赤か黒か
如何屋サイとさん主催の第2回掌編祭に応募した作品です。
「ゆ、れ?」という作品が、物理的なゆれをテーマにしたので、こちらは心のゆれを描いてみました。
なぜだ! なぜこんなことになった!
俺の目の前には、洗濯機くらいの大きさの「時限爆弾」。手にはスマホ。スマホのスピーカーからは、ついさっきまで警察の爆弾処理班長の声が聞こえていた。
「いますぐに逃げろ。素人に爆弾処理は無理だ」
そう、そうに決まってる。でも、俺は
「今から逃げても爆発に巻き込まれるかもしれませんよね。俺、やります。爆弾止めてみせます!」
と答えた。見栄だ。爆発を止められれば、人気者になれる。平凡で何のとりえもない、ありふれた日常から脱出できるかも、という期待。
漫画のようにわかりやすく、デジタルタイマーにつながった赤いコードと黒いコード。どちらかを切断すれば、カウントダウンが止まるのだろう。デジタル表示は00:03:05。あと3分と少し。
しかし……。
どっちだ! 赤か、黒か。この際、目をつむって切っちゃうか。いや、後悔はしたくない。元カノは赤が好きだった。赤か? でもあの女、二股かけたあげく俺をフッたんだった。ももクロだと夏菜子ちゃんか。俺、あーりん推しだしな。
黒といえば、ブラックジャック、大好きだ。黒木メイサも好き。黒か? いや、黒木華は好きじゃない。そもそも好きな色を切って良いのか?
ああ、見栄なんてはるんじゃなかった。俺死ぬのか。いや、何もせずに死ぬよりは2分の1の確率に賭けてどっちかを切ろう! ……思考がループしてるぞ。
そうだ、この前読んだ「若者の黒魔法離れが深刻ですが…」が面白かった。AV女優ではAIKAさん好きだし(黒ギャルである)。黒だ! 黒を切るぞ。
あ、汗が目に入って、手元がよく見えない。
良いのか、俺。黒でいいのか? あ、あと12秒…。
その頃、警視庁の爆発物処理用重機を積んだ特殊車両の助手席に座った班長の心も揺れていた。
「素人に任せたのは失敗だった。いや、液体爆弾と思われるブツの大きさからして、逃げても間に合わない可能性が高かった。やらせるしか選択肢はない。でももし死亡者が出たら……」




