先輩女子のおパンツは謎だらけ!③
……それにしても暑いな。
真夏日にこんな狭い個室に二人で入るって、人口密度的に……。
──ドクンッ!
「ていうか暑いね。用も済んだし戻ろっか」
まどか先輩は第二ボタンの掛け目を掴みパタパタと扇いでいる。
よく見ると体は汗で火照っていて、普段の涼しげな印象からは程遠いものだった。
一畳にも満たない狭い個室の中を甘くてフルーティーな香りが立ち込める。もあもあむんむんと蒸気のように、僕の鼻と体を包み込む。
──ドクンッ!
今まで意識してこなかった。
部員たちがまどか先輩を女神のように崇める一端を垣間見ている気がする。
ゴクリ。
あれだけ嫌っていたはずなのに。こんな女と、思っていたはずなのに……。
横目にチラッチラッと見るのをやめられない。
匂いにあてられ感覚が麻痺しているのか。なんなのか、わからない。
確かにさっきまでは、この状況に絶望を感じていた。それなのに、今は…………。
チラッ。チラッ。
「あの〜、お楽しみのところ悪いんだけどさ、出るよ?」
「ああっ、はい!」
お楽しみってなんだよ。
僕はなにも、楽しんでなんか……ない。
「うぅん……君の場合は今まで見てこなかったから大目にみてあげるけど。変な気は起こさないでよね? これでも信用はしてるし、これからたくさん働いてもらうわけだし」
「な、なんのことかわかりません!」
「だからなつ君。声大きいって。わかりやすくて可愛げはあるんだけどさ〜」
「す、すみません……」
なんだ。いったいなんなんだ。
「じゃ、出よっか」
“ガチャン”とまどか先輩が個室の鍵を開けた時だった。
「うっひょぉーーい! 今日まどか先輩来てるらしいぜ!」
「去年の夏は暑いからって全然来なかったのにな! 今年の夏は最高だわ!」
「まどか先輩の居る体育館。まじ神域!」
外から声がした。部活前の用足しに仲良く連れションに来たようだった。
「あ〜。タイミング悪っ」
まどか先輩は険しい表情を見せるとため息混じりにぼやいた。
「ま、いっか。なつ君ここで待ってなよ。頃合いみて迎えに来てあげるから。さすがに暑くてもう無理〜」
なんだ、って……?
「……ま、まどか先輩」
「うそうそ〜冗談。子犬みたいな顔してウケるんだけど」
そう言うと“ガチャン”と、再度個室の鍵を閉めた。
ホッとしたのと同時に思ってしまったんだ。
これでまた、もう少しの間、まどか先輩の良い匂いを近くで嗅げるって。
そうして僕は、気付いてしまった。
この気持ちの正体に……。
それはあの日、初めて匂い付きパンツを嗅いだ日の気持ちと同じだということに──。




