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お小言はちょっと聞きたくないですね

 子爵家と教会とは、実は馬車で移動するほど遠くない。歩いても30分くらいかな。貴族と言っても末席にかろうじているだけの家門だから、私は普段からよく一人で出歩いている。


 それをヒラルドお兄様やリーンにお小言言われたりするんだけど。だって一人で街に出た方が食べ歩きとか楽しいし? やっぱりやめられませんな~怒られても。


 今日の洗礼も、皆が一緒に行ってくれると言ってたのを、私は振り切って一人で出て来たんだよね。だって、歩いても行ける場所なのに、馬車で移動なんて大仰じゃん……。それに大事になるなんて思ってなかったし。


 なんてことを馬車に揺られながら考えてたら、リーンと目が合った。


「だから、お送りすると申し上げたのです、お嬢様」


 さっきのアシストをくれたリーンはどこに行ったんだろう、急にお小言モードである。えーん。


「屋敷にお嬢様がいないと探していたら、教会からお嬢様が倒れたと連絡が来たではありませんか。私、卒倒するところでした」


 それは怒りでかなあ……。


「全くだ。何度言い聞かせれば判るんだい? 一人で歩いていて誘拐にでも遭ったらどうするんだ。クレアはこんなに可愛いんだから、今まで攫われずに無事にこれたのなんて奇跡なんだからね」


 熱弁をふるうヒラルドお兄様だけど、リーンはそれをシラっとしてみている。うんうん、リーンそのスンとしちゃう気持ち判るよ、私割と普通だもんね。


 私の見た目は、亜麻色の髪に茶色の瞳というありふれた配色で、特別性はこれと言ってない。目は確かに大き目で二重だし、整った顔立ちと言えば、まあそうなんだけどぶっちゃけ、超絶美少女! というにはちょーっと厳しいかなあ……。むしろイケオジのお父様と美女のお母様を掛け合わせてどうしてこうなったと言わざるを得ない。もうちょっと遺伝子仕事してくれてよかったのではないだろうかと、前世の記憶を取り戻した今となっては思っちゃうね。


 だからお兄様の言う言葉は完全なる身内の欲目というか、シスコン兄バカの妄言と言ってもいいと思う。


 それを言うなら、お兄様の見た目は完璧なんだよね。髪の色こそ亜麻色で平凡だけど、瞳はエメラルドを思わせるお母様譲りの翠で、鼻筋は通っていて、キリっと引き締まった目元なんか、妹ながら惚れ惚れしちゃうね。もちろん恋愛的な意味じゃなくて、鑑賞的な意味だけど。


「聞いているのかい?」


 お兄様がお小言をずっと言ってたっぽいですが、聞いていませんでしたね……。


「もちろんですわ、ヒラルドお兄様」


 怖いお顔で睨んでいるお兄様に、にっこりと微笑んで返事しておく。


「では、あの男は何なんだい?」


「あの男?」


「アウレウス・ローズとやらだよ。神官見習いと言っていたけれど、何であの男はクレアにあんなに馴れ馴れしいんだい? お兄様に判るように説明してくれるかな?」


「あー……」


 これはめちゃくちゃ怒ってますね、お兄様。これは何を言ってもお小言言われる奴じゃないでしょうか、きっとそうです。許してください。


「その前に、私の魔力の話しないといけないから、家で話そう?」


 私の言葉に、怪訝そうな顔をしたお兄様は、奇跡にも一応黙ってくれた。

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