Prologue 〜夢の中〜
プロローグです。
少し長いかもしれませんがお付き合い頂けると幸いです。(^◇^;)
真っ白な空間…見渡す限り何も無い空間であり、自分の現在の状態は地に足がついているのか、それとも無重力の空間に居るのか全く分からない状態である。
「またここか…」
ただそう呟く。
しかしここが夢の中であることは何度も体験した本人が1番分かっている事なのでいつもの様に身を任せる。
学院に入学してから毎度見る同じ夢…いい加減見飽きたと言っても過言では無い回数を見ている訳であり…
「流石に見飽きたって…」
と悪態を吐きながら、違う夢を見れないものかと真剣に悩む。
次第に真っ白な空間は変わっていき広大な渓谷へと景色に変貌し勢いよく吹き抜ける風で自分が目渡す範囲には何も無い崖の上に立っている事を認識する。
そして崖下に目を配らせると数百の兵が敵対者と対峙しており憂鬱を感じながら、今度は上空に目を配らせると今にも雨が降りそうな曇天を見続ける。
(毎回思うけど、いつの時代の夢なんだろうな…昔から読んでる英雄の御伽話とかにありそうなシチュエーションだけど…読むの止めたら違う夢見れるかな?)
心の中で思いながら曇天の空を見続ける。
「…おい」
ふと、背後で機嫌が悪そうな女性から呼ばれてる声がするが気にせず空を見続ける。
ちなみに振り向きたいのは山々だが、これは俺の夢ではあるが俺では無い俺であるので振り向けないのである。
「おい!無視をするな!!」
「……」
更に無視をされた強気な女性は口調を強める。
「おい貴様、私を無視し続けるとは本当にいい度胸をしているな…マジでしばくぞ?」
「…………」
こうやって無視を続けていると背後の女性は地団駄を踏みながら涙声で無視し続けるなぁー!!と声を荒げるので、ようやく俺では無い俺が…言いにくいな。
よし、面倒だから今度から俺では無い俺は(俺)にしよう。
(俺)は振り向くと、そこには同世代であろう少女が俯きながら怒りで肩をワナワナと震わせている。
彼女はその綺麗な緋色の長髪から涙目の瞳を覗かせこちらを睨んでくる。
「お前か…」
「お前か…じゃ無いわよ!!さっきからずっと、ず〜っと呼んでるのに無視し続けて……お前なんか……お前なんか!!」
彼女は殺気を含んだ魔力を身に纏い、右腕を横に突き出すと身の丈よりも少し大きな両刃斧を突如召喚すると右肩に担ぎながらゆっくりと(俺)に歩み寄って来て両刃斧のキリングレンジに入った瞬間だった。
「お前なんか――真っ二つになってしまえば良いんだぁぁぁぁっ!!」
そう泣き叫びながら彼女は怒りに身を任せ、垂直に両刃斧を振り下ろしてくるが(俺)は、ため息混じりに真剣白刃取りの要領で振り下ろされる両刃斧を片手で掴む。
両刃斧を掴まれた彼女はそれでも尚、そのままの勢いで真っ二つにしようとするが両刃斧はピクリとも動かず膠着状態になり(俺)が口を開く。
「いい加減にしろ、少し面倒だから無視したくらいで取り乱すな…みっともない」
「――っ!?余計質が悪いわよっ!!」
と、更に彼女は癇癪を起こしそうになりながら更に手の力を込めるが両刃斧は全く動く気配は無い。
「だから取り乱すなと言っているだろ?そんな魔力放ってたら…ほら言わんこっちゃ無い」
と(俺)は先程まで向いていた方の空にかなりの気配を感じたのでもう片方の手で指を差し、彼女も指が差されている方向に目をやると手の力を緩め両刃斧を収める。
「………私の所為じゃないわ」
「明らかにお前がアホみたいに出した魔力に惹かれて集まったんだ」
そこには異様な光景ではあるが、彼等の敵対者である天使と魔人が混合で数千と空を浮遊しながらこちらを目指していた。
「あれくらいの量なんて秒殺で終わるわ」
と彼女は自信ありげに告げると、今度は両刃斧を横薙ぎする様に構えるが(俺)に制止される。
「…邪魔しないでくれる?」
「邪魔はお前だ…お前の火力だと崖下の兵士や俺まで巻き込みかねん」
「うっ………」
「お前は先に本部に戻ってコハクに伝達しとけ」
「……分かったわよ」
図星を突かれた彼女は不機嫌そうに返事をしながらも心配そうに(俺)をその綺麗な深紅色の瞳で少し見上げてくるので(俺)は余裕の笑みを浮かべ答える。
「余裕だ…すぐに終わらして本部に戻るから安心して待ってろ」
彼女はこちらを暫く見つめていたが、急に頬を少し赤らめ、バツが悪そうにすぐ後ろを振り向いたので、こちらも正面に敵対者を捉えようとした振り向き際、彼女は急に「じゃあ…3分ね」と、こちらに告げてきたので何の話だと尋ね彼女に振り向き直した。
「貴方なら片付けて帰って来るのに3分もあれば余裕でしょう?…でも帰ってくるのに少しでも遅れたら―」
と、ほんの少し離れた場所でこちらに振り向き直した彼女の顔は先程までとは違う、年相応の可憐で明るい笑顔を見せ言い続ける。
「その時は罰ゲームでこの戦争が終わった後、皆で行ったあの超高いカフェで美味しいデザート奢ってもらうからねっ!!」
そう告げた後、本部に向かう為その場から消える様に移動したのである。
「はぁ………」
(俺)から溜め息が漏れる。
「…面倒になる前にとっとと片付けるか」
そう呟き(俺)は敵対者に向き合う。
敵対者とこちらまでの距離は100m付近まで迫ってきていた。
(範囲内だな)
頭の中でそう確信すると腰にぶら下げている愛刀に手を伸ばし柄に軽く添えると居合い抜きの体勢で構え呟く。
「…葬刃」
呟いた刹那、一瞬で敵対者に向けて刃を抜き放ち空を何閃か切った後、音を立てずにまた鞘に収める。
そして崖下の戦闘音が響き渡る中、空中に居た数千体の敵対者は胴体が横半分に切り崩れた瞬間、塵芥と化し崖下の兵士達が、歓喜を上げ士気が増したのを感じた(俺)は本部に戻るように消えるようにその場を後にすると、俺はまた自分の周りが真っ白な空間に変わっていく事が分かり、目覚めの合図だと確信し意識の途切れを待っていたのだが……。
(……)
(………)
(…………)
(…………ん?、変だな)
一向に意識が途切れる事もなく目覚める気配も感じられなかった瞬間であった、夢の中である筈なのに急に頭痛と目眩に苛まれながらテレビの砂嵐の様なノイズが響き渡る。
(――――っ!!)
そして知らない光景や人物が走馬灯の様に流れていき
段々と意識が薄れる中で最後に見聞きした事が、色取り取りのステンドグラスに差し込む光やその光で露わになる広大で真っ白な礼拝堂内部。
真ん中には巨大なパイプオルガンが鎮座しており、神秘的に思える光景だが、そこに似つかわしく無い人物が2人見てとれる。
1人は切れ目から覗かせる透き通る様なアイスブルーの瞳が良く似合う容姿端麗な女性で、黒と紫の巫女装束を身に纏い腰丈まである美しい黒髪をなびかせる。
圧倒的なプレッシャーを放つ彼女は佇み、もう1人に手を差し伸べ「さぁ、妾と共に来い」と告げる。
そしてもう1人は刀を抜き、その誘いを断る様に切っ先を向け彼女に相対している自分自身の姿である。
また激しい頭痛と目眩に苛まれた後場面が変わる。
半壊し瓦礫が所々に山積みになっている礼拝堂。
壁を背に崩れ落ちたかのように座り込む満身創痍で自分自身と、折れた刀。
血塗れの手で懐から出した自分自身といつも夢で見る緋色の少女を含めた楽しく映る7人の一枚の集合写真を微笑みながら見つめている自分自身。
「悪いな………」
の呟きを最後に俺自身の意識が途切れた。
プロローグ読んで頂きありがとうございます!!
ゆっくりですが更新していければと思っていますので、もし気に入った方が居れば是非ブックマークや御先輩方は何かご指導等頂ければ幸いです。