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傀儡鎧と金属少女の西方征伐記  作者: 松房
第六章 再起動
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第8話 帰路

・・・随分と長く寝てしまっていたのだろうか。

いや、本当はそこまで時間は経っていないのかもしれない。

俺の脳内で浮かんでは消えて行く思い出は物凄く懐かしくて、俺が持つ唯一の時間を測る基準だ。

けど何故今更意識が覚醒したのだろうか。

・・・この光景が夢であるなら覚醒はしていないだろうが。

何か俺を繋ぎ止めている未練やらなんやらがあるのでは無いかと思い出してみてもこれといって思い当たる節も無い。

右も左も上も下も分からない空間でひたすらに時間だけが過ぎて行く。


だが、目覚めの時はもうすぐなのだと直感的には理解していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私達は帰路につく。

車が見慣れてしまえば何の楽しさも無い鈍色の林の中を進む。

車内では、もっぱら力に関しての話になった。

「お互いの力を把握したい」

まず言い出したのはセーレさん。

その後、参加するだのしないだの色々あって、最終的には私とセーレさん、リンセさんにゲンさん。それと顔に刺青に入った二人だった。

「どうも。こうしてお話するのは初めてですね。私はブォルン=ヴァンノルンです。よろしくお願いいたします」

男性の方が私に話しかけて来た。

私の視線はどうしてもその刺青に方へ向いてしまうが、ブォルンさんには眼鏡をかけている為か知的な印象を受ける。

「同じくメレス=ヴァンノルン。よろしく」

女性の方も眼鏡をかけ妙に馴染んだ白衣からは知性を感じるが、メレスさん最大の特徴と言えばその小柄な体躯だろう。

あくまで大雑把な予測だがブォルンさんが百八十、メレスさんが百四十なので傍から見ると親子の様である。

「お二人は親子なんですか?」

リンセさんが踏み込む。

「あなた、私がこいつの娘だって言いたいの?」

「え、えぇ」

言い放つメレスさんの表情は険しく、不機嫌全開だ。

「まぁまぁ、姉さん落ち着いてよ。それが彼女達の世界の常識なのかもしれないしさ」

「姉さん、ですか?」

私の口は思わず疑問を零してしまった。

「えぇ。そうよ。私はこいつより二つ上」

「僕も姉さんも僕達の世界じゃ標準的な体格なのですが・・・むしろ皆さんが女性なのに大きくて驚きです」

ブォルンさんはあからさまに頬を染めセーレさんとリンセさんから目を背ける。

「チッ」

そこで炸裂するメレスさんの芸術的な脛への踵蹴りは見事ブォルンさんの泣き所を捉えた。

「ったぁっ!」

突然にして強烈な痛みにブォルンさんが取ったのは当然逃避。

だがここは車内の為身動きが取れずメレスさんの追撃を受けてしまう。

「ブォルン。お前に私はお前の姉として教育を施さねばならん・・・女性を体型で 格付けするなっ!」

「はいっ!」


その後、十分程するとそろそろ始めませんか?というゲンさんの提案により話し合いが開始された。

「言い出したのは私達だ。私達から発表するとしよう。いいだろう?ゲン」

「はい。異論も反論もございません」

「では、私から。私が与えられた”加速”だ。と言っても試した事は無いがね」

「それは皆さん同じだと思いますが、私は”硬化”でした・・・」

ゲンさんが言葉を切ると、

「目を閉じろっ!」

というダルグドールさんの叫ぶ様な声と共に車窓から眩い光が侵入してくる。

目を閉じ目が灼かれる事を防ぎきると、次に車窓の外に広がるのは白色の灰。

そして、正面から現れる謎の集団だった。

集団は全員武装していて、その奥に覗ける対脅威対策機関(プロテクテット)の施設からは黒煙が昇っている。

「・・・っ!総員っ!車から降りろっ!」

ダルグドールさんの指示で全員が降りるのを拒むかのように集団が相当な速さを用て車に接近の後その”体から伸びた剣”をこちらへ振るって来た。

迫る敵をダルグドールさんが貫き、セーレさん、ゲンさんが突き飛ばす。

だからといって怯む様な相手でも無かった。

先程ダルグドールさん達が行動不能にしたのを除き十名。

こちらから見て既に施設が甚大な被害を受けている事が分かる状況でセーレさんが言い放つ。

「皆さんっ!ここは私とゲンが受け持ちますっ!先に対脅威対策機関(プロテクテット)へ向かってくださいっ!」

「了解したっ!皆、今から飛ぶぞっ!舌を噛まぬようしっかり口を閉じておけっ!」

即座に反応したダルグドールさんが自身の身体を飛ばすと同時に私達も上空へ打ち出した。

私達は対脅威対策機関(プロテクテット)へ向け真っ直ぐと飛んで行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


彼女らが飛んで行き幾分か広くなった戦場に私は決意を改める。

否、たった今預けてくれた皆に報いなければと決意した。

「ゲン。”出せ”」

「良いのですか?」

「良い。私も”出す”。どの道あの者達は殺すのだから目撃者はいなくなる。これで文句はあるまい?」

「は。では、仰せのままに」

突如、私達の体は隆起し、鋼の鱗に包まれる。

私達の祖先が生み出し引き継がれてきた遺伝子。

それを持つ私達の真の姿だ。

突然の変身に驚く敵に踏み込み殴る。

「がはぁっ!」

一見防具の類は着けていない様に見えたが、中に着込んでいたのだろうか、硬い感触がするが関係無い。まとめて砕く。

砕いて、空中に浮いた男の体を踏み台に、次の相手へ飛び込んで回転、頭骨を割った。

その後も、肋、腰、首。砕く。

攻撃する度に加速していくのは”加速”とやらの効果なのだろう。

気がつくと敵は後二人となり撤退を始めた。

当然私も追いかける。

今の私に追い抜けないものなど無い。

だが、その慢心が仇となり私は気がついていなかった。

敵にはあの極光を繰り出す者がいるのだと。

一直線に突っ込んでいく私は防ぐ事が出来ない。突如として襲いかかる猛烈な光。

そして現れる灰。

この二つに見舞われた私とゲンは敵共を見失い、逃した。

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