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神官って結婚しちゃいけないんだ?

「……何でそんなに補佐になりたかったの?」


「その方が今後、色々と有利だからですね」


 全く躊躇することなくアウレウスは答える。


「そういう本音って普通は隠すものじゃない?」


「隠すよりも素直に伝えて置いた方が貴女は信用してくださるのでは? 私としては全ての隠し事をなくすのは美徳とは思いませんが、貴女は少なくとも上っ面で語るのはお嫌いなのでしょう? 一途な方がお好みとのことですし」

 私がその話をしたのは今日の話で、アウレウスがそういう下心をぶっちゃけ始めたのは、会った初日だったと思うんだけど……この人、矛盾してるの判ってて言ってそうだなあ……。


「だから貴女の側に居続けたいのであれば、大きな隠し事はなくした方が良いと思っていますよ。第一、隠すべきことだとも思いませんし」


 いけしゃあしゃあと言うね。アウレウスって、周りに他の人が居る時には、静かに微笑んで私の横にいることが多いけど、私とふたりきりの時はめちゃくちゃ喋る感じするなあ。私が困ってる時は口出ししてくれるんだけど。学園に居る時の立ち居振る舞いはサポートキャラって感じだよなあ。距離は近いし、二人の時はよく分かんないけど。


「……あのさあ、アウレウスって私のこと好きでもなさそうなのに、何で本夫になりたいとか言ってるの? 出世に有利だからって好きでもない人と……」


「私が貴女に興味があると言ったのはお忘れですか?」


 不意に冷たい声に遮られる。顔は笑っているのに目が笑ってなくてドキリとしたけど、私は溜め息を吐いて気を逸らす。


「それって別に『好き』って意味じゃなくない?」


「おや、バレていましたか」


 ぱっと手を挙げて、アウレウスは笑った。今度は目も笑っている。


「少なくとも、ずっとお側で見ていたいと思う程度には、今興味がありますよ」


「……面白いって意味?」


 私がそう尋ねると、アウレウスはただ無言で微笑んだ。面白いって意味なんだな……。恋愛フラグが立ったら立ったで、それはちょっと面倒臭そうな気がするから、面白さで興味を引いてるだけならそれは安全だろうしいいんだけどさ。


 ……あれ、でも待って。アウレウスはサポートキャラだから、攻略対象ではない筈だけど、もしも隠しルートだったりしたらどうしよう。もし隠し攻略対象何だとしたら、アウレウスのルートにも悪役令嬢いるのかな!?


「ねえ、アウレウスって婚約者とかいるの?」


「いいえ、もちろんおりませんよ。クレア様にアプローチしているのに、そんな方がいるわけないでしょう?」


「仲のいい女の子の幼馴染とか、恋人とかは?」


 婚約者が居なくても、幼馴染が闇落ちするパターンもあるもんね。ちゃんと確認しておかないと。現状、フラグ折りにアウレウスを利用させてもらうことは多いだろうから、もし万が一そういう人がいるなら、その女の子のフラグ折りも徹底しないといけないことになる。


「そんな方はおりません。その質問は、私に興味を持ってくれたと解釈していいんでしょうか?」


「ううん、そうじゃなくて、不幸になる女の子がいたらやだなって」


「私との結婚を検討して頂けてるようで嬉しい限りです」


 私の否定にも関わらず、アウレウスはそう言う。


「いやそうじゃなくて」


「ご安心ください、私は神に身を捧げた神官なので通常は結婚できません」


「神官って結婚しちゃいけないんだ? へえ~」


 婚約者も幼馴染もいないのか、じゃあアウレウスルートがあったとしても、泣いちゃう女の子はいないのかな。……いやこの整った顔だから悲しむ女の子の一人や二人くらいいそうだけど。あれ、でも神官が結婚できないなら……


「ですが、唯一の例外として、神官は聖女とのみ婚姻を許されております」


 私が疑問を口にする前に、アウレウスが説明する。


「あ、そうなんだ」


「はい、聖女とのみ。光属性をお持ちの女性とのみ、神官は結婚できるのです」


 うん? 何故そこで正面から、私の隣に移動してくる? 馬車の中で動くの危ないのに。


「判りませんか? 私は貴女とだけけっこ」


「判った! 判ったよ! アウレウス、教えてくれてありがとう!」


 ヒィ、と悲鳴を上げそうになるのを何とか堪えながら、私は横にずれて距離を取る。なになになになに、今の何!?


「ふふ、お可愛らしい」


「面白いの間違いじゃ!?」


「……否定はできませんね」


 ふい、と顔を反らしてアウレウスは言う。くそ~一瞬でもドキっとしたのが悔しい、いやドキっとしたって何、してないしてない。


「腹黒め」


「覚えておいてくださいね。私は、貴女とだけ結婚できることを」


 アウレウスはそう言いながら手を握ってきた。わざわざ遮ったのに言い直すとか、本当に図太い男だな!?


「判ったから手を離してよ」


「それはできませんね」


 私が力いっぱい手を引こうとしても、アウレウスの手が離れない。


 そうして私の家に馬車が付くまで、私はアウレウスの謎の攻めを受けていたのだった。お茶会イベントは成功したけど、こんなのがついてくるとは思わなかった!

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