第1話 物語は始まる
第1話です。自信作なので最終話まで読んでいただけると幸いです!
俺、月見空は今朝も今朝とてバスに揺られていた。厳しい……とはいえない中学受験を勝ち上がって県内唯一の中高一貫校になんとか入学した俺は、小学校とは大きく変わった生活に馴染めずにいた。俺の友達は誰も受験をしなかったから、この学校には誰一人友達は居ない。入学式からはまだ二週間たたずだから、特に友達と呼べるような人も居ない。別にハブられてるわけではないし、普通に話をする適当な人は居る。けれど、やはり信頼が置ける人が居ないというのは精神的にかなり来るものがあり、俺は疲れの色が隠せずにいた。
「はぁ……。なんか辛ぇ……」
俺のそんな声はバスの走行音にかき消され、何事もなくバスは学校付近のバス停に到着した。
「よし、掃除終わり!六時間目受けてさっさと帰ろー」
なんとか掃除までをやり過ごし、俺は六時間目を受けて帰るのみとなっていた。六時間目の予定を確認すると、大講義室での大学教授の講話だった。県内上位の中高一貫校なだけあって意識が高いなー、と思いつつ、俺は大講義室へ向かう。
そこで、俺ととある女性が出会うことによって、いくつもの運命が回り出そうとしていることを、俺は知る由もなかった……。