような同級生からの視線が刺さる。


 「すみませんでしたー!」

あの場に留まる勇気は俺にはなかった。俺は一目散に荷物を片付け、学習室をあとにした。





 「どうすんだ今日……」

学習室を出た俺は、行き場に困っていた。学校周辺には他に公共施設はないし、学校周辺から離れすぎると、バス停まで戻るのが大変になる。困り果てた俺は、バスの時刻表一覧に救いを求めた。すると、

「あれ、これ乗れるんじゃね!?」

見ると、いつも乗る7時30分のもの……部活が始まったらこれに乗ることになるため、それに慣れるために乗っているものの前に、6時30分のものがあることに気づいた。時計に目をやると、時刻は6時25分過ぎ。

「走れば間に合う!」

俺は全力でバス停に急いだ。あとちょっとで着く……というところでバスが来てしまったのが見えた。

「ヤバい……」

俺は心の中で死を覚悟した。さっきの出来事があって、その現場に一緒に居た十数人と帰るなんて……地獄だ。しかし、一向にバスは動かない。

「え……?」

俺が困惑しながらバスに乗ると、バスの運転手さんは

「乗りそうだったから、待ってたよ」

と一言。

「ありがとうございます!」

全力のお礼で返すと、バスは動き出した。しかし、一息ついて座ろうとした俺の目に、驚きの人物が映る。この赤い髪は……六時間目に会った彼女が、バスの中で座っていた。

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