本当に何処にでもいる少年の物語。
ある一人の少年の話をしようか。
少年は決して富豪などではなく、極々一般的な家系で産まれた。
しかし、彼は二人目だった。
姉が先に生まれていて、姉が駄目駄目になったからその反省を生かそうとして彼を厳しく育てたのだ。
基本的に少年は何も言わずにやる、やり遂げて褒めてもらうような、両親の操り人形だったと言っても過言ではないだろう。
しかし、それは小学3年生までであった。
疑問を抱き始めたのだ。
他の人達を見て、好きな物も買ってくれるし、行きたいところにたまには連れて行ってくれる友達の両親を見て驚愕したのだ。
君たちの親はそんなに優しいのか、と。
彼はそもそもの感覚が狂わされてしまっていたのだ。
その時、知的好奇心が彼の中に生まれた。
もっといろんな事を知りたい。
やっと親に制限されていた「感情」が溢れ出した気がした。
それを悟った両親は塾に入れた。
無理矢理夢を聞き出し、入らないと夢が叶わないぞと脅迫して。
少年は頑張った。
そうすれば周りの評価が上がると信じて。
少年は笑った。笑えば苦しみも辛さも紛れるかと思って。
少年は泣いた。でも受験を受ける事にした。この先に光が待っている事を信じて。
少年はそれでも少しでも良いように思ってくれればそれでいいと思い、死に物狂いで希望を見た。そして、彼は受験も受けた。
小学生の友達と仲良くする時間を潰して。
学校を1ヶ月以上休んで。
でも、受からなかった。
わずか7点届かなかった。
気付いた事が一つだけ。
人間、どれだけ頑張っても才能がない人にはそこにいる資格は無いことに。
彼には弟が居た。
その弟は僕の失敗からか甘やかされて育てられた。
僕が言われていた『ルール』が弟には無かった。
だから僕は今まで言われ続けていた『ルール』を弟に教えた。
いつのまにか弟は泣いていた。
その少年の弟の対応の仕方に反感を持ったのか、親はこう言った。
「こっちが教育してるんだ。とやかく言うんじゃねえ。」
と。
彼はあることを知った。
「自殺」という辛い環境から抜け出せる最終手段を。たまたまニュースで見かけたのだ。
一緒にテレビを後ろから見ていた両親はこういった。
「自殺なんて最低な事をするんだな。それで命を無駄にするなんて。阿保だろう。」
こいつらは何も分かってはいない。
人生を楽に謳歌してきた「勝ち組」だ。
......僕もその一人なのかもしれないが。
僕は初めて家出をした。
親に暴言を飛ばし、逃げる時は初めて心の奥から笑った。
幸い陸上部に入っていたお陰か、すぐに抜け出せた。
...しばらく経ったが、反省しているのだろうか、と思い僕を探して誰もいないだろう家に入った。
すると、親はゆっくりお茶を飲んでお菓子を食べていた。必死に逃げている途中で、追いかけもしてくれていなかった事実を知った。
彼はすぐさま家を出て必死に走った。
知らない道を駆け抜けて、知らないバスに乗り、一人で泣いた。
結局僕の周りは偽善者だらけだった。
母は愛してるなんて言ってくれた事が無かった。掛けられる言葉は罵詈雑言。
仕舞いには死ねなどと言う始末。
父は傍観者だった。暴言を吐いている母を見て項垂れているだけの。
僕から見たらただの僕を嘲笑っている様にしかみえなかった。
もう手を付けたくないと思ったらプライドも根性もあっさりと捨てる意気地なし。
そんな人達だった。
少年は発狂した。
環境が人間を侵食するとはよく言ったものだ。
泣いて、物にあたりちらして、号泣して、周りの目が耐えられなくなって、それでも行方がないまま走って。
気がついたら駆け抜けた抜けた先に崖があるのが見えた。
見上げると少年が住んでいた街が一望できた。
もう夜になっていて、暗い暗い空には星が綺麗に光っている。
街はライトアップされてピカピカと光り、美しい街並み。その様子はまるで...
『幻想的』だった。
泣きながら、でも最後に人生で一番いい物が見れたと少年は笑いながら。
崖に向かって身を投げた。
......神様?そんなの、居るわけない。
この文を読んでる君に最後に一言だけ。
人生の中で信じられるのは、自分だけ。
必要以上に......
『親』にも
『兄弟』にも
そして『仲間』にも。
縋ってはいけない。
『自分』を見せてはいけない。
頼ってはいけない。
それは必ず『誰か』を不幸にさせるから。
そしてそれを乗り越えた後にあるかもしれない。
君の探している『何か』が。