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第三十話 先輩女子のおパンツは謎だらけ!①


 キキィー。ズザザザザザッ!


 軽快に駐輪場IN! 学校到着!

 ルンルン気分の絶好調。昨日までとは打って変わって体も軽い!


 バスケットの神が舞い降りている。


 そう思えるくらいにコンディションは抜群だった。


 部室棟にバッシュを取りに行くと、部員たちが温かく迎えてくれた。


「おっ、裏切り者が来たぞ! まどか先輩に看病されやがって。ゆるすまじ!」

「この異端者が! どうしていつもお前ばっかり……」

「とりあえず触らせろ! まだ24時間経ってない。まどか先輩の加護は有効だ!」


 「や、やめろーー!」


 昨日早退したにも関わらず、それを咎める者は誰一人居なかった。


 みんな、ありがとう!


 ◇◇


 よぉーっし!

 ここ最近の弛んだプレイを挽回するんだ!


 気合いも十分。体育館IN。

 練習前の用足しにトイレへ入ろうとした時だった。


 ──気持ちとは裏腹に一瞬で窮地に立たされることになる。


 突如手首を掴まれると、そのままグイッと引っ張られお目当ての男子トイレとは真逆の方向へ。


 そして──。


 〝バタンッ〟扉は閉められた。


 …………え? その瞬間、頭の中が真っ白になった。


 だってそこは、女子トイレだったから──。


「ちょっ、え⁈」


 急いでその場から立ち去ろうとするも、僕の目前を手の平が通り過ぎていった。


 〝ドーンッ!〟……ひぃ!


 それは“壁ドン”というやつだった。


 一瞬の恐怖の後に訪れる謎のきゅん。

 それでもここは女子トイレ。現実に戻ってくるまで二秒と掛からない。


「な、何考えてるんですか‼︎」

「はい口答えしなーい。作戦会議始めるよ」


 差し出される手に僕は手を置いた。……お手。


 そう、その人は──まどか先輩だった。


 今すぐにでもこの場から立ち去りたい。

 でも壁ドンの体勢がそれを許さない。


 無理に動けばまどか先輩の胸が……確実に当たる。また、事案発生とか言うに違いない。


 逃がすつもりのない完全包囲の“壁ドン”


 だからと言ってこの謎の状況に流されるわけにはいかない。


「何があったか知りませんが一旦落ち着いてください。さすがにここはまずいですよ」


 とりあえず宥めるのが先だ。こんなところに連れ込むなんて正気とは思えない。


 そう思ったのだけど、まどか先輩は眉をピクリとひそませた。


 どうやら、地雷を踏んでしまったようだ……。


「はい? なつくんそれ本気で言ってる? 既読無視からの未読スルー。さらには電話にも出ない。学校でなつ君とは話せない(・・・・)から“特別”に連絡先教えてあげたのに」


 いったいこの人は何を言っているんだ。と思うも、家を出てから一度もスマホを見た記憶がない。ルンルン気分で自転車に乗り頭の中は海乃のでいっぱいだった。


 今更ながらにやってしまったことに気付く。


「すみません。了解のスタンプを押したと思ったのですが……そのあとはスマホ見てないです」


「ああね。ふぅん。へぇ〜。そうなんだぁ」


 そういうと手が差し出された。僕はすかさずお手をする。


 この人に嘘は通用しない。そう思った。


「で、話を進めるとね、今回なつくんにしてもらいたいことは──」


「待ってください。場所変えましょう。女子が入って来たら大変です! 話ってヨシオとのランチの件ですよね。なんでもしますから!」


 とにかく今はこの状況を脱するのが先決。

 ヨシオ、ごめん……。


「それなら大丈夫。女子部は午後練からって確認済み。それにほら、ここなら男子は絶対に入って来れないでしょ」


 それはとっさの行動ではなく、計画的に此処を選んだ事を意味した。


 さすがはまどか先輩。考えあってのことか。


 なら仕方ない、か。


 ……いや。いやいや! いやいやいやいや!

 冷静な判断で此処を選ぶなんてどうかしてるだろ……!


 そもそも僕、男子だから!


「でも万が一ってことが! 忘れもの取りに来たりとか、なんかいろいろ! 僕が男ってことわかってます? いま、この状況ってとんでもないことですよ?」


「ああね。一理あるかも。君もこれで一応男の子だもんね。じゃあこっち」


 ……え? またもや、まどか先輩にグイッと手を引かれた。これには既視感があった。つい先ほどの……。


 〝バタンッ〟〝ガチャン〟


 閉まるドア。掛けられる鍵。


 もはや絶句の域に到達した瞬間だった。


 




 

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