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虐げられた少女は今日も唄う  作者: 小望月 白
5/9

成長


「すまない、遅くなった」


そうメヴィへと話す男性。真っ直ぐと伸びた柔らかな色合のプラチナブロンドの髪。それらを緩く後ろでリボンで一纏めにしており、サファイアブルーの蒼青とした瞳は思わず見入ってしまう程の奥行きを感じる。すらりと通った鼻梁も、白磁のような滑らかな肌も、少し薄めの形が良い唇も。その全てが青年の美しさを神々しいものにまで引き上げていた。


「それで、その女性は………」


青年が尋ねるとメヴィは少し身動ぎした後そろりとアイリット達の方を伺い見る。きっと、ティナがまだ眠っているからだろう。


「……………」


黙り込んだままのアイリットを見て流石に無理だと思ったのだろうか、メヴィは申し訳無さそうに国王に対し女性は現在お休みになられていますと説明し出した。


「ん……」


しかしそこでティナが目を覚まし、ゆっくりと目を開く。


「おはよー。やっぱり屋根があるっていいね………」

「!」


ティナが声を上げた瞬間国王が息を飲んだ。そしてゆっくりとメヴィの隣を通り小屋へと入る


「ちょっと」


しかしアイリットの制止の声も聞こえていないのか、ふらふらとした足取りで国王はティナへと近づく。寝起き早々知らない美形に近付いてこられたティナは驚き思わず手の届く範囲にある投げられそうな物を探した。


「ああ………ティナ、本物のティナだ………」

「ん?誰」


名前を呼ばれた事で怪訝な表情をしたティナは鞄からとりあえず生のまだ炒っていない木の実を取り出し、いつでも投げられるように握りしめた。そしてそんなティナへと綻ぶような笑顔を見せた国王は答える。


「君の天使のハイジェイドだよ」

「………ハイジェイドは死にました。というより出会った時にはもう死んでいました」

「………ねぇティナ、本当に分からない?あの森で毎日沢山話をして、歌を歌ってくれただろう?」


その言葉を受けてティナは眉を顰め、目を細めて目の前の青年をじーーーっと見つめる。綺麗なプラチナブロンド、サファイアの瞳。そして何よりこの整ったパーツに加え『ハイジェイド』という名前。


「……………」


ティナの18年の人生で、こんなにも整った顔を持つハイジェイドと名乗る者など1人しか居ない。しかし彼は子供だったし、そもそも幻姿特有のモヤが出ていた。多くは無いと言っても出ていたのだ。生きている人間も悪感情が募ればモヤを纏う事はあるがやや違うのだ。


「思い出したかな?まあ本当は天使じゃなくて妖精だったんだけど」


ニコニコと話す目の前の青年の言葉に、ティナは考えるのが面倒くさくなった。


「おやすみ」


なので再び寝る事にした。






✳︎✳︎✳︎


結局あの後ティナとの再会と、ティナに思い出して貰ったことが嬉しすぎたハイジェイドによって再び叩き起こされた。それはもう、アイリットが本気でドン引く程構い倒して。


「……で?」


胡乱げな目を向けたティナを気に止める事無くニコニコと機嫌よく微笑むハイジェイドを見つめる。先程は久しぶりの再会に驚いたのと、子供姿のハイジェイドから突然成長したハイジェイドを見た驚きでそれどころでは無かったがハイジェイドは何だか疲れた顔をしている気がした。いやまあ、疲れた顔でも凄まじい美貌なのだが。


ーーそういえば国王様って呼ばれてたな


じゃああれか。権力争いしてたり、その残党処理をしたり、王妃候補を貴族から勧められてるのもハイジェイドって事か。あれ、ちょっと待て。確かハイジェイドは人間の女を探してるんじゃなかったか。


…………おい。


ティナは嫌な予感がした。そしてこの予感が何となく当たる様な気も。


「ハイジェイド………私の事探してたりしないよね」


すると彼はその美貌を眩しい程煌めかせながら頷く


「そう。メヴィから聞いたのかな?実はあの時僕は仮死状態でね。色々と混乱してて記憶が曖昧だったけど、どうやら弟とその周りに殺されかけてずっと生死の合間を彷徨ってたらしい」

「え゛」

「だけどすぐに思い出したんだよ。でも頑張っても元の身体には帰れなさそうだったからそれならいっそ楽しむかと思ってあの森での生活を受け入れたんだ。流石に妖精だっていうのは伝えられなかったんだけど」


なんとモヤを出していたのは幻姿だったからでは無く、仮死状態だったかららしい。そんな事があるのかと目を瞬かせていると人間では生きてはいられないような状態だったからね、妖精だからこそあの森に辿り着けたんだろうと言っていた。そうなのか。なら相当に酷い状態だったのだろう。


「元の体に戻れたのはティナのお陰なんだよ」


首を傾げるティナへとハイジェイドが行った説明によるとティナの対話や歌による浄化でハイジェイドの魂(森に来ていたあの姿)を通して少しずつ彼の身体は修復され、ティナが王城へと連れ去られたあの日突然元の身体へと戻る事が出来た。本当はすぐにでもティナを助け出しに飛び出そうとしたのだが周りから全力で止められ、王位を自分の物にしようと画策している弟の動きも活発になり身動きが取れなくなってしまっていた。それならばせめて、と森で友人になったメヴィを始めとする小さな友人達にティナ探しを手伝って貰っていた、と。なんだか色々と思う事はあるが


「そう。色々大変だったんだね。お疲れ様」


それから助けようとしてくれてありがとう、と。隣で床に座るハイジェイド(この部屋にはテーブルも椅子も無いから)の頭をよしよしと撫でた。ハイジェイドは一瞬驚いた顔をした後すぐに「やっとティナに触れられるね」と泣きそうな顔で笑った。その後はティナのお腹が盛大に不満を訴え始めた為、ティナは食事をさせて貰える事になった。ただ、王城には先程の様な『ちょっかい』を掛けてくる奴らがいるのでハイジェイドの信用している人の家にお邪魔させて頂くことになった。


✳︎✳︎✳︎


「まぁっ!まあ、まあ、まあ!」


その『信用している人』の家に着いた途端、ティナは何故か大歓迎を受けた。


「なんて可愛らしいお嬢様なのかしら。ハイジェイド様がずっとお探しになるのも分かります」


可愛らしい………?


可愛いというか、顔の美醜で言えばこの国の人々の方が圧倒的に綺麗だと思うのだが。そして首を傾げている内にあれよあれよと様々な事が為され、ティナはとっても手触りの良い綺麗な服に着替えさせられてテーブルに着いていた。


「?????」

 

余りにもあっという間だったので混乱しているとディルディロがこっそり「妖精の魔法だ」と教えてくれた。成る程凄い。そして和やかな雰囲気で食事がスタートしたがティナは目の前に置かれた料理が豪華過ぎて目を白黒させた。しかし全て量は少な目だったのでハイジェイドに食べ方を習いながらも美味しく頂いた。そしてそんなティナ達の姿を先程の女性はとても嬉しそうに見ていた。食事が終わった後はティナが知らない飲み物が出てきた。これが噂の『紅茶』らしい。ティナは自前の薬草茶くらいしか飲んだ事が無かったので紅茶を飲んで目を輝かせた。


「美味しい!」

「ふふ、よかったわ」


この女性はハイジェイドの乳母なのだという。そしてハイジェイドが弟に襲われ、仮死状態になっている時もずっとハイジェイドの身体を守ってくれていたらしい。


「ね、ティナさん。わたくしティナさんともっと仲良くなりたいのですけれど、よかったら暫くこの家に泊まっていってくれないかしら」

「え………」


どうしよう。確かにこの女性(さっきマリーさんだと言っていた)は今の所結構好きだ。嫌な感じもしないしティナに怒鳴ったり殴ったりもせずに優しい。あとご飯が美味しい。


ーーでも………


チラリと同行者達の方を見る。マリーさんは食事は出来ずとも雰囲気だけでも、と幻姿たちの席も用意してくれた。彼等の前にはピカピカに磨かれた綺麗な平たいお皿と、その上に乗る庭に咲いていたらしいコロコロとした形の可愛らしい花。目で楽しんで貰える様にとの配慮だ。


「まあ、いいんじゃないかしら。わたくし野宿はもう嫌ですし」


ツンと澄ましながら話すアイリットと、頷く他の幻姿達。


「えっと、じゃあ………お願いします」


ティナの答えにマリーや、何故かハイジェイドも満足そうに頷いていた。そしてそこから難しい話が始まった。メヴィからハイジェイドへの報告である。全てをティナが理解できた訳ではないと思うが、聞いた情報を整理するとこんな感じだ。


まず、そもそもの話だが王位は前王の時代からハイジェイドが継ぐ事になっていた。妖精王の代替わりは前王が指名し、前王亡き後は森との契約を結び、王となる。しかしそれを王弟が受け入れられず、王弟を担ぎ上げる周りからの声もありハイジェイドを呪い殺そうとした。その結果、ハイジェイドは何とか一命は取り留めたものの仮死状態になり表向きは行方不明。なんとかハイジェイド派の貴族達が王弟の即位に抗うも厳しい状態になっている所をハイジェイドが帰還、王位争いに勝利を納め即位した。しかし王弟は捕らえ幽閉したものの王弟側の残党が未だ息を潜めており頭を悩ませているそうだ。


「そんなに沢山残党がいるの?」


ティナの言葉にハイジェイドは大きなため息を吐く


「いや、数としては恐らくそれ程。しかしあれらを影で匿っている貴族がいる。目星は付いているものの中々に証拠が出なくてね」


聞けばその『残党を匿っていると思われる貴族』は元々王弟派だったものの、王弟が不利と悟るやハイジェイド側へと鞍替え。そこまでは状況が有利な方に着くのは仕方が無い物だとハイジェイドも理解はしていた。なのにそれらの貴族がハイジェイドが王になった途端皆娘や血縁の女性を王妃にと勧めてくるのだという。しかしティナは思う。


「ハイジェイドに奥さん紹介しておいて王弟の残党匿ってるのは何で?残党の計画が上手くいってハイジェイドから王権を取り上げちゃったら娘さんとかも殺されちゃうんじゃない?」

「ああ、まあ……そうなんだけどね」


口籠るハイジェイドに首を傾げているとメヴィは嫌悪の籠もった口調で話し出す。


「あいつらは例え自分の娘だろうと関係ないよ。使える駒は何だって使う。多分娘を王妃にできたらそれを口実に色んな事に口出しをしてくるんだよ。上手く娘が国王様の寵愛を得られたら王を傀儡にする事も出来るかもしれないし。残党を匿っているのは全部の貴族じゃないとは思うけど、森を攻撃する事で国王様の弱みを握ろうとしてるみたい」

「どういう事?」


この国では、古くから妖精王は森と契約をし森を守り暮らして行く。ティナが元気がないなと思ったあの森だ。森は守って貰う代わりに妖精王へと豊かな実りを約束する。そうやって古くから双方の関係は続いていた。王位を継いだ新国王がまず為すべき事は森と契約し、森を守り抜く力があると周りに知らしめる事だった。なので王弟派の残党を匿っている貴族らは残党らが森を攻撃しているのを許容し、弱る森を傍観している。そして森を守れていない事に漬け込み王を思うままに操ろうとしているのではないか、とハイジェイド派は思っている、と。


「ふぅん」


そしてそんな背景がある前提での話になるのだが、実は妖精の国には『古の呪われた祭壇』というほぼお伽話と化している言い伝えがある。なんでも権力争いは今に始まった事ではないのでその昔、今回の王弟の様に「納得できねぇ!」となった王位を継げない王族が物凄く力を持った魔法使いだか何だかに祭壇を作らせた。そしてそれを使って王位奪取を試みたそうだ。それがどういう効果を持っていて、結果がどうなったのかは分からないらしいが(そこは分からないと物語としてだめなのではとティナは思う)今でもその祭壇はこの国のどこかで密かに眠っている……的なのがあり、なんと今回の王弟がその眉唾な祭壇を見つけ出してしまった事がメヴィの報告により分かった。しかも祭壇には使用する迄にかなりの準備期間を要する上妖精を生贄に捧げる必要があり、運悪く生贄にと捕獲されてしまったのがメヴィだそうで、流石にその事を聞いたハイジェイドは目を瞠って驚いていた。捕われている間にメヴィが聞いた話によると捕まる前の王弟は自分が王位を継ぐのは難しいと悟ったのだろう。狂った目で「王位が奪えないならこんな森滅ぼしたらぁ!」的な事を言っていたが結局その前に捕縛、幽閉。旗頭は捕まってしまったが祭壇の準備も漸く完了した事なので残った残党は予定していた通り妖精メヴィを生贄に使い祭壇の呪いを発動させてしまった。しかし呪いはどうやら生贄の心身を徐々に蝕みつつ時間差で発動する様でそれを知らなかった残党は怒り狂っていたらしい。


ーー王弟も残党も、馬鹿なんだな………


計画性がザルすぎてティナは何だか悲しくなってきた。そりゃ、前王が次期国王へと指名しない訳だ。ティナが王様だったとしても、しない。しかも話を聞いている内にもう一つ思ったのは。


ーー王弟についてた貴族も、あんまり頭良くなさそう…………


何人もの幻姿からバラバラの知識を教えて貰ったとはいえ一般では学が無いと言われるティナに言われるのもどうかと思うが貴族ってもっと頭が良く無いとなれないと思っていた。ふと思い出すのはあの集団。恐らく小屋にいたあの男達がさっき話に出てた『元王弟派』なのだろう。


ーーそりゃあお城で集団強姦しようとする様な奴らじゃまともな考えは持てないよなぁ


もし、このティナの心の声を聞けばそれこそ失神するくらいあの貴族男性らは怒り狂うのだろうが、残念ながら今男性らは一方的にティナに憐まれるだけだった。




【メヴィside】


「祭壇への生贄はこいつでいいんじゃないか?」


浮上した意識の中、何とも物騒な言葉が聞こえた。生贄とはどういう事だ。そもそも自分は何故こんな狭い袋の中に閉じ込められているのか。


ーーあ、そうだ思い出した


少し前に、ただの弱い森の妖精でしかないメヴィと友達になってくれた心優しい新しい王様。王様は昔、人間の女の子に助けられてずっと会いたいと思っている事を教えてくれた。しかし権力争い(こんな状況)で国から離れる事が出来ず探しに行く事すらままならないと悲しげに笑っていた。「生きているだけでも感謝しないといけないのにね」と。それを見たメヴィは何とかしてあげたくなった。悲しむ友達を慰めたくて女の子の捜索を申し出た。1人では難しいかもしれないので他の森の仲間にも話してみれば仲間達は弱い森の妖精にも優しい王様の為になるのならと了承してくれた。なのに、探しに行こうとした矢先に捕まった。問題の王弟派の奴らに捕まってしまったのだ。


ーーううぅ、ついてない


恐怖で身体をブルブルと震わせていれば外で笑い声が上がった。


「おい見ろよ!こいつ目を覚ましたみたいだ」

「袋……震えてないか?」

「何だ何だ、お前怖いのか?」


ドッと響く不快な笑い声。怖い。怖いに決まってるだろう。今からお前を生贄にするぞと言われてヘラヘラ笑っている様ならばそいつはもう正気じゃない。袋の中でガタガタと震えながらメヴィはそう悪態づいた。暫く袋の中で窮屈にしていると目的地に着いたらしく乱暴な手付きで尻尾を掴んで袋から引き摺り出されそうになる。


ヴヴヴヴ………


歯を食いしばり必死に袋に爪を立てて何とか視界の端に映る祭壇に連れて行かれない様に抵抗したが苛立った男の1人が剣の柄でメヴィの頭をガツンと殴り、目が覚めたらもう祭壇の上に乗せられ儀式は始まっている様だった。


ーー逃げないと


そう思うのに何故か身体はピクリとも動かない。別に縛られている訳でもないのにと思って身体を見ると自分の身体にどす黒いモヤが纏わりついていた。それらは足元からどんどんメヴィの喉元へ向かって進んでいるらしく、身体から力が抜けていくのが分かる。


ーーやだ………死にたくない……………


メヴィの目からぽろりと涙が落ちた時、メヴィを袋から引き摺り出した男が叫んだ。


「おいどういう事だ。時間がかかり過ぎている」


他の男達も首を傾げたり何かの紙を覗き込んだりしている。するとそれまでは気が付かなかったが祭壇の直ぐそばで真っ黒のフードを目深に被った男が口を開く。


「どうやらこの祭壇の呪いは遅効性らしいな」

「なんだと?!」


男達が話す間にもメヴィの体力はどんどんと奪われ、今度は身体がバラバラの向きに引っ張られる様な激痛が走る。余りにも激しい痛みに意識を飛ばしそうになっていればいつの間にか再び袋の中に突っ込まれて運ばれていた。男達の途切れ途切れで聞こえてきた会話によればこのまま呪いが完成するまでメヴィをどこかに隠す事にしたらしい。祭壇に乗せておくのはいかにも生贄だと分かりすぎる為それだと呪いを解かれるかもしれない。しかしメヴィ入りの袋を持って逃げ隠れするのは邪魔、ならば妖精の国から出してしまえば見つからないのでは。そんな事を話し合っていた。


ーーじゃあ、僕の呪いを解けば祭壇の呪いも解けるってこと?


虚な頭で考えるメヴィは必死に「なら国王様の所へいかないと」という思いを胸に抱きながら気を失った。


✳︎✳︎✳︎


「幻姿なのかな」


まるで天気の話でもするかの様な軽い声が聞こえ、意識が浮上する。


ーー知らない人間の女の子だ………


必死に「国王様の所へ行く」と思っていたのに何故か森で料理をしている様子の人間の所にいた。


「ティナ、あれは多分呪いじゃないかと思う」

「え、呪い?そんなのあるの?」

「ああ」


そんな会話を繰り広げているのはまさかの人間の幽霊、幻姿と呼ばれる物だった。


ーー初めて見たなぁ


それに今『呪い』と話してはいなかっただろうか。人間にこの呪いが理解できたのも驚きだが考えてみれば幻姿と会話をする事も普通では無かった。そしてぼうっとした頭で女の子を見た。そしてある事に気が付く。


ーーあれ、この女の子…………


それは、確かに妖精の気配。とても希薄で頼りなく、ここまで弱ったメヴィだからこそ気付けるくらいの気配。妖精としては最下位の普段のメヴィよりも更に弱い気配。


ーーこの子、自分から妖精に名前を教えた事があるのか


幻姿と話していた女の子が自分に向けて手を翳していて少し不安になったが、妖精に名を預けた事がある。そう思えば何となくこの子が悪い子ではない様な気がした。


ーーあれ、なんだこれ………!


突然ふわりと身体が軽くなり、メヴィの身体を蝕んでいた呪いが消えた。


「元気になったね。木の実炒ったの食べるかな」

「どうだろうな」


そう言って目の前で会話をする2人はなんて事無いようにフライパンの中の木の実を見つめている。そして呪いから解放された事で気が付いた事がある。


ーーこの気配、国王様のだ!!!


なんと、メヴィの大切な友人の探し人はこんな所にいたのだ。


ーー会えた!会えたんだ!


呪いによって朦朧とする意識の中、必死に国王の元へと向かおうとしていたメヴィは恐らく無意識の内に国王の気配を持つ目の前の女の子へと近付いた。メヴィが人間の治める国に放り出されたのも、放り出された場所から弱ったメヴィでも移動できる程の距離にこの女の子が居た事も、女の子が強力な解術の術を持っていた事も。その全てが奇跡の繰り返しだった。


ーー何とか、国王様に会わせてあげたい


そう思っているとティナという女の子はどうやら他の幻姿達と共にこの先にある崖まで行くと言う。そこは、奇しくも妖精の国への入り口の1つだった。しかも、ただ崖から落ちるだけでは辿り着けない。妖精との縁を結んでいる者か、妖精を伴ったり招かれたりしないと辿り着けない場所。しかしティナはその全ての条件をクリアしている。


ーーやっぱり奇跡だ!


ただ国王様との薄い縁だけをアテにして崖を落下して何かあってもいけない。メヴィに細かい調節は出来ないので後ろの幻姿達も全員ついてきてしまう事にはなるだろうが仕方ない。彼等も連れて行こう。





「クソ狐め!!」


そうしてメヴィは可愛らしい見た目に反して口の悪い人間の女の子、ティナを妖精の国へと招いた。


「こんのクソ狐」


そして招くと共に、ティナには内緒で彼女には従僕の印を押し付けておいた。最弱種(メヴィ)を供に付けたからといって何かから守ってあげられる訳ではないが(むしろ普通にティナの方が強い)何となく、自分にできる恩返しがしたいなと思いこれくらいしか思いつかなかったのだ。だからメヴィは考える。


ーー出会った時、木の実を食べようとしてたけど木の実好きなのかな


ならば今度美味しい木の実が生えている場所を教えてあげよう。後日、メヴィが従僕の印を渡して忠誠を誓った事を知ったティナが唖然としたり、勝手に余計な物を押し付けるなと幻姿(保護者)から怒られたり、僕よりも先に目に見える印を渡したんだねと国王がショックを受けたりするのはまた別の話だ。


ーー僕のご主人様と僕の友達がもっと仲良くなればいいなぁ!


メヴィは今日も、自分にできる精一杯を生きている


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