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アウレウスが何か言い出したんですが

 グランツとの出会いイベントは、あれでクリアしたことになったらしく、昼休憩の後にグランツが絡むイベントが発生することはなかった。良かったー。


 そうして、編入初日の怒涛の一日が終わった。


 今は、迎えの馬車にアウレウスと一緒に乗って、帰る所だ。ちなみに、この馬車はバートン家のものじゃなくて、教会から出されている。朝は教会からアウレウスが馬車で迎えに来てくれて、帰りは家まで送ってくれるという感じなんだけど、うちの馬車で私一人で通学したらだめなのかな。


 でもアウレウスが一緒に登下校してくれるおかげで、攻略対象キャラと触れ合う機会減るもんね。早く家を出る必要があるのは申し訳ないけど、アウレウスにはお世話になろう。


「お疲れのようですが、大丈夫ですか?」


 考え事をしていたら、アウレウスが話しかけてきた。


「う、うーん。まあ大丈夫かな」


「ご無理はなさらないでくださいね」


「ありがとう」


 気遣う調子のアウレウスに、お礼を言う。


「学園の初日はいかがでしたか?」


「アクの強い人もいたけど、テレンシア様とお友達になれたのは大きいな~」


「お友達……」


 アウレウスが考えるように呟く。もしかして授業内容のことを聞かれてたのかな。


「フォリーン嬢には敬語を外すようおっしゃってましたが、私も気安くお話しした方がよろしいでしょうか?」


「うん? どっちでもいいよ」


「どちらでも、良い、ですか。……私とは仲良くなる必要はない、と」


 アウレウスがにっこりと笑って言った、後半が聞き取れなかった。


「何で?」


「なぜでしょうか」


 ますます笑顔になるアウレウスに、不穏なものを感じる。どことなく怒ってるように見えるのは何でなの。


「え、っと、アウレウスの好きなように話したらいいよ」


「かしこまりました」


 結局アウレウスは敬語を崩さずに話すことに決めたらしい。


「それって重要だった? アウレウスは補佐として一緒に居てくれてるんでしょ?」


 本気で判らなくて尋ねると、アウレウスは一瞬きょとんとしてから、笑った。


「もしかして、貴女は本気で補佐だからという理由だけで貴女に尽くそうとしているのだと思っていますか?」


「えっ違うの? だって愛妾やるのやめたんでしょ?」


 私の言葉にまたアウレウスは笑った。


「判りました、貴女には思わせぶりな言葉では伝わらないようだ」


 しばらく愉快そうに笑って、アウレウスは呼吸を整えた。まだ知り合って一週間くらいだけど、声を上げて笑ってるのなんて初めて見たからびっくりする。ゲームでだって、スチルなんかないから張り付いた笑顔のイメージしかないのに。


「愛妾ではなく、本夫を目指すことにしたんですよ」


「えっ?」


 本夫と言えば、正式な奥さんが正妻というのに対して、正式な旦那さんのことを指して言う言葉……だったと思うんだけど、何で?


「貴女の寵愛が得られれば、聖女の後ろ盾が得られることになります。教会内の権力を握る上で、やりやすいだろうと思ったんですが、あいにく私は特定の女性と家庭を築くつもりはありませんでしたから、愛妾になろうと思っていたんです」


 穏やかに話してるけど、それって普通私に言わないものじゃないの? 私を踏み台にして権力握りたいなんて。

「……貴女は不思議な方ですね。大概の女性は少し顔を近づけて、親し気に接してやれば警戒を解いて心酔してくれるのですが」


 本当にいきなり何言いだしたんだろう、この人。そりゃこんな黙ってりゃ雪の化身みたいな美貌の人が、顔近づけてニコニコしてたら誰だってときめいちゃうんでしょうけど。


「あなたはそうではないらしい」


「返答に困るんだけど……」


 私だって女だから、整ったアウレウスの顔にときめかない訳じゃないんだけど、今はそれどころじゃないもんなあ。


「クレア様は、私を頼っている風には見えますが、それが色恋のためのようには見えない」


「え、と……補佐として、頼りには、するよ?」


 私がそう言うと、アウレウスはまた微笑む。


「今後のメリット以外の点でも、貴女に興味が沸きました。だから、本夫を目指そうと思いまして」


 どこにそんな興味引く要素あった? まさかあんた、『俺に興味を示さないとはおもしれー女』タイプなの?


 というか、この人サポートキャラだよね? ゲームの中にアウレウスルートなんてなかったのに、どうしてこんな口説かれてるの、私。いや、権力握るために本夫目指してるって言ってる? も~よくわかんないなあ!


「私を頼ってくださってるようではあるので、今はそれで良しとしましょう」


「今は、って……ずっとそれで良しとしてよ!」


「そのお願いは了承いたしかねます」


 飽くまで笑った顔のまま、アウレウスは答えた。何でこうなったかな!

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