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メガネ君のちょっと怪奇な日常譚  作者: chiwa
佐々木さんの喫茶店
9/27

前編

見える→視えるに変更しました。

大学の近くに、一風変わったマスターがいる喫茶店がある。

その人は佐々木さんと言って、若い頃はセクシーグラビアをしていたそうだ。

彼女も所謂“視える人”だ。


芸能という、人の欲望がうごめく世界にいると

色んな体験ができるわよ、と煙草をふかしながら言っていた。


ここの珈琲は美味いし、軽食もうまい。

軽食っていうかもはやこれは定食だなと思う量だが。

食べ盛り&お金がない学生にはありがたいお店である。


「佐々木さん、オムライスちょーだい」


「僕は、ハンバーグ。あとカフェオレをくれ」


俺たちはカウンター席に腰かけて注文した。

ちょうど慌ただしい時間帯が過ぎて、

ゆったりした時間にここに来るのがコツ。

佐々木さんの面白い話が聞けるのだ。


「まいどあり~。ちょっと待っててね」


佐々木さんが手際よく料理をしている間、

チビ先と今度行く心霊スポットについて話し合っていた。


「あんた達、本当にそういうところが好きよねぇ。

若いっていいわね~。無意味なことに全力投球できる」


「失礼な。無意味じゃないぞ。我々は探求心を…」


「ハイハイ。先輩はお口にチャック。

ただただ、不気味な所をひやかしに行くんだから

無意味以外の何物でもないスよ」


「むぅ…」


「あんた達、本当に仲良しだよねぇ」


「「仲良しじゃない!!」」


俺たちは顔を見合わせてギリギリと睨みあった。


「素直じゃないんだから。はい、おまちどおさま」


頼んだメニューがそれぞれ目の前に置かれる。


「はい。これは、シロちゃんの」


ハクの前にお猪口が置かれた。

佐々木さんは、ハクのことをシロと呼ぶ。

ハクもシロも同じようなもんだけど。


ハクがぱぁぁ~っと満面の笑みでお猪口に駆け寄った。

佐々木さんはハクをしっかりと視えてるわけではなく、

なんとな~くぼんや~りと視えてるらしい。


こいつは酒が好きなんですよと言って以来、

ハクにはさりげなくタダで日本酒をくれる。

マジでいい女だな。


「タバコ、いい?」


「いいですよ」


「煙たいのは嫌だが、仕方がない」


佐々木さんは俺らに断って、煙草に火をつけた。


「そういやさぁ、前に付き合ってた男が心霊番組の

プロデューサーになってたわ。

知ってる?霊感のある芸能人たちを集めてスポット巡りしながら

クイズをするやつ」


「あ~。知ってる。あれ、けっこうマジもんスよね」


「そうなのよね。視聴者はやらせとか思ってるみたいだけど、

ガッツリ映ってるわよね。出てる人らもみんな視えてるしさ」


「あの番組作ってるのが、元彼さんなんすか」


「そうそう。あいつ、そういうこと全然信じてなかったんだけど

私と付き合ってるうちに段々と霊感みたいなのが開花してさ。

最終的に実際に怖い体験してオカルトに目覚めちゃってさ」


怖い体験して目覚めるとか、テレビマンは業が深い…。


「どんな体験したんすか?」


きたきた。

佐々木さんの所に来ると、こういう話が聞けるからワクワクするのだ。


…なんか、チビ先に毒されてるような気がしないでもないが。


「えぇっと、あれは私がグラビアやってた時だから、もう22、3年くらい前かな」


佐々木さんは自分の分の珈琲を淹れ、椅子に腰掛けて話し始めた。


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