第1話「目覚めと変態」
お待たせしました!1話目です〜_φ( ̄ー ̄ )カキカキ
「…………デェヤッ!?」
先程まで変な夢を見てうなされていたせいが、身体中から汗が噴き出ていた彼…青乃 綉の第一声は何と酷いモノだろうか?
多分、世界中を探しても目覚め際にデェヤッと言う奴は居ないであろう。
そんな彼は、軽微ではあるが変な頭痛と目眩に苛まれながら額の汗を拭い一息つくと時計に目をやる。
「7時過ぎか…てか、我ながらどんな夢を見たらあんな奇声をあげるんだか…」
自己険悪に陥りながらも彼は自分がどんな夢を見たのか必死に思い出そうとするが……
(……あれ、思い出せねーぞ?)
彼は更に深く考え込み回って起きたての頭をフル回転させる。
(確かに夢を見てる自覚はあって、なんか大事な事だった?気がするんだけど…)
彼は目を閉じ考えに考え思い出そうとするが何故か途中で自分の頭にモヤがかった感じになり夢の内容を思い出せずにいる。
「ま…いいか、もしかしたら余り重要じゃ無いのかもしれんしな」
思い出す事を諦めた彼は、ベッドから起き上がろうと手を横に着いた時ベットとは違う感触が彼の手にもたらされたのである。
…ムニュ。
彼は怪訝に思い、もう一度確かめる様に触ってみる。
…ムニュ、ムニ、ムニュ。
…ピクッ!?
明らかにベットでは無い感触と反応が示され、嫌な予感がした彼は勢いよく掛け布団をめくり上げると目の前に映る驚愕な光景に先程以上の頭痛と目眩に苛まれながら目をやる。
そこには幸せそうに笑みを浮かべて涎を垂らす愚昧なる姉が目のやり場に困るセクシーネグリジェ姿でご就寝中であった。
「…ZZZz」
「………」
彼は見間違いだと信じ、目を2度3度擦るが受け入れ難い現実に間違いが無いと認識する。
「ダァァァァァァァァアッッッッッッ!?」
そして彼は本日2度目の迷言を今度は家中に響かせて寝ている姉の側頭部に強烈な目覚ましチョップを繰り出し強制的に姉を叩き起こすのである。
「ぐへぇ…」
「起きろバカ姉さん」
強制的に起こされた彼女は変な声を出し痛む側頭部に片手を当てながら上体を起こす。
「もうっ、起こすならもうちょっと優しく起こしてよ〜……そう例えば!おはようのキs――」
「黙れ」
「ぐへぇ…」
悪戯っぽくトンデモ発言をする姉に、すかさず脳天チョップをキメる。
「痛い……」
「阿呆みたいな事を言うからだ」
「だからって、本気でチョップするなんて………」
またチョップされた事に反論する姉だが今度は急に黙り込み悩む様に考え込んだ末、自己解決したのであろうか…こちらになるほどみたいな顔を向けて話してくる。
「あっ!分かったっ!!もう綉は恥ずかしがり屋さんなんだね」
彼の中で嫌な予感はしてたが、とりあえずそのまま聞こうとすると姉は前屈みに両手を着きその豊満な胸を真ん中に寄せる形で誘惑的に耳元で囁いてくる。
「本当は……キスじゃなくて〜、寝ているお姉ちゃんを夜ばぁっ――」
先程よりも強烈な爆弾発言をしようとする姉を瞬間的にチョップする。
「ぐへぇ……あっ!なら、おか――」
まだ懲りずに爆弾発言をしようとするので遮る様に追い打ちをかける切り札の言葉を冷たく投げかける。
「それ以上言うのであれば金輪際、姉さんの事は姉と思わず赤の他人として…実里さんとして接します」
それを聞いた姉はピキィッとこちらに聞こえてきそうな感じに石化でもしたのかピクリとも動かず数秒後には顔が真っ青になり、泣きついて来た。
「ぞれだけば〜…ぞぉれぇだぁけぇばぁぁ〜〜がんべんじでぐだじゃぁぁぁ〜い……」
効果的面過ぎて余りにも可哀想になってくるがこの重度のブラコン姉を黙らすには1番効果的なのである。
とりあえずほっといて準備しようと動こうとしたら世界が終わった様な顔をしてあまりにも泣きつくので落ち着かせる為に仕方なく姉が大好きな膝枕とセットで頭を撫でると次第に落ち着きを取り戻していく。
「にゅふ〜♪」
先程とは打って変わって幸せそうな顔をしながら猫みたいに甘えてくる姉の頭を撫でながら思い耽る。
(本当、家と外では大違いだな…普段の姉はちゃんとしていて凛々しくて尊敬もでき、そして男の俺から見ても美人でスタイルも良いし頭も良いから非の打ち所がない自慢の姉なんだが……)
膝の上で幸せそうに寛ぎ、しまりの無い残念な姉の顔に目をやると溜め息を吐く。
「…今軽く失礼な事思わなかった?」
姉の鋭い質問に一瞬えっ、と驚きを隠せない顔をしてしまうが適当に誤魔化し時間も時間なので姉にリビングで食事を済まそうと催促する。
〜青乃家リビング〜
「あら〜、しゅーちゃんとみーちゃん2人ともおはよ〜」
姉と一緒にリビングに入るとキッチンからこちらに向きいつもの様におっとり口調で挨拶したので声の主に挨拶を返す。
「おはよう、母さん」
「おはよう、お母さん」
そう言われた母は、微笑みながらキッチンに向き直し調理を再開する。
姉さんはそのままキッチンに向かい母の手伝いをしながら自分が飲む珈琲を用意しだし、俺はリビングのソファーに座る父の近くに行き挨拶をする。
「おはよう、父さん」
「おう、おはよう」
新聞を読んでいた父はこちらを見て返事を返すと近くのテーブルから珈琲カップに口をつけながらまた新聞を読み出す。
俺も別のソファーに座りテレビを見ながら朝飯が出来るのを待っていようとしたらキッチンから声をかけられる。
「しゅーちゃん、ごめ〜ん人数分お皿の用意とかしてもらえるかしら〜?」
と母から要請があったので、あいよーと返事だけして
用意をしに行く。
すると、扉の向こうからドタドタと慌ただしく階段を駆け下りこちらに向かってくる音がしたと思ったら勢いよく扉が開いた。
「……お…おは、ようママ」
よっぽど焦っていたのであろうか髪の毛がボサボサのまま勢いよくダイニングに登場してきた人物、妹の凛が肩で息をしながら母に挨拶する。
母もあらまぁ、みたいな感じに凛を見ながら挨拶をし返す。
「あらあら〜、りーちゃんおはよ〜もうすぐご飯出来るけどぉ〜まず先にそのボサボサの髪の毛直してきなさ〜い」
と凛に優しくそう促して洗面台に向かわした母は朝ご飯の支度を終わらすと先程用意してもらったお皿に盛り付けていく。
〜数分後〜
身嗜みを整えた凛がダイニングに戻ってきたので家族全員でダイニングテーブルを囲んで朝食を摂りながら談笑を始める。
途中、母があっ、何か思い出したような顔をして俺を見てくるので俺はどうしたのだろうと思い珈琲カップを手に取り啜りながら母さんに尋ねてみる。
「母さんどうしたの?」
ズズーッ…
「え〜っとね、朝しゅーちゃんの変な叫び声が聞こえてきたからどうしたのかしら〜と思ってね〜」
ブフゥ――ッ!?
「――っ、汚ないバカ兄貴!!」
ゲシッ!!
あの迷絶叫を聴かれてしまったのかと言う恥ずかしさに思わず珈琲を吹いてしまい、更に隣に座っていた凛には指摘された後、睨みながら足に軽く蹴りをいれられる。
「げほっ…ごほっ……」
「あらあら〜、しゅーちゃん大丈夫?」
母は心配そうにおしぼりを俺に渡してきたのでありがたく受け取り口元とこぼした珈琲を拭き取る。
「……き、聞こえてた?」
「それは〜もう、ご近所中に聞こえそうなくらいに〜大きな声だったからね〜」
母にばっちり確定申告を受けた俺はげんなりしながら事の顛末を話していく。
「いや、あれは朝起きたら姉さんが隣で寝てるから驚いて叫んだだけだよ……」
「あら〜そうなの〜?」
全員が姉さんを見るが、とうの本人は家の中で見せる表情の面影はどこにも無く凛々しい面持ちで優雅に珈琲を飲んでいる。
「はぁ…お姉ちゃんまたしたの?」
呆れた様子で凛は姉さんに問いかける。
「……えぇ、そうね」
少し間を置いて、全く会話に興味が無さそうにクールな感じで簡潔に告げる。
この状態…仕事モードの姉さんは我関せずで冷めてる様に見えるが仕事柄そうしてないと務まらないので仕方ないのである。
その仕事とは魔装検事局であり、内容は国で起きた特殊な事件の被告人を起訴して罰を与えたり逃亡あるいは現行犯の場合は警告を促し逮捕するが警告を受け入れてもらえない場合は武力行使で処罰を与える事ができる特殊な仕事である。
そして姉は検事局きっての凄腕魔装検事であり冷淡に仕事をこなす姿に同僚からは氷の魔女と言われ恐れられているがスイッチがOFF状態、素の姉は家族超大好きの変態かまってちゃんな姉になる。
なので仕事モードの姉なら色々と頼りになるし絶対に問題発言をしないので安心なのである。
暫くすると姉は食事を摂り終え立ち上がろうとすると凛が口を開く。
「お姉ちゃん、毎度兄貴の布団に入り込むよね〜どうして?」
この何気ない凛の疑問に姉さんは立ち上がり凛としたキメ顔で答える。
「それは、綉を異性として心の奥底から愛してるからよ」
ハイッ!今、俺の絶対的安心は綺麗さっぱり崩れさりましたっ!!!
この爆弾発言に俺以外の家族の反応は…と思い3人を見やると母はうふふ…と微笑みながら口に手を当て、父は腕を組み何を悟ったのか何度も頷き、凛は先程飲みかけていた牛乳を吹きかけ咳き込む。
とりあえず俺は近くにあったおしぼりを渡すとありがとうと言って凛はそのおしぼりを受け取ると今度は母が姉に話しかける。
「ところでみーちゃん、しゅーちゃんを愛してあげるのはとても良い事なんだけど〜…」
と、母もトンデモ発言をするので俺はそんな愛を認めていいのかよ!?と思いながら、すかさず母を見るが、一瞬見えた姉の姿に違和感を覚え姉に見向きすると母が続きを話す。
「いつまで、下はパンツ姿のままなのかしら〜?」
母の発言にびっくりした凛があられも無い姿の姉さんを見て叫ぶ。
「ちょっ!お姉ちゃん!?」
姉もそのまま目線を下ろす。
「…………忘れてたわ」
「いや、気付けよ!?」
俺がツッコミを入れると姉は着替える為に自室に戻る。
(あ、でも姉さんと一緒に来たのに気づかなかった俺が言えた義理じゃねーよな……)
「……ところでお前達」
急に父が神妙な面持ちで皆んなに話しかけてくるので俺が聞き返す。
「どうしたんだ父さん?」
「毎朝、実里が綉のベットに潜り込んで何をしてるのかは知らないが、あの告白は真剣なのであろう……だけどお前達は姉弟で家族だ。」
そうだ、世間的に許されないのである。
なので父はそれを伝えようとしてるのであろう。
まぁ、俺はたとえ姉に告白されようと付き合う事は絶対無いけどね。
「そう…家族だからこそ、父はお前達の恋を全力で応援するぞ!!」
「バカなのっ!?」
「アホかっ!?」
俺と凛が父の言葉にツッコミをいれてしまう。
この家族には凛以外まともな人間は居らんのか?と心の底から思った。
「そして、綉よ…」
「なんだよ……」
もう対応に疲れてヤケクソ気味に答える。
「とりあえず…ゴムは着けろよ?」
「うん、父さん少し黙ろうか?」
「大事な事だぞ?、せめて卒業したらお前達が考えて子供を作れば良いが今は学生だからな、今はまだその時じゃ…………」
「だから黙ろうか?そしてそんな未来は絶対ないから」
と父さんに断言する。
すると背後から声をかけられる。
「私はいつでも、何人作ろうと大丈夫だわ」
いつの間にか着替え終わった姉さんが俺の背後に立っていた。
「姉さん、本当に朝言った事を実行しましょうか?」
「………………でも」
「…姉さん?」
脅す様に姉さんを冷ややかな目で姉を見やる。
「仕事に向かうわ」
姉さんは何事もなかった様に職場に向かう。
俺も朝からどっと疲れを感じながら玄関に向かい母さんに挨拶する。
「母さんご馳走様、行ってきます」
「お粗末様です、いってらっしゃい」
母さんは微笑みながら見送り、俺は学院に向かう事にした。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
本当は学院の所まで書きたかったのですが・・・
長くチンタラ書きすぎました(^◇^;)
次はスマートに書けるように努力したいと思います