両片思いって周りの人間はやきもきするよね
その日の放課後、実技の補習を受けるために、また運動場へと向かった。私がアビゲイルを連れているのを見るや、グランツは目を逸らしたので、今日は絡んでこないつもりらしい。
先生に今日はアウレウスに手伝ってもらうことを伝え、補習は魔力放出の安定化を練習して、終わった。
「グランツさんは、あと一回補習を受けてくださいね。クレアさんは、放出が安定したので、後は通常の授業に戻りましょう。お疲れさまでした」
そう告げて先生は運動場から去って行った。残ったのは、私とアウレウス、アビゲイルにグランツだ。
「じゃあ、俺帰るよ」
こちらに目を合わせようともせずに、グランツは立ち去ろうとする。
「待って!」
大きな声で呼び止めたのは、アビゲイルだ。
「お、おお弁当……その、ば、バスケット……を、返して……」
振り向いたグランツに怖気づいたのか、アビゲイルは俯きながらやっとそう言う。
「ああ……。教室に置いたままだ、悪い」
「わ、判ったわ。ああの、グランツ」
指をもじもじと擦り合わせながら、アビゲイルは次の言葉を探しているようだが、黙り込んでしまった。グランツはアビゲイルの次の言葉を待っているけれど、グランツも何かを言おうとしてまた口を閉じる。
じ、じれったい~! ここで二人は両想いなんだよ! って叫べたら物凄く楽なんだけど、それじゃぶち壊しだし、二人とも納得できない気がする。両想いって、見てる周りの人はやきもきするよね。
「あ、あのね……いらないって言われたけど、明日もお弁当を食べて、ほ、欲しい……」
消え入るような声でアビゲイルは言う。他の男に作ってた弁当が気に入らないなら、その誤解はすでに解けてるはずなんだし、グランツも素直に受け取るようになるんだよね?
「お前さ、髪切ったの似合ってるよ」
「……っ!?」
弁当のことには触れずに、グランツは話を変えた。
「ずっとボサボサだったのに、髪切って、前よりずっと可愛くなった。いや、綺麗かな」
「あ、ありがとう……」
前髪を触りながらアビゲイルがぽそりと言う。私からは見えないけれど、きっとアビゲイルの顔は赤くなってるんだろう。
「そのどもりさえ治れば、婚約者なんかすぐ見つかるんじゃないか?」
「えっ」
つい驚きの声を上げてしまい、私は口を押さえる。グランツがこちらを見たが、溜め息を吐いてアビゲイルに視線を戻した。アビゲイルは言われた言葉を理解できないのか、絶句している。
「聖女様に聞いたけど、弁当は他の男のためじゃなくて、聖女様の奴だったらしいじゃん? 他の男の弁当かと思って、腹が立ったけどさ、俺が怒るようなことじゃなかったよな。悪い」
グランツは静かに独白する。
「なんで、そんな……」
「アビゲイルは優しいから俺に弁当作ってくれてたんだろうけど、もう嫌いな俺に気を使わなくていい。他の奴に誤解されたら婚約者も作れないだろうしな」
「そんな……」
これはこじれの気配を察知したけど、口出ししていいところなの!?




