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傀儡鎧と金属少女の西方征伐記  作者: 松房
第六章 再起動
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第5話 計画

投稿ペース落ちるとか言っときながらそんなに変わっていませんね(^_^;)

「さて、今日は君達に話がある」

ダルグドールさんが昨日と変わらない締まった表情でこちらへ言葉をかけてきた。

いや、今日の方が険しく、不機嫌そうなご様子。口調も心無しか荒い。

昨日赤く腫れていた額は跡形もなく治っているので未だ怪我が治っていない事は無い筈なのだが、目元の隈を見る限り徹夜明けなのだろう。

「君達は明日王都へ向かい王と謁見する事となった」

「・・・ちっ」

”王”という単語を聞いて舌打ちをしたのは妙に小さくてフードを目深く被った人だった。

「んんっ!・・・ともかくまた今日と同じ時間に迎えを寄越すので遅れる事の無いよう」

ダルグドールさんは咳払いをすると話は終わったとでも言うように席を立ち去ろうとする。

それを止めようとセーレさんも立ち上がる。

「ダルグドール殿。私達は私達のこれからについて話し合うと聞いてここに来たのだ。去るのならまずはその話し合いを行ってからにしてもらおう」

セーレさんが呼び止めるとダルグドールさんは振り返った。

「それは違いますよ。何せ異世界からの訪問者。国を挙げての国賓として扱うべき人間だ。そんな人達の行く末を単なる貴族の一存で決める訳にはいかないのですよ」

こっちの気苦労も考えてくれと訴える様な目に誰も口を開く事が出来ない。

「けれど、したい事自体は聞いておきましょうか一体どんな事をこちらでなさるおつもりですか?」

その言葉にも誰も答えない。

リーダーシップがあるのだろう口を開いたのはセーレさんだった。

その目は”誰か一度でも変わってくれたって良いじゃないか”と訴えている。

だが、本人にそのつもりがに無くてもダルグドールさんの威圧感は凄まじいのだ。

「私達はせっかくこの世界に来たのですからこちらの世界の技術等を学ばせて頂きたく」

「成程・・・」

何となくダルグドールさんの表情が緩くなるのが分かる。

「分かりました。皆さんの身分証明書は当学校の学生証として発行致しましょう」

「ありがとうございます」

その後私達は学生証発行の為に必要な手続きを践む事となった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ミノシタフル王国、その東の辺境であるダザイ領から更に三百キロ程東。王国に勝るとも劣らない規模の勢力が動き出そうとしていた。

巨大な樹木をくり抜かれて造られた自然と文明が見事な調和を醸し出している王宮で一人の女性が声をあげる。

「皆の者よく集まってくれたっ!」

女性の一声に目前に控えた数多の人間が気を引き締めた。

「これより新たな盟友、金属種(メタルム)の窮地を救う為の最初の作戦を説明するっ!アルザードっ!」

女性に呼ばれ一歩前へ出たのは耳が異様に長くまた豊満なボディを持つ人物。

「はっ!本作戦の最終目標はここより西へ三百キロ。ミノシタフル王国最東端に位置する対脅威対策機関(プロテクテット)施設内に存在する軍部特例識別コード”厄災”の奪取です」

王宮にどよめきが奔る。軍部特例識別コードとは軍部が特例的に設定する、現れた際は直ちに全ての軍と可能な限りの物資を集めやり過ごすしかないと判断した怪物。もしくは災害のことである。

「ほう、”厄災”とな」

集まった軍人達とは裏腹に女性は落ち着き払っていた。

「はい。”厄災”には知性がある事が想定され、また、ミノシタフル政府はノーマークである事が既に確認済みです」

「成程。続けてくれ」

女性の満足そうな顔にアルザードは咳払いをして続ける。

「改めて概要を説明致しますと、本作戦の目標は”厄災”の奪取。目標地点までは特殊魔道車両を用いて移動し、到達後二時間の準備時間の後作戦を開始します。

目標地点は非常に警備が厚く、大規模かつ兵器等を使用した抵抗が予測される為、本作戦の手順としてはまず隠密行動に長ける私達エルフ部隊が目標施設に侵入し、通信が入り次第金属種(メタルム)部隊と火力支援部隊は目標施設を攻撃。囮としてエルフ部隊が脱出するまで時間を稼いで下さい。何か質問はありますか?」

説明された作戦内容に質問はあがらない。

「移動開始時刻は明後日の十五時。作戦開始時刻は同日十九時です。最低でも三十分前には集合の後、特殊魔道車両に乗車待機して下さい。説明は以上です」

アルザードが一歩身を引くと女性が声を張った。

「本日の会議は以上だっ!各自解散し、明後日の作戦に備えよっ!」

「「「はっ!」」」

軍人達はその声と敬礼を以て女性へと敬意を示した後足速に去っていく。

最後の一人が去ると女性は深呼吸してからダラっと体勢を崩した。

その様子を見てアルザードは忠告する。

「はぁ。女王様。その様な御姿を部下に見られては示しがつきませんよ」

「よいよい。この方が楽だからこの体勢になっているんだ。例え嘗められても少し懲らしめてやれば良いだろう。どうせ私に勝てる者などこの世に数える程しかいないのだからな」

女王がそこまで言い切ると顔が梅干しの様に潰れ皺が出来た。

「その数える程しかいない者の一人がここにいるのですがね。では、その力で従わせるという女王様の法に則っとらせて頂きますか・・・」

ふぅわぁへぇふゅな(ふざけるな)・・・」

グググ・・・

女王の顔がより圧縮される。

「私は今女王様の頭蓋を潰す事も、身体中全ての気体を水素に置き換える事も出来ますが如何なされますか?」

「|ひゅふゅひぃへぇきゅだしゃい《許してください》」

「分かりました」

女王の解放された顔はゴム玉の様に復活する。

「だが、アルザード。本当に”厄災”を奪取する手立ては出来ているのか?」

「えぇ。勿論です。もし回収が難航しても隷属魔術を行使すれば良い話ですし、意思が無く魔術が使用出来ない状態でも尚更回収が楽になるだけです。それに・・・」

「それに~?」

「はぁ。それわざと聞いているでしょう・・・私と彼は知り合いでしたから。三百年前のですけど」

「ほう」

その言葉を聞いて女王は意地の悪い笑みを浮かべた。


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