表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メガネ君のちょっと怪奇な日常譚  作者: chiwa
ひとりかくれんぼ
27/27

一夜

「あぁ。そうだ。先客がいるからな」


本堂に向かって歩いている時にご住職にそう言われた。


「え?先客?」


「そう。お前さんと同じくバカな遊びをしていた子だよ」


「え・・・」


本堂に着いたら、カップルが座っていて、女の子が青ざめた顔でこちらを見た。


「さて。お前さんたちの共通点は、バカな遊びをして困った事になったという点だ。

これに懲りたら、もう二度とやるんじゃないぞ」


「「はい・・・」」


僕らはしょんぼりして返事をした。

どうやら、ひとりかくれんぼをしていたのは彼女の方で、

部屋の電気が点かなくなり、なんだか家の中がおかしいと感じて

ものすごく怖くなって彼に電話。彼の伝手でこのお寺を訪れたそうだ。

しかも、その子もオカルトスレで実況していたらしい。

聞くとほぼ同時刻。


「本当に若者ってのはなぁ・・・」


ご住職がはぁとため息をついて嘆いた。


「では、取り掛かろうか」


流れで一緒に祓う事になって、僕らは祈祷をするご住職の

後ろに座らされた。祈祷が始まってしばらくすると、隣に座っていた彼女が

ぶるっと震えたと思ったら、アワを噴いて倒れてしまった。

白目をむいてピクピクと痙攣しているのを見て体がこおり付いたように固まってしまった。

そんな彼女にお弟子さんたちがテキパキと対処をしている。

そして、一緒にいた僕らにはお札と数珠を配った。


「う・・・ん・・うぐぅ」


段々と全身が痛くなってきて、息が苦しい。締め付けられているような圧迫感。


「痛いだろう?これはな、お前さんと奴を結びつける鎖みたいなもんだ。

その鎖がお前さんの全身にグルグルと巻きついている。

鎖のおかげで、奴はお前さんを感知できるってわけだ。苦しいだろうが辛抱だ」


なんとも言えない全身の痛みと息苦しさのせいで、

その説明もあまり頭に入ってこない。

脂汗が全身から噴き出した。

その後も祈祷は続き、気づけば23時になっていた。

祈祷を始めてから3時間くらいは経っていた。


「おい・・・お前の札・・・」


メガネ先輩の声が聞こえて、自分の札を見ると

いつの間にかびちゃびちゃに濡れていた。

なにか分からない墨汁みたいな黒い水分が滴っている。


「え・・・なにこれ」


「オイオイ。なんてことだ・・・」


ぼそりと呟いたご住職が頭を抱えていた。

それを見た僕は(あぁ・・・僕だけ失敗したんだ)と分かった。


「仕方がない。続けるしかない。おい坊主、しんどいだろうけど頑張れよ」


真摯に僕の目を見てそう言ってくれた。


「はい。ありがとうございます。本当にごめんなさい・・・」


「起こっちまったもんは、しょうがないだろ。しかし思った以上にしぶとい奴だな。

あと、悪いが君らも残ってもらう。今、帰ったら奴の標的にされるからな」


「えぇ!?そんなぁ!」


カップルが抗議の声を上げた。申し訳ない・・・。


「おい!お前な、ふざけんなよ!」


彼氏が僕の胸倉を掴んで怒鳴った。


「おい。やめろ」


メガネ先輩が間に体をねじ込んで彼氏の腕をおさえた。


「せんぱい・・・」


「はぁ?てめぇは関係ないだろ?こっちはさっさと帰りてーのによぉ!

こいつのせいで帰れないとかマジふざけんなよ!」


「お前さぁ・・・怒りの矛先間違てないか?そもそもの原因は彼女だろ。

彼女がそんな遊びをしなければ、お前らはここにいないんだよ。

それに、たまたまコイツの呼んだものが強烈だっただけで、

立場が逆になってたかもしれないだろ。気持ちは分かるけど、お互い様だろうがよ」


「あぁ?!」


「そんなに嫌なら帰ればいいだろう。どうしようもない状況でわめいても

何ひとつ変わらん。こいつに怒鳴って当たった所で同じことだ」


美人先輩が言うと、その美貌に一瞬だけ怯んだ彼氏だったけど

怒りが制御できなくて美人先輩の肩をドン、と突き飛ばした。

不意を突かれた形になった美人先輩がとすんと尻餅をついた。


「おい!」


メガネ先輩が怒鳴って彼氏に思いっきりチョップをかました。

先輩、カッコイイけど選んだ手段がチョップ・・・。いや、いいんだけど。


「いてぇ!」


「ちょっと冷静になれよ。不安な時に俺らも言いすぎたよ。すまんな」


「う・・・ごめん」


「ぼ、僕もごめんなさい」


「いや。このメガネ君の言うとおりだわ。お前のせいじゃないのにごめん」


「僕にも謝罪してもらいたいもんだな」


ブツブツと後ろで文句を言う美人先輩にメガネ先輩が手を貸して起こしてあげている。


「ハイハイ。ガス抜きは出来たか?」


パンパンと手を叩きながらご住職が言った。


「不安なのと精神的疲労で暴力的な気持ちになってしまうのは

仕方がないが、その負の気持ちに引っ張られるなよ。

怪異ってのは理不尽なもんなんだ。人間の事情なんか汲んでくれん。

こっちも最大限に対処をするから、君らも頑張ってくれ」


今日はもう休む事になった。

僕らは精神的にもヘトヘトで、このまま祈祷を続けても

持たないだろうという判断だ。

本堂に隔離されることになった。


「ワシらは祈祷を続ける。本堂には結界が張られているが、奴との鎖は繋がったままだ。

だから、奴はダメージを負い続ける。

だがな、弱りつつあっても簡単に人間を殺せる存在なんだよ。

弱った心に押しつぶされて、ここから飛び出したくなるだろうが、

本堂には強力に結界を張っているから、奴は絶対に入ってこれない。


何 が あ っ て も 絶 対 に 外 に 出 る ん じ ゃ な い。


いいな?数日は帰れないと覚悟しろ」


そう、念を押してご住職たちは本堂を出ていった。

残された僕らは(先輩たちも出ていった)みんなビクビクしていた。


「ひっ!」


彼女は僕を見ると怯えて、目が合うと小さく悲鳴を上げる。

本堂の外ではぐるぐると何かが徘徊している音が聞こえる。

これはきっと、奴の足音だ。独特の4足歩行の足音だから。


たくさんの人の足音が本堂周りをぐるぐると絶えず歩いている音が聞こえると

彼女が泣いているんだけど、僕らには聞こえないから彼氏さんも困っている。

そんな状況下で僕らはどんどん、疲弊していった。

すごく疲れていて眠ってしまいたいのに神経が過敏になっていてなかなか寝付けない。


そのうち、恐怖が絶頂になった彼女がパニックなって暴れて

扉へ駆け寄って開けようとした。

慌てて取り押さえる僕ら。


「おい!もういい加減にしてくれよ!!!!」


彼氏さんがこの状況に耐えかねて誰にいう訳でもなく怒鳴った。

僕も歯を食いしばっていないと叫びだしそうだった。


そうして、やっと恐怖の一夜が明けたんだ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ