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転生したら乙女ゲームのヒロインでしたが逆ハーレムはお断りしたいので闇落ち悪役令嬢のフラグを叩き折ることにします!  作者: かべうち右近
【グランツには目を覚まして欲しい】

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やっぱり手順踏まなきゃだめですよね

 ヒラルドお兄様の猛攻撃に耐える夕食が終わって、私はベッドに沈み込みながら考える。


 家経由の縁談は、お父様とお母様が食い止めてくれるということで一安心……だけど、逆ハーレムフラグ折りはまだ続けないとだめなんだよね。アビゲイルの闇落ち弁当を阻止して、アビゲイルの恋を応援すればグランツの恋愛フラグも自動的に折れると思ってたのに……。何の強制力なのか知らないけど、結局グランツが言いよってくる流れになっちゃってるし。


 やっぱり、ゲームのシナリオの手順を踏んでフラグ折りしなきゃだめですよね、はい、判りました……面倒くさいなあ。


 実はお茶会では、やろうと思えば攻略対象3人ともに会えたんだよね。でも、バシレイオス以外のメンバーは、会うと絶対に好感度をあげてしまって、逆ハーレムルートから逃げられなくなっちゃう。だからあえて会わないように最初から最後まで席を立たなかった。


 お茶会でのイベントは、バシレイオス以外は強制イベントじゃないから、避けられたんだけど……。


 シナリオ通りと言えば、順番的にはルーナ先生とのイベントにいくつか遭遇していない気がする。そんなにやりこんだわけじゃないから日付とかは覚えてないけど、グランツが『一途な愛を教えてよ』って言い出す前には、ルーナ先生のイベントがあったような気がするんだけど……もしかして、アビゲイルの見た目の変化で、シナリオの順番が変わってしまったのかな。


 今までの例から考えると、シナリオをある程度無視しても、イベント内容に準ずる事件が起きているから、ルーナ先生のイベントもその内起こるのかな? ちょっと怖いけど、こっちも対策考えておかないといけないな。ルーナ先生ルートの悪役令嬢って誰だったっけ。名前思い出せないな……彼女の闇落ちも防がないと。


 ……強制力かあ。バシレイオスはゲームに従って好感度下げたから、もうイベントは起こらないはず。でも、攻略対象と恋仲にならなくても、ゲームの中では悪役令嬢は闇落ちするもんな……。その強制力が働いて、アビゲイルやテレンシアが闇落ちしたらどうしよう。


 待って。ゲームの中で、攻略対象と恋仲にならなかった場合、どんな風に悪役令嬢は闇落ちしてたんだっけ? どんなエンディングルートも必ず悪役令嬢を3人倒してストーリーが進んでたけど、同じシーンは結構飛ばして読んでたから、思い出せない。闇落ち弁当とかはグランツのクズっぷりが印象的で覚えてるのに……。


 どうしよう。恋愛フラグの方はシナリオに沿って好感度あげないようにしていけばいいけど、テレンシアたちを死なせないようにするには、会話とかだけじゃだめなんじゃないの?


 何か、方法を探さないと。


 大体にして、聖女は存在するだけでモンスターの発生を押さえるって設定なのに、一番近くに居る学園の生徒が闇落ちしてモンスター化するっておかしくない? 設定として破綻してるよね。でも、起こってしまうんなら、行き当たりばったりじゃなくて、もっと考えていかないとだめ。


 ……一人で対策を考えるのには限界がある気がする。基本的に私は頭脳派じゃないんだよ。繰り返しやって攻略法に慣れるとか、レベルカンストさせて物理で殴る的なゲームが得意なのに。一回しかない人生でアビゲイルたちを間違いなく闇落ち回避させるのなんてできるのかな。


 死んでほしくない。モンスターになったからって、殺したくない。


 彼女たちに出会う前は、「逆ハーレムなんてクソだし、悪役令嬢の闇落ちも可哀想だし」くらいの気持ちだったけど、友達になってしまったら、テレンシアたちが死ぬなんてもう考えられない。


 奇人扱いされそうで怖かったから相談できなかったけど、私より賢そうな人に相談してみよう。


 そんな風に結論付ける頃には、眠りの闇に落ちていた。


◆◆◆


 翌日は、いつも通りの学園生活……という訳にはいかなかった。休憩時間になって、私の教室にグランツが顔を出したのだ。


「聖女様、会いに来たよ」


「私、あなたと仲良くするつもりありませんから」


 にこにこと愛想のいい笑顔で手を振るグランツに、私は溜め息を吐きそうになりながら言う。グランツを振り切ってどこかに逃げ出したいけど、あいにく次の授業もこの教室で座学だ。


「つれないなあ。そういえば、俺の名前言ってなかったよね? 俺、グランツ・ゲムマだよ。聖女様」


「そうですか。ゲムマさん、授業が始まるのでは? 教室に戻られた方がよろしいかと思います」


 私はグランツに顔を向けずに、次の授業の教科書を鞄から取り出す。


「何で仲良くしてくれないの? 聖女様って慈愛の化身じゃないの?」


 あんたがアビゲイルの好きな人だからよ! と言ってやりたい気持ちはあるけど、それはアビゲイルを傷つけてしまう。告白は自分でするものだし。


「……何を勘違いしてらっしゃるか判りませんが、私は聖属性魔法に目覚めたというだけの子爵家の娘ですよ。あなたとは昨日会ったばかりですのに、馴れ馴れしくされて迷惑です」


「それ、その敬語まずやめない? 会ったばっかりなのはしょうがないけど、これから仲良くなるにはタメ口にしようよ。ね?」


 かなり冷たく言ったつもりだったのに、グランツには一切響いていないようで、ヘラっとした笑顔を浮かべる。……アビゲイルってなんでこんな人が好きなんだろう。


「ゲムマさん、私が他の女の子と仲良くしてるような人とお付き合いしない、っていう噂聞いたんですよね?」


「だからその聖女様が思う『一途な愛』を教えて欲しいから、会いに来てるんだよ?」


 お前みたいな奴と付き合いたくないんだっていう意思表示はするっと無視された。


「私があなたにお教えできることはありませんから。どうぞお引き取りください」


 私がそう告げた時、予鈴が鳴った。


「また来るよ」


 にこっと笑ってグランツは言って、やっと教室から出て行った。


「……なかなかしつこそうですね、彼は」


「そうだね……」


 隣で見守っていたアウレウスの感想に、私は頭を抱える。ゲーム通りに、塩対応を続けていればそのうち恋愛フラグは折れる筈だけど……正直あのグイグイ来るのを断り続けるの面倒くさいな。アビゲイルの好きな人をあしらうのも何か良心が咎めるし。


 きっと次会いに来た時に、例のイベントフラグが立つ筈だから、慎重にフラグを折らないとな。

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